迷宮遊覧飛行

著者 :
  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336074621

作品紹介・あらすじ

迷宮的作家・山尾悠子の足跡を辿る500頁。  
泉鏡花・澁澤龍彦・ボルヘス・デルヴォーなど、偏愛する作家や画家をめぐる文章、自作解説、回想、掌篇小説など全80余編。20代の若書きから現在に至るまで、初のエッセイ集成。書き下ろしの「読書遍歴」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 迷宮遊覧飛行|国書刊行会
    https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336074621/

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    スピン/spin 第2号 |河出書房新社
    [連載書評/絶版本書店 手に入りにくいけどすごい本]
    ・酒井駒子
    ・山尾悠子

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「迷宮遊覧飛行」書評 えも言われぬ幻惑的世界の源泉|好書好日
      https://book.asahi.com/article/14858385
      「迷宮遊覧飛行」書評 えも言われぬ幻惑的世界の源泉|好書好日
      https://book.asahi.com/article/14858385
      2023/03/13
  • 読解自体困難を伴う小説を書く作家の、自註自解。
    ゼロから読む快楽(黒い靄のなか手探り)と、
    本書を読んで読み深めていく快楽(松明、耳元で囁いてくれる声、以前通った道のり)と、
    両方が成立する世界に、なった。
    嬉しい限り。



    目次
    読書遍歴のこと 序文に代えて
       
    〈Ⅰ〉
    月光・擦過傷・火傷 
    綺羅の海峡 赤江瀑
    教育実習の頃 
    東京ステーションホテル、鎌倉山ノ内澁澤龍彦邸 
    ボルヘスをめぐるアンケート 
    人形国家の起源 笙野頼子『硝子生命論』
    歪み真珠の話 
    『夢の遠近法』自作解説 
    架空の土地を裸足で旅する快楽 間宮緑『塔の中の女』
    美しい犬 
    デルヴォーの絵の中の物語 
    私が選ぶ国書刊行会の三冊 
    仮面の下にあるものは 長野まゆみ『45』
    「第四回ジュンク堂書店文芸担当者が選ぶ「この作家を応援します!!」フェアへのご挨拶 
    『マルセル・シュオッブ全集』
    シュオッブ、コレット、その他 
    マルセル・シュオッブ全集のこと 
    荒野より 〈新編日本幻想文学集成〉編者の言葉
    変貌する観念的世界 あるいは両性具有者の憂鬱 倉橋由美子
    同志社大学クラーク記念館に纏わる個人的覚え書き 高柳誠
    同志社クラーク記念館の昔 泉鏡花
    倉敷・蟲文庫への通い始め 
    マイリンク『ワルプルギスの夜』 
    世界の果て、世界の終わり C・S・ルイス『ナルニア国物語』
    秘密の庭その他 
    飛ぶ孔雀、その後 
    鏡花の初期短篇 
    ブッツァーティ『現代の地獄への旅』 
    ジェフリー・フォード『言葉人形』 
    壊れやすく愛おしいもの ニール・ゲイマン『壊れやすいもの』
    地誌とゴム紐 時里二郎
    『龍蜂集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅠ〉
    『銀燭集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅡ〉
    『新柳集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅢ〉
    『雨談集』 〈澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅣ〉
    個人的な、ひどく個人的な 文學界書店
    綺羅の海峡と青の本 赤江瀑
    川野芽生『Lilith』 
    年譜に付け足す幾つかのこと 
    幻想絵画六点についてのこと 
    編者の言葉 『須永朝彦小説選』
    去年の薔薇 須永朝彦
    偏愛の一首 

    〈Ⅱ〉
    虎のイメージ 
    夢と卵 
    チキン嬢の家 
    人形の棲処 
    二十五時発、塔の頂上行 
    無重力エレべーター 宇宙食夜会への招待 
    都市の狼少年あるいはコレクター少女の秘密 
    懐かしい送電塔の記憶が凶々しい悪夢として甦る 
    悪夢のコレクション 
    月の種族の容貌に関する雄羊座的考察 
    美女・月を迎えるためのセレモニー 
    幻獣コレクションⅠ
    幻獣コレクションⅡ 
    幻獣コレクションⅢ 
    幻獣コレクションⅣ 
    幻獣コレクションⅤ 
    幻獣コレクションⅥ 
    頌春館の話 
    「薬草取」まで 

