明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

著者 :
  • 幻冬舎 (2013年2月27日発売)
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感想 : 210
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344023376

感想・レビュー・書評

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  • 昨日からこの本を二日で読み上げました。


    さすが大好きな山田詠美さん
    と思ったり、
    少し描写が古臭くなったな…

    と悲しかったり



    でもやっぱり、
    ベッドタイムアイズでデビューして

    50代になった作家が行きついた
    深みもちゃんとあります。


    温か下町みたいな感じじゃなくて

    ちょっと向田邦子さんみたいな
    家族を冷静にみられる世界観なので、

    こういう本を読むと
    あーやっぱり私の落ち着く世界は
    ここだわ


    と山田詠美さんの世界からは

    かけ離れた場所で
    陳腐な渡鬼状態に
    心を砕き
    疲れ果てている身体には


    本当に安心させてもらえるので、
    ありがたいです。

    特に誰かの死に向き合った事が
    ある人、あるいはそういう事を考えなくては
    いけない時に読んでみるといいかもしれません

  • 家族を失う。その意味を、残された家族のそれぞれの物語として描いた小説。

    食わず嫌いというわけでもなく読む機会を逃してきた同世代の作家。同世代の作家を読みたい時期になったのかもしれない。書かれていない行間に、好きとか嫌いとかを越えた心地よさを感じてしまう。

    長兄を失ったある家族の物語。残された弟と妹たちの一人称による語りは
    微妙なニュアンスの差を含み、人はそれぞれ同じようで異なるのだという
    ことを、新鮮に描き出している。陰影という言葉が似合う。

    私は次女にもっとも共感する。その投げやりな感覚は、全共闘世代よりも
    後の世代が持つ『遅れてきた者』特有の醒めた目と、前の世代の挫折を
    引き受けない覚悟とを共有している。「俺はあんたらが嫌いだよ。あんた
    らとは一緒にしないでほしいもんだ」という運命を共にせざるを得ない暗黙の憎しみと自立に根ざしている。

  • 久々◎な作品に出会えた。
    幅・厚み・深み
    どれをとっても申し分なく(*^^*)
    風味絶佳以来、山田さんの作品は
    読んでなかったけれど、これはお勧めです。

  • 突然の愛しい家族の死からの残された者たちの混乱と再生の物語。(まだ再生したとは言い切れないかもしれないけれど。)物語の最後、亡くなった澄生の誕生日パーティー。予期せぬ登場人物に落涙。そう来たか!

  • 初、山田詠美。
    始めの一章は、創太に対する母の態度が辛すぎて、なかなか読み進められなかった。
    一章毎に、家族の中で語り手が変わっていく。
    第一章は、母の実の娘の真澄。
    第二章は父の連れ子、創太。
    第三章は父母の娘である千絵。
    母は美しく苦労知らずに大人になった人のようだ。
    よくできた息子だった澄生を亡くしてアルコールに溺れていった母を、冷静で厳しく見つめる真澄の語りは、つらかった。
    二章以降はすらすら読めた。
    特に後半は一気に読んでしまった。おもしろかった!
    お父さんマコパパの母への愛が一貫して冷めなかったのが、澄川家が家族として維持できていた要因だと思う。

  • 兄の澄生は再婚同士の澄川家の長男で、誰からも愛されていたが、雷に打たれて急逝してしまう。その日から、母親はお酒で自分を癒やすようになり、アルコール依存症になってしまい、救急車で病院に運ばれる。立ち直れない母親と、残された家族。妹の真澄、義父の連れ子の創太、再婚した父母の間に生まれた千絵。それぞれの立場から、澄川家の再生を描く。

    山田詠美は「ベッドタイムアイズ」のようなセクシーな作品もあるけれど「放課後の音符」のような若い子の気持ちを上手く描いた作品が好きだ。この作品は、それらと同じ空気感があって良かった。澄川家の再出発を祝いたい。

