- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344028425
作品紹介・あらすじ
関ケ原の合戦から150年。徳川に歯向かった西軍として、いまだ敵視され続ける薩摩に非情な命が下る。天下の暴れ川・木曽三川の、絶対不可能とされる治水工事-。1000人の藩士が"薩摩の本気"を胸に秘め、一路美濃へ旅立った。これは形を変えた関ヶ原の戦い-。己の責務に命をかけた男が、艱難辛苦の末、辿りついた衝撃の結末!
感想・レビュー・書評
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江戸時代中期、氾濫が相次ぐ木曽三川の治水工事を命じられた外様大名の薩摩藩が、莫大な借金を背負いながらも、約千名の藩士をはるばる尾張まで派遣して難工事を成し遂げたという、実際にあった出来事を元にした小説。
責任者である家老の平田靱負はじめ、仕上げの落ち度を責められた藩士が島津家にお詫びするために切腹したり、伝染病をおして無理に工事に臨む姿など、薩摩藩士の美談が中心に描かれていて、それはそれで感動するのだが、一方でどれほどの難工事だったのか、当時の工事そのものの迫力も合わせて読みたかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦の物語である。
薩摩の武士たちが死力を尽くして戦った、戦の。
時は、すでに徳川家の治世。
西軍として関ヶ原を戦った薩摩は、本領こそ安堵されたものの、徳川幕府はその力を削ぐ意味もあり、木曽三川の普請を押し付けた。
家老 平田靱負は、普請総奉行として、その普請を取り纏める。
島津家がやり遂げなければならないその難事業、靱負はまず薩摩藩士の気持ちを一つにまとめ、困難を一ずつ、乗り越えて行く。
その覚悟を決めた薩摩藩士の行動に、当初は外様の素人普請と彼らのことを軽んじていた百姓が、そして地元役人の目の色が変わる。
そして、見事難工事をやり遂げた靱負の見た木曽三川は、美しいものだった。
冒頭、最初の頁から最後の頁を閉じるまで、平田靱負はその結末を覚悟した上で、大プロジェクトを完遂させる。
大きな仕事を成し遂げるためには、大いなる覚悟が必要であるということを、改めて考えさせられた。 -
江戸時代1754年2月から1755年5月まで行われた治水工事の話。
治水工事について詳細に追っているが、焦点が当てられているのはそれに関わる人たち。
わずが一年でこういうことをしたというのも驚いた。
なんというか、嫌がらせに近いことでもそれを使命と捉え覚悟を持って行なうというのは、少なくとも自分には出来ないよなあ。
どういうことを思って取り組んでいたのか、過去に行けるなら、話をしてみたい。
そんな人達が描かれている小説でした。読み応えあり。 -
自分たちの領土とはまったく縁のない美濃で暴れる木曽川の治水工事を「お手伝い普請」として将軍から任じられてしまった薩摩藩が、大変な借財に苦労しながら、故郷から遠く離れた土地で暴れる川と利権をめぐって争う武家たち、したたかな百姓に苦しめられながら普請作業を全うしようとする物語だ。
史実である「宝暦治水」を扱った歴史小説だ。
かなり薩摩藩よりの視点で描かれているとはいえ、よく調べたなぁ、よく書いたなぁ、というくらい、そこで生き、しのぎを削る人たちの姿がリアルで、こんな大事業があったんだな、としみじみする。
この宝暦治水の話、ウィキペディアなどで簡単に出てくるのだけれど詳しく知らないほうが物語を最後まで楽しめるので知らないなら知らないまま読んだ方が面白い。
それにしても武士が存在した社会というのは本当に不思議な時代だなと思う。
言いがかりのように命じられた普請に財産を投げ打って命もかけて臨み、誇りを傷つけられれれば腹を切ることも厭わないという覚悟、現代では想像することも難しいメンタリティだ。 -
2015/12/15
薩摩の人達がこんなに素晴らしいことをやり遂げてくれたのかと、改まって感心しました。