とめどなく囁く

  • 幻冬舎 (2019年3月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784344034464

感想・レビュー・書評

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  • がっつり心が巻かれた一冊。

    忍び寄る不穏な影。
    じわじわ…終始心はざわつきながらも丁寧な心情描写、物語の行く末にがっつり心が巻かれた時間だった。
    釣り事故で前夫が行方不明に。
    その後、30歳としが離れた資産家の夫と再婚。
    穏やかな毎日を送っていたが、不穏なささやきが彼女の耳に聴こえ始めた…。

    早樹を取り巻く周囲誰もがほんのり怖かったし柔らかな言葉はあれどどれも見せかけっぽいのがまた怖い。
    何とも不気味で誰にも感情移入はできない人間模様。
    そんな最中、明らかになるまさかの過去の真相には言葉が出ない。

    こんな身勝手さで蛇のとぐろのように早樹の心をしめつけていたのかと思うとやるせない。

    蛇の赤い舌が見えるような終幕。

    見事にざわつきを心に残された余韻がたまらない。

  • 登場人物の誰にも共感できなかった。
    まあ、作者は共感を得ようなどと考えてはいないのだろうが‥。
    主人公早樹は、夫が海釣りに出たまま行方不明となり、推定死亡を経て、年の離れた資産家と再婚。
    再婚相手との平穏に波風が立つ。
    死んだと思っていた前夫が生きているのではないかという出来事も。
    話がどのように展開するのか分からず、続きや結末は気になった。

  • はぁ〜っ‼︎ 読後すぐの私の呟きは
    「ひどい男だ…」です。私は女なので、やはり、主人公の早樹の気持ちに寄り添ってしまう。

    それにしても、やっぱり私は桐野夏生さんが好きだ。毎度毎度、読み始めたら、勢いよく止まらなくなってしまう。二段組、445ページ、ちっとも長くは感じませんでした。

    今作はある意味ミステリーでもあるけど、全編に流れる空気は、夫婦、親子、兄弟姉妹、そういう『家族』の形を考えさせられるお話です。ってか、『人間同士』の形……関係?かなぁ。

    はたから、どんなに恵まれてるように見えても、その人個人の心の中は、結局、その人自身にしかわからない。
    夫婦といえども、親子といえども、見えていると思っていても、相手の心の中は、全然見えていないのだと、それを痛感したのでした。
    まあ、だから良いというのも事実ですよね。心の中だけは、人は自由なのだから。

    けどなぁ…読後感じた思いは変わらない。(誰とは言えないけど)この男は酷いわ。

    印象に残ったところを少し…

    ーーーーー

    もちろん、克典を愛し、尽くしたいと思うのは、早樹の本心だ。ただ、世間がそう見ないことに対して、鎧う気持ちがある。

    悪意を持って人を見れば、いくらでも悪口を言えるものだ。

    『空気を読めない人』といっても、他人への想像力に欠ける人間もいれば、その場の雰囲気に安易に合わせることを潔しとしない人間もいる。

    すごいダメージを喰らったのに、弱った顔ができないから、平気なふりをして生きている。そのことに疲れたのね。

    何でも少しは苦労した方がいいと思わない?だって、楽な人生なんてないもの。

    私たちは、取り返しのつかない馬鹿なことをさんざんして歳を取取り、赦されないままに死んでゆくんだと思った。

    無理を通せば、何かが壊れるのだということを知りました。

  • 早樹の夫は釣りに行ったまま帰ってこなかった。自殺なのか、それともどこかで生きているのか。7年たっても手がかりはなかった。早樹は記者の仕事で自分の父と同じくらいの年齢の資産家と出会い、ついには結婚することとなる。男は妻を亡くしており、再婚同士であった。ある日、義母より息子らしき人を見かけた、無言の電話があったと連絡が入る。早樹の実の父も元夫らしき人を見たという話もあり、早樹は消息不明の元夫の交友関係を調べてゆく。
    ああ、また駄目男が出てくるのね、です。そんな男、男たちに振り回わされた早樹の心の苦しみの物語。前夫への思いだけでなく、庭のオブジェやら、義母の振る舞いやら、夢の結婚ではなく、ストレス溜まっちゃうよね、そんな心理描写を見事に書き上げています。真矢(再婚相手の連れ子、でも早樹と同じ年)とうまくいけそうなところだけが早希にとっても読者である私にとっても明るい救いであったか。蛇はいなくなったかね。

  • 失踪
    再婚
    「すみません」
    歳の離れた夫婦
    昼食時に飲むアルコール
    昼寝
    庭に潜むもの


    1ページ2段構成で、読み始めるのにちょっとした気合い要ります。
    図書館本

  • 図書館で借りた本。
    海釣りに出掛けたまま、帰ってこなかった夫。7年待って、死亡扱いになり、親子ほど歳の離れた新しい夫と生活をするようになったある日。元義母からの電話で元夫が生きているのでは?と相談を受ける。同じ頃、実の父も元夫に似た男性を見かけたという。海で遭難したと思っていた夫は、果たして生きているのか?

