けむたい後輩

著者 :
  • 幻冬舎
3.50
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021396

作品紹介・あらすじ

大学で元詩人の先輩・栞子に出会い、心酔していく真実子。親友を栞子に取られたようで美里は面白くない。一方、栞子の恋人・蓮見教授は美里の美貌に心を奪われて-。女子大で入り交じる、三者三様のプライドとコンプレックス。

感想・レビュー・書評

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  • 真実子みたいな人に応援団としてそばにいて欲しい。

    真実子は「人であれ、物であれ、良いところを見つけるのが抜群に上手い」女の子。それに「優しさ、楽しさ、何を取っても」彼女に敵うものはいない。

    それにしても人に慕われるということは、それにふさわしい自分であろうとしてかなりプレッシャーになりそうだ。栞子も途中からその重圧に耐えられなかったのかも。

    最後の一行が印象に残った。「けむり、けむり、あなたとわたしをへだてるけむり」がここに効いてくる。

  • 『けむたい』という言葉から何を思い浮かべますか?

    まず思い浮かぶのは、”物理的な”煙を感じて、それを嫌だと思う感情でしょうか。日常で言えば煙草の煙が該当するでしょう。昨今、分煙、もしくは禁煙の流れがかなり進みました。煙草を吸わない方なら、煙草の煙を見たのはいつのことだろうというくらいに吸う人、吸わない人の線引きがはっきりしてきたと思います。”物理的な”煙草の煙は『けむたい』と思えば避けられる時代になってきました。では、他に思い浮かぶものはどうでしょう。それは、”感覚的に”嫌な存在を感じて、その人を毛嫌いする感情だと思います。”あいつはけむたい奴だ”、という特定個人を毛嫌いする感情。人は群れの中で生きる動物ですが、だからと言って、その群れのすべての他者と仲睦まじく生きていくというのは理想論だと思います。お金を稼ぐためにやむ無しと会社の中で我慢の日々を送られている方もいらっしゃるでしょう。そんな『けむたい』対象が、例えば悪人であればあなたは周囲から同情も買うでしょう。でも、その人に悪意などないと分かる場合はどうでしょうか?なんだかムカつく、イライラする、と思っても煙草の煙とは違って容易に逃げることもできません。悪意がない分、邪険にもできないというもどかしさの中、対象がいなくなるのをじっと待つしかありません。そんな感情を『けむたい』と表現する日本語は改めてよくできていると思います。そう、この作品は、そんな『けむたい』という感情の正体を明らかにしていく物語です。

    『煙草の煙が螺旋を描き、形を変えて昇りつめていく様がはっきりと見てとれた』という地下一階の暗い店内で煙草を吸うのは増村栞子(ますむら しおりこ)。『なあに?煙草を吸う女って、そんなに珍しいの?』と目の前に座って彼女を見つめる少女に語りかけます。『ええーと、あの、そうかな?親も吸わないし、小樽の女子校も校則が厳しいところだったから…』ともじもじと語る少女は『私、肺があんまり丈夫じゃなくて、煙草の煙って慣れてなくて』と続けます。『ふーん』とつぶやいて『意地悪な気持ちで二本目の煙草に火を点け』る栞子。それを見て『少女は泣きそうにな』ります。『私なんて十四歳の頃から手放せない。一日三箱は吸うかな』と語る栞子。『中二!』と『少女は目を丸くし、呆気にとられたように』見つめます。そして『けむり。けむり。あなたとわたしをへだてるけむり…』、と急に少女が話し出したことに、今度は『目を見開く』栞子。『あ、すみません。十四歳から煙草を吸うって聞いて、思い出したんです』という少女は、『けむり』という詩集のことを話題に出します。『きっと先輩もご存じですよね』というその詩集。『うちの学校の生徒が、在学中に出版した作品だ』というその詩集。『もう六年前かな。十四歳で作家デビューだなんてすごいですよねぇ!』と少女は続けます。それに栞子が何か言おうとする前に『あらあら、栞子ちゃん、さすがは作家先生ね。こんな風にファンのお相手をするなんて』と『水を注ぎにきた女主人が、悪戯っぽく割り込』みます。『先輩って、あの増村栞子さんなんですか⁉︎「けむり」の作者の⁉︎翻訳家の増村栄一郎さんの一人娘の⁉︎』と驚き、『夢みたい』と『真っ赤になって飛び跳ね』 る少女。そんな光景を見て『まさかこんな日がくるとは。自分の著作のファンに出会うだなんて』と思う栞子は『ね、あのこと、誰かに話すつもり?知られちゃまずいんだよね。煙草を教えてくれたのは彼なんだ』と話します。『つ、つまり、蓮見教授が「けむり」の「あなた」っていうことですか?』と聞く少女は『先輩っ、私、絶対に誰にも言いません。何があっても守り抜いてみせる』と返します。『羽柴真実子です。はしばは羽柴秀吉の羽柴、まみこは真実の子供で真実子』という名を聞いて『暑苦しい名前だ』と感じる栞子。一方で『でも、この子と一緒にいたら何か生み出せるかもしれない』、『あの輝かしい日々が復活する』かもしれないと期待します。そして、そんな偶然の出会いから始まった二人の関係が、真実子の友人・里美も交えた三人の人生を大きく動かしていきます。

