- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344023376
感想・レビュー・書評
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昨日からこの本を二日で読み上げました。
さすが大好きな山田詠美さん
と思ったり、
少し描写が古臭くなったな…
と悲しかったり
でもやっぱり、
ベッドタイムアイズでデビューして
50代になった作家が行きついた
深みもちゃんとあります。
温か下町みたいな感じじゃなくて
ちょっと向田邦子さんみたいな
家族を冷静にみられる世界観なので、
こういう本を読むと
あーやっぱり私の落ち着く世界は
ここだわ
と山田詠美さんの世界からは
かけ離れた場所で
陳腐な渡鬼状態に
心を砕き
疲れ果てている身体には
本当に安心させてもらえるので、
ありがたいです。
特に誰かの死に向き合った事が
ある人、あるいはそういう事を考えなくては
いけない時に読んでみるといいかもしれません詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
家族を失う。その意味を、残された家族のそれぞれの物語として描いた小説。
食わず嫌いというわけでもなく読む機会を逃してきた同世代の作家。同世代の作家を読みたい時期になったのかもしれない。書かれていない行間に、好きとか嫌いとかを越えた心地よさを感じてしまう。
長兄を失ったある家族の物語。残された弟と妹たちの一人称による語りは
微妙なニュアンスの差を含み、人はそれぞれ同じようで異なるのだという
ことを、新鮮に描き出している。陰影という言葉が似合う。
私は次女にもっとも共感する。その投げやりな感覚は、全共闘世代よりも
後の世代が持つ『遅れてきた者』特有の醒めた目と、前の世代の挫折を
引き受けない覚悟とを共有している。「俺はあんたらが嫌いだよ。あんた
らとは一緒にしないでほしいもんだ」という運命を共にせざるを得ない暗黙の憎しみと自立に根ざしている。 -
久々◎な作品に出会えた。
幅・厚み・深み
どれをとっても申し分なく(*^^*)
風味絶佳以来、山田さんの作品は
読んでなかったけれど、これはお勧めです。 -
初、山田詠美。
始めの一章は、創太に対する母の態度が辛すぎて、なかなか読み進められなかった。
一章毎に、家族の中で語り手が変わっていく。
第一章は、母の実の娘の真澄。
第二章は父の連れ子、創太。
第三章は父母の娘である千絵。
母は美しく苦労知らずに大人になった人のようだ。
よくできた息子だった澄生を亡くしてアルコールに溺れていった母を、冷静で厳しく見つめる真澄の語りは、つらかった。
二章以降はすらすら読めた。
特に後半は一気に読んでしまった。おもしろかった!
お父さんマコパパの母への愛が一貫して冷めなかったのが、澄川家が家族として維持できていた要因だと思う。 -
兄の澄生は再婚同士の澄川家の長男で、誰からも愛されていたが、雷に打たれて急逝してしまう。その日から、母親はお酒で自分を癒やすようになり、アルコール依存症になってしまい、救急車で病院に運ばれる。立ち直れない母親と、残された家族。妹の真澄、義父の連れ子の創太、再婚した父母の間に生まれた千絵。それぞれの立場から、澄川家の再生を描く。
山田詠美は「ベッドタイムアイズ」のようなセクシーな作品もあるけれど「放課後の音符」のような若い子の気持ちを上手く描いた作品が好きだ。この作品は、それらと同じ空気感があって良かった。澄川家の再出発を祝いたい。 -
死の重みを普遍妥当性に落とし込むのは愚の骨頂だと考えさせられる小説だった。幸いにもまだ身内の死に直面していないながらも友人の死や、限りなくそれに近づいた事故に関係を持つことはあった。その時、僕が心に抱く感情は悲嘆と呼ぶ一つの要素だけではない。そこには確実に色んな要素が含まれている。残された三人の子らが死と向き合ったように、自分も死について考えることをやめてはいけない。それと同時に当たり前に生きていることとの繋がりもやはり考えなければならない。死は死。生は生と割り切る考えのあり方は短絡的で怠惰で、いつしか生活そのものの価値を貶めてしまう。そう気づかされる小説だった。
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澄川家のかけがえのない存在だった長男澄生の突然の死、その喪失感から、アルコール依存症になってしまった母と、それを支えて暮らしてきた家族。
今の私には、実感としては感じることの出来ませんが、ものすごく辛く悲しいことだと思います。子が親よりも先に逝くなんてことがないといいのに。
残された子供たちの、心の傷や痛みも、想像以上だと思います。
家族の太陽たるべき母の崩壊をもってしても、3人がきちんと大人になれたのは、多く書かれていないけれど、父親の力もあったとのだと思います。
最後のサプライズ?
一瞬、え?となりました。
その後は、ハッピーエンドという方もいたようですが、私は、違う解釈をしてました。
どれが正解なんでしょうか??