  • 最近、軽め薄め短編の本が多かったので、ちょっと久しぶりの長編440ページだなと思いながら1ページ目を開いたら2段組で‥思わず「おぉ‥」って声が出てしまった。
    だけど、やっぱり桐野さん。最後の最後まで読者を惹きつけて離さない。今回、珍しくミステリー色濃かった。桐野さんの本は毎回没頭しすぎて自分も本の中に入ってしまいます。この本も、海を見下ろす逗子の瀟洒な豪邸に自分も住んでいるような気分で読みました。そして、この本は桐野さんの作品の中では珍しくラストにしっかりとした種明かしがあります。ただこの種明しはおまけみたいなものかな。もう、種なんてどうでもいいくらい、圧倒的なストーリー展開と登場人物たちの個性。やっぱり桐野夏生さんは最高でした。

  • とてもドキドキして読み応えがあった!!!もー、どうなるのか、ドキドキハラハラ、背筋がぞくぞく。

    ネタバレなので、まだ読んでいない人は気を付けてくださいね↓
    主人公の早樹の夫は、8年前に突然行方不明になった。海に釣りに出たきり帰ってこなかった。洋上で船だけが見つかっている。遺体も見つからないまま、数年後に死亡認定され、早樹は心身ともに疲弊した末、父親ほど年上の年齢の男性と再婚する。
    相手は実業家だが、妻を亡くし、引退することにして悠々自適な生活を送っている。
    小説の最初の方は、年上の優しい男性との、少々気を遣い合いすぎている感じの穏やかな生活が描かれる。周囲からは、財産目当てだとか詮索され、更に傷ついたりもする。その状況で、これからの早樹の人生はどうなるのかな?この夫婦関係はどうなっていくのかな?というだけでもドキドキするのに、ある時、死んだことになっている夫を見た、という情報が入り始め、背筋がぞくぞく。情報源は義のお母さん(元夫の母)。お母さんはもちろん、突然息子を失って、死んだという確証も得られないままなので、主人公の早樹と同じように心を痛めているわけで、早樹も再婚したとはいえ義母を気遣ったりもするのだが、荒唐無稽な話に翻弄される。夫に打ち分けるわけにもいかない。
    亡くした(はずの)夫、今の夫、自分と同じ年の夫の娘や嫁たちとの関係がいろいろ読み応えがある。
    元夫が生きているかもしれない、だとしたら、なぜ自分の前から姿を消したのか?と考え始めた早樹が、夫の釣り仲間に話を聞きに行く。そして、結婚していたときの自分と夫の関係を見つめなおす。夫の釣り仲間から語られる話も興味深い。
    夫はどんな人物だったのか。結婚していても、一人の人間のことをちゃんと理解することは何と難しいことなのか。ここも読みごたえがある部分だ。夫の釣り仲間が、それぞれに、それぞれのことを考えているのも興味深い。一番親切に思えた人物は編集者で、頼っていいのかと思っていたら、「このことを本にしてみませんか」と持ち掛けられる。じわっと絶望。
    残りページ数が少なくなって、このまま夫の失踪の真相が明かされないまま終わるのか?と思うけど、良かった、ちゃんと真相は分かりました。
    夫はやはり、自ら計画的に海で遭難したと見せかけて行方をくらましていたのだ。
    何度か無言電話がかかってくる場面もぞくぞくするのだが、これは夫がかけてきているのだと確信した早樹が、何も答えない電話の向こうの相手に向かってしゃべり続ける場面もスゴい。そしてついに、感情が高ぶって、「どうして今頃でてくるの?そうだ、もう一回死んでください」と言ってしまう。なんともドロドロの感情に、読んでいる方も心がドロドロになりそうでした。
    桐野夏生さんもともと大好きだけど、本作も素晴らしかったです!