    「けむたい後輩」というなんとも引っ掛かりを感じる書名を冠したこの作品。煙草を燻らせながら斜め下に視線を向ける女性のイラストの表紙のイメージそのまんまのストーリーが展開していきます。『けむたい』という言葉から連想されるのは、”物理的な”煙草の煙と”感覚的に”嫌な存在の二つだと思いますが、上記した通り、この作品は煙草を一日三箱吸うという先輩・栞子と肺が片方しかなく煙草の煙は命取りになりかねないという後輩・真実子の出会いの場面で、真実子が栞子を”物理的に”『けむたい』と感じる場面からスタートします。真実子から見て、”けむたい先輩”というその時点の二人の関係。そして、そんな二人の関係は、真実子がまるで教祖のように栞子を慕う間柄へと変わっていきます。真実子が何かメモしているのに気づく栞子。『心に浮かんだことや、先輩が教えてくれたことは残らず書いておくんです。忘れたら、悲しいから…』という真実子のノートには『栞子が口にしたフレーズや本や映画のタイトルで埋めつくされている』という状況。『あんまり畏まらないでよ。あんたと私は平等だよ?』と言っても『対等なわけないじゃないですか!レベルが違いすぎます。先輩はアーティストだもの!』と栞子を崇めるかのごとく付き纏う真実子。そんな状況を真実子の友人・里美は『栞子って、中等部の頃から、あんたみたいな崇拝者を作って、周りから切り離して手元に置いておくのが好きだったんだって』という情報を真実子に伝えて『もう増村栞子に関わるのはやめな』と諭します。それを『ウソだよ。栞子さんがそんなことするわけないじゃん』と否定し『私は先輩を信じる。彼女のこと、守れるのは私だけなんだから』とあくまで栞子を崇める真実子。一方で、そんな真実子を間に挟んで栞子と里美はお互いを憎しみあっていきます。それは、まるで真実子を綱引きするかのように描かれる三角関係の図式にも似た展開。この辺りの三者三様のキャラクターの描き方が非常にはっきりしていることもあって、読者は知らず知らずのうちにタイプの異なる三人のうちの誰かに自然と感情移入していくことになるはずです。しかし…。

