- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336058713
作品紹介・あらすじ
大きな時代のうねりに翻弄される中国の庶民の姿を、温かなユーモアと、冷徹な現実の厳しさを交えながら、ノスタルジックな筆遣いのなかに描きだした、現代台湾文学のオピニオン・リーダーであり、「写実文学」「郷土文学」の旗手・尉天驄による作品集。本邦初紹介。
感想・レビュー・書評
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解説によると、1935年中国江蘇省生まれの尉天驄は、子供時代を日中戦争や国共内戦の中に過ごし、国民党幹部だった父が刑死すると、14歳で単身台湾に渡ったという。著者の初の邦訳となる本書は、そういった自身の体験や親族の思い出を織り込んだ散文集。駱駝に乗った旅人や郵便配達夫が外の世界を知る情報源であったという中国農村部の生活のさまざまを懐かしく滋味豊かに振り返りつつ、そんな僻地でも否応なく戦争や政治の荒波に巻き込まれていった人々の悲しみを掬い上げるように描いている。(2006)
“また次の春が来た。種まきをしなければならないのに、戦争は依然として続いていた。しかも戦争が始まると、兵隊が作物よりも早くできるようになった。……それは蛇よりも多く、糞転がしよりも耐えがたかった”(p.218「火炉の火」)
“水害、旱、蝗害や兵隊の殺し合い、あっちこっちへ逃げ回ったこっとなども、何もかもが特別な思い出となっていた。彼女(=婆ちゃん)はそうした過ぎ去った昔のことを一つ一つ噛みしめては、一枚一枚麺生地に混ぜ込み、烙餅の中に伸ばした。燠子で焼いた香りが庭中に漂っていた。”(p.150「棗と石榴」)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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大きな時代のうねりに翻弄される中国の庶民の姿を、温かなユーモアと、冷徹な現実の厳しさを交えながら、ノスタルジックな筆遣いのなかに描きだした、現代台湾文学のオピニオン・リーダーであり、「写実文学」「郷土文学」の旗手・尉天驄による作品集。本邦初紹介