    〈Ⅲ〉
    アンドロギュヌスの夢 ル・グィン
    円盤上の虫 
    満開の桜のある光景 
    〈歴史劇〉のことなど 
    『流れる女』 小松左京
    セピアの記憶 過去のつぶやき 長崎西洋館・異人館物語
    「蔵書」のこと 
    『花曝れ首』 赤江瀑
    祖谷渓の月 
    作るか造るか創るか 処女作「夢の棲む街」について
    思い出の一曲 
    シュオブに関する断片 
    十年目の薔薇 中井英夫
    ピラネージとわれわれの……脳髄  
    煌けるコトバの城 稲垣足穂
    幻想小説としての 澁澤龍彦
    ラヴクラフトとその偽作集団 
    死と真珠 澁澤龍彦
    時間の庭 澁澤龍彦

    後記

  • 小説家のエッセイ集。読書に関する内容が多いが、読んだ本の紹介としては分かりにくいところがある。「当方は小説書きであるので、フラットな態度と専門知識が要求される解説は不向き」と書いている通りである(296頁)。

    本書は三部構成である。IIとIIIは小説風の文章になる。こちらの方が楽しんで読める。流石は小説家である。「夢と卵」では卵達が孵化の夢を見ているとする(336頁以下)。夢から目覚めた後は逃走して暴動や革命を起こしかねない。

    故に「われわれは一刻もはやく一個でも多くの卵を未然に食べてしまわなければならない」と言う(338頁)。卵は人間の比喩の面がある。食べられる側に感情移入すると恐ろしい話である。潜在能力が開花する前に食べられてしまう。その前に逃げる側に感情移入したくなる。

    著者は歴史に苦手意識を持っている。これは意外であった。ファンタジー世界やSF世界を構築する小説家は歴史が好きそうだからである。歴史の勉強の苦痛を「飽食」と表現する(406頁)。これは面白い。全く勉強をしない勉強嫌いならば「飽食」とは表現しないだろう。真面目に勉強に向き合っている証拠だろう。

    また、飽食の時代を食べ物が沢山そろっている豊かで贅沢な時代と勘違いする人々もいる。しかし、そもそもの意味は「飽きるほど食べる」「食べることに飽きる」である。満腹なのに食べることは苦痛である。「胸やけを押さえながら」の苦痛になる。これを飽食と形容するところに小説家のセンスがある。

  • 山尾悠子のエッセイ集大成。構成としては前半に復帰後~最近のもの、中盤はご本人いわく「若いころ、エッセイの依頼に対して小説紛いの文を書いて渡していた時期」のもの、そして最後に20代初期の頃のもの。

    「小説紛いの文」も、気の利いた掌編のようで楽しめたし、読書エッセイはやっぱり楽しい。概ね、好きな作家の好きな作家は私も好きな作家なので、とても共感して読めた。やっぱり初心は鏡花、そして澁澤龍彦、そして澁澤経由でのあれこれや足穂。倉橋由美子、金井美恵子、高橋たか子、中井英夫、塚本邦雄、須永朝彦、さらに笙野頼子に赤江瀑、画家ならデルヴォー。自分の好みとかぶっているので、ほとんどが既読だったけれど、コレットは全く読まずにきたのでいつか挑戦してみようと思う。

    あとはやっぱり自作解説が結構収録されているのが嬉しいですね。寡作な作家だけに、同じ作品を繰り返し読み返したくなる。

  • 著者初のエッセー集。若い頃の京都の雰囲気、澁澤ショックなどあの頃を学生として生きたものにとって、共感しきりだった。
    鏡花賞をもらってから名前も割りとしられてきた。
    鏡花愛に溢れ出てる。
    赤江瀑、長野まゆみ、シユウォブ、須永朝彦、清原啓子、プラレージ。。。ちょしゃの愛してやまない表現者たちについて書かれたものがほとんど。国書刊行会近辺多い(笑)
    山尾さんの作品は電子書籍でなく、やっぱり凝った装丁の紙の本で読みたい。

  • オタクここに極まれり…

  • 山尾悠子氏の本や作家との関わりあってきた人生を垣間見るような一冊。
    アーサーラッカムの載った表紙から装丁も素敵です。

  • なんと!まさかの!エッセイ集!
    今まで幻の作家というか、生きてるか亡くなってるかも謎だったのがいきなり生身の人間として現れた感。
    寡作の理由やら今の居住地やら明かしていいの?
    鏡花は少ししか読んでないので中盤の鏡花パートは少しつらいっす。
    ニール・ゲイマンは読んでみたい。
    澁澤氏大好きなのはよくわかった。

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著者プロフィール

山尾悠子(やまお・ゆうこ)
1955年、岡山県生まれ。75年に「仮面舞踏会」(『SFマガジン』早川書房)でデビュー。2018年『飛ぶ孔雀』で泉鏡花賞受賞・芸術選奨文部科学大臣・日本SF大賞を受賞。

「2021年 『須永朝彦小説選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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