    『人と同じ格好なんて絶対にしたくない』と常々考える栞子と『先輩はすごいな。美里も…。皆、夢に向かって頑張っているんですよね』と考える真実子に対して、彼女と出会う男という男のすべてを振り向かせる美しさを武器に『女子アナになる』という夢に邁進する美里という三者三様の人生が描かれるこの作品では、その視点が次から次へと変わっていきます。本を読む上で読者は感情移入できる人物を見つけたいと思うのは自然な感情だと思います。本来的には、まず最初に第一人称となる栞子がその候補になるはずです。しかし、表紙そのまんまのイメージ、どこか嫌な女というイメージで描かれていく栞子にはなかなか感情移入しようという気が起きません。一方で、そんな栞子に『呼べば絶対に十五分で現れる』存在として、ある意味いいように扱われる真実子。『病弱なせいもあるが、真実子は敵を作らない。得な性分なのだ』というそんな真実子に次の感情移入の候補として気持ちが向きますが、友人からのアドバイスも無視して栞子!栞子!と盲信する姿を見ていると、そこに狂気さえも感じてしまい、彼女にも感情移入ができません。一方で、一見、一番普通の女子大生かに見える里美。真実子の身体のことを常に慮り栞子の”魔の手”から彼女を守ろうとする姿に、この子ならばと感情移入の落ち着き先を求めますが、これまた独自の強烈なキャラクターがそこかしこに顔を出すためにそれも叶いません。読者は、結局、感情の持って行き場をなくした読書を最後の最後まで強いられることになります。そして、非常に不安定な気持ちを抱いたままの読書がようやく落ち着く瞬間、それが描かれるのは最後の最後の結末になってからです。そこに読者が見るのは、ある意味大胆なまでの切り返し、これでどうだ!と読者に迫る柚木さんが描くのは、大どんでん返しのまさかの結末です。しかし、これがまたとんでもない曲者な結末でもあるのです。ブクログに寄せられた皆さんのレビューを見ても明らかなのですが、最後の最後に読者が至る感情は”スッキリした。ざまあみろ”というものと、”モヤモヤする。かわいそう”という二者に分かれてしまうという、人によって見える世界が異なってしまう結末なのです。これは、三人の中の誰に、より強く感情移入していたか、それを柚木さんが読者の目の前に突き付ける結末でもあります。そんな中で私が結末に感じたのは、さらに別の感情でした。”スッキリしたはずなのにモヤモヤする”という不思議な感覚。なんともはっきりしない落ち着きのない感情です。結末にこれ以上触れることは完全にネタバレに直結しますので、これまでとしたいと思いますが、あなたがこの結末をどう読むか?、どう感じるか?、そこに何を見るか?これは、是非あなた自身で体験していただきたいと思います。そして、ブクログに寄せられた皆さんのレビューにも是非目を通していただきたいと思います。えっ?この物語を読んでそんな風に考えるの?という驚きのレビューをあなたはそこに見るはずです。そう、人の感情というのはそんなに単純なものではない、と改めて感じる物語、それがこの作品なのだと思いました。

    栞子、真実子、里美という三者三様の女性たちが繰り広げる大学生活の日常を描いたこの作品。人を『けむたい』と呼ばせるものは何なのか、人から『けむたい』と呼ばれるものは何なのか。煙草の煙と違って、決して目には見えない人と人との繋がりの中に生まれる持って行き場のない『けむたい』という感情が存分に描かれたこの物語。人によって見える、感じる世界が変わる結末が描かれるこの物語。

    自分がどういうタイプの人間であるかが図らずも浮かび上がってくるその結末に、『けむたい』という言葉を改めて噛み締めることになる、そんな作品でした。

  • 先輩栞子と後輩 真実子を取り巻く皆の物語。
    みんな、自分の幸せをめざし進んでいく。
    真実子、美里、裕美子そして栞子も。
    エピローグで、栞子と真美子の再会は圧巻。
    成長して一人立ちした真実子がそこにいる。
    胸がスッとした。真実子は柚木さんなのかなと思いながら読みました。
    幸せは人それぞれだなとつくつぐ思いました。
    栞子も真美子も美里も裕美子も努力している。
    努力の方向性が違うと人生もこんなに違うことも実感

  • 面白かった。
    とある女子大の先輩と後輩、2人の関係性が4年分綴られている。羨望の眼差しから、経験や友人の言葉などを通じて内側で少しずつ変わっていったのだろうな。
    最後5,6ページの展開がびっくりした。

    色々な女の子がいるので、それぞれの4年の成長を見られるのも良いし、舞台も知っている土地だったので楽しめた。

  • 真実子の吸収力・集中力の凄さと、美里の努力家なところを見習いたい!
    栞子は過去の栄光にすがるばかりで、向上心がない。でも、栞子のおかげで真実子が成長する機会がたくさんできたわけで、人生何が起こるか分からないなぁ。
    自慢するだけで何もやらない栞子を、どんどん抜いていく真実子の姿が痛快だった。

  • 先輩も後輩も、卒業してそれぞれの活躍の場があれば、上下関係もなくなる。それぞれの女子の思惑が面白かった。

  • 14歳の時に詩集「けむり」を書いた増村栞子。
    そんな栞子を守らないと!!と思ってる羽柴真実子。
    真実子の親友で女子アナを目指している浅野美里。
    そんな彼女たち目線で話が進んでいく。

