- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336074607
作品紹介・あらすじ
【国書刊行会 創業50周年記念復刊】
〈ちがうね、諸君、もう一度言うが、それはちがう。君たちは若いし、頬っぺたにも熟れた林檎みたいな赤みがさしている。ジーンズだって擦りきれ、声も明るく甲高い。だがね、ステパン・イリイチ・モロゾフが恋人のワレンチーナを愛したような愛し方はどのみち絶対にできっこないんだ・・・・・・〉
愛の物語を一切省き突然の狂気へと読者をひきずりこむ、ゼロ形式の恋愛小説ともいうべき表題作「愛」。女教師と教え子のアブノーマルな〈授業〉を即物的に描いた「自習」。故人に関する驚愕の事実が友人によって明かされる「弔辞」。
そのほか「真夜中の客」「競争」など、日常の風景のさなかに悪意を投げ込んで練りあげた文学的オブジェの数々。あまりの過激さに植字工が活字を組むことを拒否したとされる、最もスキャンダラスな作家が放つ、グロテスクかつアンチ・モラルな短篇集。
◎装幀=松本久木(松本工房)
*本書は、1999年に小社より刊行した『愛』を、若干の改訂を行った上で、新装版として刊行したものです。
感想・レビュー・書評
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初読み作家。
現代文学のモンスターと呼ばれるソローキンは果たして…?と蓋を開けてみればとんでもない奇天烈な小説を書く作家だった。
画家だったことにより、文章を視覚的にも楽しませてくれた。
ネクロフィリア、スカトロジー等、物語の初めは穏やかで悪い予感すら抱かせない無垢な風景と会話。
突然何の前触れもなく幸福な世界は残酷な落とし穴に突き落とされ唖然とする。
今読んでいた穏やかで静謐な空間はなんだったのか?という、突然にその世界が「切断」される。
句読点などのない呪詛のような、繰り返される文体破壊に魅了された。
ソローキン自身は困惑するだろうけど、個人的にかなり気に入りなのでもっと他の作品も読みたいと読了後はソローキン作品への渇望が目覚めた一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原著1992年刊。
「モンスター」と呼ばれたりしているらしいロシアの現代作家の短編小説集。
奇想なんでものでなく、かなりはちゃめちゃで、面白い。突然エロ小説(ホモセクシャルが多いようだ)みたくなったり、スプラッターホラーな場面がいきなり出てきたり、スカトロな方向に脱線していったり、いつも不条理なままで謎が残されたり、しかもしれらがごく平然と語られているのである。確かに「現代的な感性」による限界を極めようと切り込む優れた芸術だと思う。
解説によると作者ソローキンはクエンティン・タランティーノの「パルプ・フィクション」が好きだとか。なるほど、タランティーノ的感性との共通性を感じる。更に言うと、ロバート・ロドリゲス映画のうな怪しさも感じる。
もっとも、幾つかの作品で途中から自動筆記のようになって物語主体が解体されてしまうのは、前衛手法としては新奇でもないし、そこはあまり面白くないようにも感じた。
この作家の長編小説も読んでみよう。
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なんか途中から小説読んでる感じではなくなりますね。視覚的に訴えてくる話あるの何なん…。慣れるとだんだん笑えてくるけど。 『愛』が衝撃的なのはもちろん、個人的には『真夜中の客』『シーズンの始まり』『弔辞』『別れ』とかが好き。 あとソローキンが「画家」であると知ってめちゃくちゃ腑に落ちた。『愛』とか『ロマン』はめちゃくちゃ現代芸術なんだよな。前衛的って意味だけじゃなく
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最狂の短編小説でした。ソローキンさんの小説は私にとっては初めてです。相当な刺激に満ちた作品だらけですので、体調の良い日を選んで対峙したほうが良いかと思います。
死体愛好、ホモセクシャル、スカトロジーなどが大抵の作品に散りばめられています。多くの日が眉をひそめる蛮行が描かれますが、その蛮行を行う人物の方が堂々としているというか、自信に満ち溢れているように感じました。
ロシアの人名が覚えにくいので、自然とゆっくりと読むことになりますし、一見普通の小説のような始まりでも突然奇行に走る主人公が登場すると、先の予測がつかないので、ゆっくりとした読書速度になります。なので、読了までに時間がかかりました。
これまで、様々な読書体験をしてきたベテランにお勧めする本です。
初心者は読まない方がいいです。読書が嫌いになりそうな気がします。 -
「弔辞」そうそう、こういうヤバいのを読みたかった。しかも、心の準備もなく読んでたらいきなり来たから、まさにこの場にいる弔問客の1人になりきれたというのも最高。