  • また、いい感じのラストのほろ苦さというか後味の悪さが残る桐野夏生さんの作品。
    もうね、パターン化してるというか様式美に近いし、なんとなくこの本を読んだ後の自分の心境とか読後感が予想付くんですけど、それでも美しい文章と登場人物の心境の描写に惹かれて読んでしまう、毎度毎度の不思議なルーティーンな読み方をしてしまいます。

    この作品を読む少し前から、個人的にですが、「ヒトの心のブラックボックスは、無闇矢鱈と開けないほうがいい」としみじみ思うようになって来ていたのですが、この物語の主人公早樹は、何年かかけてようやく納得した前夫の死を、ひょんなことから揺らがされてしまう。
    一旦は前夫の死を受け入れて、その後親子ほど年の離れた資産家と結婚し、先の結婚とはなにもかも違うライフスタイルを現夫の意向に合わせて受け入れていただけに、たちが悪いタイミングではあります。

    あまりにも謎の部分が多かった前夫の海難事故を、長い日々を消費して納得して死を受け入れ、新しい人生を歩んでいた。だけど、邸宅の庭にいるという、でもけして姿を現すことはない蛇のようにチラリチラリと前夫が生きているかもしれないという事件やキーマンの過去などが存在感を露わにしていく。

    うーん、このあたりが謎が気になって、読むのが止まらなくなってきたんですけど、たぶんワタシ個人は早樹とは少し違っていて、自分だったら、もう前夫の生死はもう追わないかなぁ。
    真実を知ることが怖い、というのではなく、その真実を追うことによって、周囲の人たち(自分の親友も含む)の心のブラックボックスを探ってしまうことのほうが怖い、かな、と思います。
    そのあたりがどうもワタシはヘタレなのでしょう、多分(笑)
    (自分も自分のブラックボックス的なものはあまり人に暴かれたくないから(笑))

    ラストは、うーん、あまりにも唐突な締めくくりだったので、ちょっと個人的には取ってつけたような種明かしでしたね。
    実を言うと、庭の巨大オブジェの彫刻家がもうちょっとストーリーに絡んでくるのかと予想していたのですが、ハズレました(笑)
    「海聲聴(海の声を聞け)」と「焔」というタイトルの2つのオブジェ。作者の彫刻家よりもこのオブジェのタイトルの方が重要だったようです。

    早樹は真実を記された手紙を庭で燃やしましたが、この2つのオブジェに挟まれたシーンがこの物語を集約しているかのようでした。
    海からの聲を聞き続け、そして焔で燃やし、それでも彼女の人生は続いていく。

    姿を現さなかった蛇は、たしかに庭にいたのでしょう。
    そして苦い真実の林檎を置き土産にして。

    ラストがちょっと唐突な感じはありましたが、二段組440ページ超の大作、一気に読まされた筆致は流石だなぁと思いました。

    • 本ぶらさん
      >「ヒトの心のブラックボックスは、無闇矢鱈と開けないほうがいい」としみじみ思うように
      自分はそれを、「今のような豊かであるがゆえにキレイで便...
      >「ヒトの心のブラックボックスは、無闇矢鱈と開けないほうがいい」としみじみ思うように
      自分はそれを、「今のような豊かであるがゆえにキレイで便利な暮らしをする以上、誰もがどこかで他人との間に線を引くことで、それ以上のことを他人に求めないという気持ちを持つことが、もしかしたら必要ってことなのかも?」という風に思いました(^^ゞ

      yammieyaさんは、「どうもワタシはヘタレなのでしょう、多分」と書かれてましたけど、全然そうではなく、むしろ今のライフスタイルにあった感覚な気がしないでもないです。
      2023/02/01
  • 2019/11/26読了。桐野夏生、ジャンルは心理サスペンス?
    なんだろうが、話の流れや文体は相変わらず私の嗜好と相性が良い。印象に残る言葉→『無理を通せば、何かが壊れる。』もう一つは、友人の美波からのメールで『もう過去は取り戻せない。私たちは取り返しのつかない馬鹿なことをして歳をとり、許されないまま死んで行くんだと思った』
    何気ない日常生活のねじれや歪みから、徐々に人生を変えて行くことになる。作家のテーマが尽きないだろうなあ。

  • 夫の失踪後、再婚した妻のもとに亡くなったはずの夫の気配が。。
    おもしろかった。
    著者は、女の感情とかを赤裸々に表現するのが本当にうまいと思う。

  • 桐野夏生のとめどなく囁くを読みました。
    主人公は40代の女性で、夫を海難事故で亡くし、仕事の取材で知り合ったゲーム会社の会長と再婚し、隠居のような生活をしていました。
    そこへ、亡くなった夫の母から亡くなった夫を見かけたと連絡があり、その亡霊に悩まされます。
    物語がダラダラ続き、最後はやっぱりそうなのかと言う感じで、いまいち私の中では盛り上がりませんでした。