    栞子は、「特別な自分」ってのを周囲に見せたがるタイプで
    取っつきにくいなぁーって思っちゃった。
    でも、誰にも自分は特別な所があるって思ってた時期って
    あると思うんだよね。
    それが、栞子は、ずーーっとそうだったんだと思ったよ。

    だから、真実子が栞子に陶酔しきってる感じが
    ブッ飛んでて、読んでておもしろかったー。
    途中で美里が真実子に対して栞子の場所を奪うようなことは
    やめるように言っていたが、その本質を真実子が
    気づいてないことに、お花畑を感じたなぁー。
    だから、いろいろと写真が評価されたり、脚本デビュー
    できたりしたんだろうねー。

    最後のエピローグは、なんかスッキリした!!
    真実子が栞子に対してハッキリ言う所!!
    全体は⭐️3なんだけど、エピローグだけに関して言えば
    ⭐️4って感じ!!

  • 柚木麻子さんの本好きです。これもまぁ面白い。
    でも最後のまみこの変化がよくわからない。栞子は一生変わらないんだろうなぁ。

  • 真実子の天然で純粋なところがかわいいなぁ。いつの間にか美里の立場になって、この子を守らなきゃと思ってしまう。
    そんなぽわわんとした子なのに、なんとなく取り組んでみたことが天才級で、栞子を打ちのめしてしまったりするのが、面白い。
    栞子、ちょっとかわいそうな気はするけれど、一度も栞子に共感できなかったので、やっぱり最後は痛快。
    でも真実子の変わりようにちょっと残念な気も。いつまでも純粋無垢なお嬢さんでいてほしかったような。

  • 栞子のプライドの高さと何も成さないことへの言い訳、同じ男ばかり選んでしまう見る目のなさ、この子やべぇなと思いながら読み進めたが、一番やばかったのは真実子だった(笑)
    一目惚れだったとあったが、栞子への執着が尋常じゃなく最後まで理解不能。
    従順で期待を裏切らない真実子はその実何をやっても天才的にこなしてしまう人物で、人格も才能も評価されてしまうとあれば、格下に見下ろしていた存在を『けむたい後輩』と言い切るのも当然だろう。
    エピローグで真実子が栞子にぶちまけるシーンはスッとするが、普通は大学4年間という時間を掛けなくても気付くんだよね(笑)
    そういうキャラが180度変わった所も真実子やばかった。
    柚木麻子さんは女子の内面を描くのがうまい。

  • この作家初めて読んだ。出てくる登場人物が、設定的には非現実的な感じなのに、やることなすこと、妙にリアル。特に女性は、自分でも目をそらしたいような嫌な面がそれぞれの人らしく書かれていて、嫌なんだけど共感できる。
    主役のセリフではないけど…「形にする根気もなければ、伝えたいこともないんでしょ。勝負に出ないのは、何が何でも負けたくないからでしょ?」ってのが刺さってきた。ちょっと昔の自分を思い出して、胸が痛い。

  • 相変わらず、ファッションブランドや、横浜界隈のお店などの名前がカタログのように並べ立てられ、しかもちょっと古い。
    昭和の香りがしました。
    真実子はたしかにけむたい後輩。こんな人に慕われた栞子はいい迷惑、人生の進路をなにがしか狂わされたことでしょう。
    最後の豹変っぷりはもはや同一人物とは思えないほどでした。

  • プルームテックに変えました

    ってな事で、柚木麻子の『けむたい後輩』

    親の力で有名になってチヤホヤされてたが、やがてその熱も冷め逆に周りから距離を置かれるが、皆と同じは嫌と一層周りから変に格好付けて離れていく栞子。

    そんな栞子を憧れの眼差しで追い掛ける後輩の真実子。

    男が居ないと不安で仕方が無い栞子はそれを真実子には感ずかせない様に適当にその場凌ぎでのらりくらりとするが、真実子は忠実な飼い犬の如く栞子に酔倒して行くが……。

    純粋過ぎる気持ちは何時までも続く訳無いわな(笑)

    どちらも気付くのが遅過ぎると思うそんな関係w

    2018年36冊目

  • 周りと違う風な自分に酔う栞子と栞子を慕う後輩の真実子、真実子の親友で栞子を冷ややかな目で見る美里。
    好きなベクトルだけ妙に上手くいかない感じがリアルだった。
    映像化もできる作品だろうがあまりしてほしくないとは思う。

