ウィトゲンシュタインの愛人

  • 国書刊行会
3.77
  • (11)
  • (7)
  • (7)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 392
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336066572

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • デイヴィットマークソン「ウィトゲンシュタインの愛人」https://kokusho.co.jp/np/isbn/9784336066572/ 読んだ。。文学哲学芸術の膨大な雑学が、主人公の頭に浮かぶまま脈絡なく曖昧に語られていって、設定はともかく中身はとってもおもしろい。作者は「これは小説ではない」の人だった。こういう体裁が好きなのか(おわり

  • 気高く狂ってる語りの感じや、異国の地に焦がれる思いを呼び覚ます描写がsoothingで調子よく読んでいたのだが、3分の1くらい来たところで、ふと「地上から人が消え、最後の一人として生き残った」という紹介文の設定って、本文にでてきただろうか、と気になりだしてしまった。それを最初から知ってて読むのと、どういうことかな?と探り探り読むのとでは、作品そのものが違ってくるのではないかと思ったのだ。もしかしたらちゃんと書いてあって、わたしが読み落としたのかもしれないし、そもそも、この設定に惹かれて手に取ったわけだから、言っても詮無いことなのだが。で、それが気になりだしたら集中力がどうにもそがれてしまって、この類まれな実験小説をじゅうぶんに堪能できなかった自分が残念。本書が執筆されたのは1988年とかなり昔で、著者60歳の時の作品だという。登場人物の年齢や性別が作家と違ったとしても、小説だから当たり前だし、気にしたことなんてあまりないのに、なぜかこの作品では、たびたび出て来る「パンティー」という単語とか生理の描写が、そこだけちょっと気持ち悪く思えてしまった。女性らしさを抑え、狂った頭で理路をたぐろうとするとぼけた切実さが特徴の語りゆえ、「実際」が口癖だったり、「うむ」と言ってみたり、そこはかとなくおじさんぽかったりするわけだが、そのせいで、つい女っぽいワードが目についてしまったのかな。生理へのこだわりは最後のひとりとしての生殖とどう関係してるのか?よくわからなかったけど、たぶん何かあるはずなので、気になる。紹介文では主人公の名前「ケイト」ってなってるけど「ヘレン」とも呼ばれていたよね?子どもの名前も変わってるし? もしかして、地上最後のひとりって設定自体フェイクで、この人、狂ったせいで本当は普通に存在する他の人が見えなくなってる(=日常の私たちと地続き)ってことはないだろうか。考えすぎ?などなど、ぼんやり読んでいたせいで、何か重大なキモを読み飛ばしているのではないかと一夜明けた今も気が気ではない。とはいえ、「雨を無視するとは」とか「鏡に署名して、映る人が変わったら」とか「段ボール、大きい本から先に詰めるよね」とか、独特の視点がスリリングな気持ちにさせてくれた、それだけで良しとしようかな。できればギラッギラの太陽のもと、プールサイドでちょっとずつ読みたい、でも、本当は散らかった家にいてあたふた暮らしていたって、彼方の砂丘の孤独にいっとき親しませてくれる、そんな本でもある。装丁の鮮やかなオレンジ、ブルー、ピンクの色合いが作品とすごく合っていると思う。

  • 『ヴィトゲンシュタインの愛人』デイヴィッド・マークソン著。これはすごい! 木原善彦さんが訳したんだ! 目利きだ! これほど最前線の実験小説はなかなかないだろう。ヴィトゲンシュタインのような思考方法がそっくりそのまま再現されているかのようだ。2010年に亡くなっているが、今これを読むことができて本当に我々は幸福な時代を生きている。独特の思弁的リアリズムの具現化だ!

全17件中 11 - 17件を表示

著者プロフィール

1927年ニューヨーク州オールバニー生まれ。2010年没。小説家、詩人。若い頃はコロンビア大学などで創作を教えるかたわら、娯楽的な作品を執筆した。60歳の年に発表した『ウィトゲンシュタインの愛人』(1988年)が傑作として注目を浴びた。以後に出版された『読者のスランプ』(1996年)、『これは小説ではない』(2001年、邦訳は2013年、水声社)、『消失点』(2004年)、『最後の小説』(2007年)の作品群は「作者四部作」と呼ばれ、断片を積み重ねるスタイルを顕著な特徴とし、高く評価されている。

「2020年 『ウィトゲンシュタインの愛人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

デイヴィッド・マークソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×