  • 再婚同士の両親、お互いの連れ子と新しく生まれてくる妹。
    新たな関係をうまくいかせるために長男の澄生は家族の中心で立ち回り、澄川家は他者から見ても”綺麗な家族”だった。澄生が落雷で死ぬまでは。

    母親は澄生を死を受け入れられずにアルコール中毒。
    長女は大学進学をやめて、義父を助けるために働きだした。年上のアメリカ人と付き合っている。
    次男は義母に気に入られようと懸命に過ごし、大人になったいまでは自分の倍くらいの年齢の女性と付き合っている。
    次女はお金持ち学校に通い続けている。澄生の亡霊と戦うように。

    長男の死を処理できないまま、病み続ける母のために澄生の誕生会を開催するきょうだい。
    澄生は彼らのことを見ていた。家族の人生を楽しんで眺めていた。

    ---------------------------------------

    ”「誰かが死ぬと、必ず誰かの新しい人生が始まるんだよ。それは、つらい始まりであることがほとんどだけど、その内、絶対に隠れていた希望が姿を現すんだから」”(P193より引用)

    死は様々な影響を及ぼす。澄川家だけじゃなくて、どんな人たちにとっても、死は重大な出来事だ。
    死を受け入れること。ちゃんと死なせてやること。亡くなった人の誕生日を祝うこと。
    身近な人の死は他の死と意味が違う。

    どんな人も事故なんかで突然死ぬ可能性がある。もちろん自分も明日死ぬかもしれない。
    だからどうするってわけではないけど、死んでほしくない人のことは大切にするべきだし、死なないでほしいと想ってくれる人のことも大切にするべきなんだと思う。

    絶対明日も生きていられるなんて断言できないからこそ、いま生きていることを実感できるのかもしれない。

  • 死の重みを普遍妥当性に落とし込むのは愚の骨頂だと考えさせられる小説だった。幸いにもまだ身内の死に直面していないながらも友人の死や、限りなくそれに近づいた事故に関係を持つことはあった。その時、僕が心に抱く感情は悲嘆と呼ぶ一つの要素だけではない。そこには確実に色んな要素が含まれている。残された三人の子らが死と向き合ったように、自分も死について考えることをやめてはいけない。それと同時に当たり前に生きていることとの繋がりもやはり考えなければならない。死は死。生は生と割り切る考えのあり方は短絡的で怠惰で、いつしか生活そのものの価値を貶めてしまう。そう気づかされる小説だった。

  • 澄川家のかけがえのない存在だった長男澄生の突然の死、その喪失感から、アルコール依存症になってしまった母と、それを支えて暮らしてきた家族。

    今の私には、実感としては感じることの出来ませんが、ものすごく辛く悲しいことだと思います。子が親よりも先に逝くなんてことがないといいのに。

    残された子供たちの、心の傷や痛みも、想像以上だと思います。
    家族の太陽たるべき母の崩壊をもってしても、3人がきちんと大人になれたのは、多く書かれていないけれど、父親の力もあったとのだと思います。

    最後のサプライズ?
    一瞬、え?となりました。
    その後は、ハッピーエンドという方もいたようですが、私は、違う解釈をしてました。
    どれが正解なんでしょうか??

  • 図書館にて。
    この人の描く家族の物語って、ものすごく新鮮だと思った。
    突然主要な登場人物が亡くなるシチュエーションは、西加奈子の「さくら」や、桜庭一樹の「無花果とムーン」などにもあり珍しいものではなかったけれど、同様に家族が崩壊寸前まで追い込まれる状況なのにラストは軽やかだった。
    血がつながっているかどうか、家族内での立ち位置、そして母親の言葉というものはやはりとても重く、でもどうしたって逃げられないものだからこそもう気にしないで生きていけないだろうか。
    生きているのに死んでいるような母親と、死んでいるのに大きな在感がある兄から独立して、それぞれ軽やかに歩んでいく兄弟たちとそれをずっと見守ってきた兄。
    最後の最後で兄の目線が出てきて、急に世界が開けていくような気がした。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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