  • 女のいやなところが、それぞれの立場で書かれている。
    どのいやな部分も知っているような気がする。

  • 柚木麻子の作品で一番好きかも。栞子がどうしようもなくてよかった。同情もするが。

  • 自意識が強すぎる栞子と、なさすぎる真実子。

  • ああああ何だこのしんどい小説…
    なんかもうしんどすぎて5分おきにアアアァってなる

    相変わらず柚木麻子にごりごり抉られている私ですが、これはまた非常にアアァァア゛ア゛って感じ。容赦なく全身を刺してくる。

    今回は女同士の関係性云々というよりはそれぞれの内面に向いていた気がする。関係性を築く努力はせず、ひたすらエゴをぶつけ合う。

    これは読んでイライラする人と、アアァァってなる人と別れるだろうなと思った。

    私は後者。栞子の気持ちがどの場面でも痛いくらいに分かる。ひたすら栞子に感情移入して苦しい。

    努力はしないけれど、承認欲求は人一倍つよくて、他人と正当な関係性を築くのは苦手なのに、ひとりはいや。
    自分に好意をもってくれた数少ない人間を、何としても離したくない。嘘をついても、自分を偽っても、自分を貶めたとしても。

    栞子は、あのあとどうなっただろう。
    隣の芝生を見なければ、楽だしそれなりに楽しい生き方だったと思う。閉じられた世界で、いつか何かになれると思いながら努力もせずに生きていく。過去の(偶然の)栄光にすがりながら。努力をしなければ挫折することもない。

    真実子みたいな無自覚スーパーマンがいちばんこわい。

  • 私は栞子を糾弾できるだろうか。
    高校生の私がこの本を読んでたら真実子のように美里のように美しく努力して自立した大人になろうと思ってたんだろうな。
    今の私には無理だ。栞子を羨ましく同情してしまうから。

  • あれ、読んだことあるの? と思ったけど、途中まで読んで図書館に返却したことがあるみたいだった。記憶力が……。
    まじ、けむたい後輩。
    慕われるのは悪い気はしないと思うけど、こうもべったりだとね〜。しかし、あれもこれも興味が湧くとのめり込んで、それで標準よりもできが良いってなんなんだ真実子は。羨ましいわ。
    最後に「あらすじは見習いが書いてくるべき」と言いたいことが言えて良かったよね。どっちもそれなりにガマンしていることがあったということかぁ。

  • 若干遅いとは思いますが、この作品でわたしは柚木さんのファンになることが確定いたしました!
    最初に読んだ「BUTTER」で圧倒され、次に手に取った「王女の帰還」で若干肩透かしをくらいつつも、さらに読んだ「ナイルパーチの女子会」「本屋さんのダイアナ」で私の中の評価がうなぎ上りになり、ついにこの「けむたい後輩」で私が死ぬまで読み続けたい作家さん認定!
    おめでとう!柚木さん!パチパチパチ☆

    強い女性、しなやかな女性を描ける作家さんはたくさんいてみんな大好き。
    でも、女性のカッコ悪さ、ずるさをズキズキ突き刺さるほどに書けて、かつ、その底に流れるまっすぐさ、たくましさをここまで書ける方をほかに知りません。

    栞子さんや「本屋さんのダイアナ」の杏ちゃんはイタイ、確かにイタイ。でも、真実子やダイアナにはない人生の奥深さというか人間らしさ、残念な感じの機微がものすごく味わい深いです。でも一方で真実子やダイアナのまっすぐさもまぶしく読んでいてすがすがしい。
    その両方とも、ネガティブな感情になることなく、素直に読んでいけるところが本当に大好き。

    ぜひこれからもたくさん読みたい作家さんです。
    応援しようっと!
    直木賞とれるといいな。

  • ミューズ、ミューズって石鹸か!

    栞子の言動に思い当たる節が色々とあって胸がズキズキした。独りが好き、女同士で騒ぐのは嫌い
    、サバサバを装って群れないクールな自分演じて…本当は誰かに認められたくてしょうがない。だから女ってだけでちやほやしてくれる男に依存するのに、大した女じゃないから男のレベルもいまいち。目立つ女に嫉妬して、自己顕示欲が強いとか年甲斐もなくあんな事してみっともないとか、こき下ろす材料見つけては批判するばかり。そこに至る努力を自分は一切してないくせに。でも、根拠のない自信だけはあって私が本気出せば余裕とか思ってる。

    反省しました。自分見つめ直そう。
    17/4/8

  • とても反省した。かっこばかりつけていた。楽ばかりしてきた。本当にやりたい事に向き合ってこなかった。真美子と美里はすごい。努力は報われる、裏切らない。まさに、グリット、やり遂げる力だ。

  • 最近、柚木さんの小説を何冊か続けて読んでいるけれど
    どうも、これは私にはあわなかった。
    途中で読むの止めようと思って
    ふとレビューをみると、結構よい評価。
    頑張って読み進めたらいいことあるかも、と
    思ったけれど。

    誰にも共感できないし、イライラしてしまいました。
    最後そうきましたか!とちょっとスッキリしたけれど、唐突かな。

  • 再読。図書館で一回借りたけど何回も読みたくて買ってしまった本です。
    栞子先輩ちょっと頭にくるときありますけど気持ちがわからなくもないですね。複雑です。
    真実子もキャラのせいかなかなか憎めません。
    美里はひたすら真っ直ぐで憧れですね。
    栞子さんみたいな女性はよくいそうですよね。リアルすぎます。
    終盤にいくまでイライラが多い話ですけど最後の真実子のセリフにスカッとしますね。急に態度を豹変させるのが腑に落ちない。
    でもあんな短期間に真実子はどう成長したのか気になります。

  • 気取ってかっこつけて自分に酔いしれている栞子はすごく嫌いなタイプ。かっこ悪い。その女を崇拝する真美子もこの上なくうっとうしい。栞子に群がる男たちも見ているだけで不愉快。
    非常に残念ながらこの作品は受け入れられなかった。どの登場人物にも全然共感出来ない。
    ただ、最後にようやく真美子が栞子にしっぺ返しする場面は胸がすっとした。
    多分作者は、最後のセリフのために長い長い嫌な場面を重ねてきたんだろうなあ。

  • 柚木さんが描く女性の気持ちは正直で残酷。あえてオブラートに包まない、きれいな盛り付けにしていない。“そのまま”の気持ちが胸にグサッとくる。

  • この人の作品のおもしろみというのは、登場人物たちのディスタンクシオン(差異化・卓越化)にあると思う。『終点のあの子』にしてもそうだったけれど、作品の舞台を小田急沿線や東急沿線、それも本作でいえば横浜山手に置いていること、その上学校という空間の中においていることは、この作品の基調と分かちがたく結び付いているように思える。

    主人公のあこがれの「先輩」は、才能と権威ある親のもとに育ち、けれどもその親に見合うだけの才能が自身にはないことを理解して、いわば状況を逆手にとるかたちで前衛芸術家や異端の哲学者風のシニシズムのポーズをとることを習慣化してしまった人間。主人公の親友は、友人がそのメンバーであるところの富裕層社会にあって、自身が不相応な人間であることを認識しており、生まれ持った容姿と人一倍の努力によって上昇しようとしている人間で自らの立ち位置を自覚した努力家。そして主人公はといえば病弱で底抜けのお人好し、人間づきあいに不慣れな資産家の令嬢。

    おもしろいのはこの主人公がお話の進行とともに大いに化けて、ノブレスオブリージュのことば通りに(現代風にしかるべき努力はしつつも)「天性の才能」をそこここで開花させつつ、神出鬼没に登場人物たちのあいだを行き来することで、彼らのこころを乱したり、励ましたりの活躍をするところ。そうして物語が展開していく過程で、「先輩」やその彼氏たちはこの作品において、いうなれば「ずるい方法」で卓越化を遂行した者たちとして弾劾されていくのである。

  • なんとなく独特な女の世界。
    栞子(またこの名前がなんと体を表していることか!)の救いのなさ、真実子(この名付けもなかなか秀逸かも)凶暴なまでの無垢さ。
    近づきたくない世界かもしれない。
    また、ここに出てくる男たちも・・・

  • どの子もいそうでいないと思いながらも
    リアルだったりもして
    ストーリーが大学入学から一年ずつ
    展開していったところもおもしろい。
    最後に”おとした”ところもアッパレ。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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