  • 面白かった!最近久しぶりに桐野夏生の本を何冊か読んでいますが、どれもやはりグイグイ読ませるというかページを捲る手が止まらないという感じでさすがです。
    「柔らかな頬」のように真相ははっきりとは描かないのかなと思いながら読み進めましたが、庸介本人からの手紙ですべてが明らかになるラストは少し意外でした。このほうがスッキリしていいという方も多いでしょうね。
    登場人物の誰にもあまり感情移入は出来ず、庸介失踪の動機、理由については弱いという気がしますが、細かく丁寧な心理描写と巧みなストーリー展開で楽しませていただきました、ありがとうという感じです。幹太がいちばん可哀想だったかな…。造園業者の長谷川とオブジェの作家はもっと何か絡んでくるのかと思いましたが考えすぎでした。真矢と早樹のラストは救いがあって良かったです。

  • それぞれの思惑と、ささいな行き違いは、最後に静かに落ち着くべきところに落ち着きます。海鳴りがずっと響いていて、読み終えてからも余韻が残りました。

  • お金持ちの生活良いなと思ったけど、寝起きの白髪のおじいさんはいただけない。
    邪悪と好悪が激しいという言葉が心に残った。面白かった。

  • 8年前に海難事故で亡くなったはずの夫の影が再婚した早樹の周りでうごめく。
    真相が知りたい早樹が事件を調べていくと意外な事実が判明していく。
    再婚した70代の夫の子供たちとの人間関係などが心を波立たせる。

    ミステリーとしては今一歩かもしれませんが
    人間の心のひだをここまでかと描いていく。さすがな作品でした。

  • 出てくる人たちの言動がみんなまぁまぁ身勝手で、読んでいて何度もイラっとするんだけど、よくよく考えてみれば自分もその場しのぎな言動でごまかしながら日々を生きていて、だからこそイラッとするのかもしれないと思う。
    そういう意味でリアリティがすごくある作品だと感じた。
    うまくその場しのぎをしながら生きられる人と、作中の真矢のやうにそれが出来なくて生きづらくてトラブルばかり起こしてしまう人。
    一体どちらが人として誠実なんだろう。

  • 主人公は父親くらいの歳の離れた裕福な男性と結婚した女性。
    彼女の前夫は海で行方不明になり、八年間帰りを待つも帰ってこなかった。
    その間に出会った今の夫と結婚し、穏やかな日々を過ごしていた彼女に元夫の母親から連絡が入る。
    前夫に似た人を見かけたとー。
    それを機に彼女は親友、前夫の釣り仲間に連絡を取り、話を聞く。
    その中で当時は知らなかった出来事が次々と分かる。
    親友が釣り仲間の一員で、その中の一人とつきあっていたこと。
    夫が仕事上の悩みがあり、自殺したのではないかということ。
    釣りに出かけて他の事をしていた可能性があることー。
    さらに、今の夫の娘で、彼女と同じ歳の女性がブログに、彼女たち夫婦の事を悪意をもって書いていることを知る。

    読んでいて、ふと以前友達に言われた言葉が浮かんだ。
    職場の人間関係に悩んでいた私に、友人は、
    「結局、人が何を考えとるかなんて分からんよ。だから、そんなん考えても仕方ない」
    と言った。
    それを聞いた時、確かにそうだ・・・と思いながらも、でも考えまいとしても考えてしまうんだよな・・・と当時は思っていた。

    どこまでも前夫の事、義理の娘の事を考える主人公を見ていて、
    この物語の主人公の女性はそれほど今の夫を愛してないのではないか。
    今の生活にどこか満足してないのではないか。
    さらに、もし今生活に追われて忙しくしていたらこんな風に考える事もないんじゃないか。
    心に隙間があるから、これほど過去に心が揺さぶられるのではないか。
    そして、まだ会ってもない娘のブログに動揺して恐怖を覚えるのではないか。
    あの時、あの人はこう思ってるだろう、ああだろう、と悩む私みたいに・・・。
    自分の分からない、どうしようもない事を考え出すととめどなくて、ごうごうと頭の中でそれらがリフレインする・・・。
    それがこの本の言いたい事かな・・・と思ってたら後半違う方向に進んで、結末を見るとそういう事じゃなかったのかな・・・と思った。

    面白くてすぐに読めたけど、後半はあまり好きじゃなかった。
    主人公の女性の言動がチグハグな感じで、話し方も気取った感じなのが好きじゃない。
    優しい、理知的と描かれているけど、それは中途半端なものだと感じた。
    彼女の母親の考え方が、合理的と書かれているけど、その方が私には好感がもてた。

  • 夫が突然の失踪。事故か自らの意志かわからないまま7年が過ぎ死亡認定後に30歳以上年の離れた資産家の男性と再婚するが、再婚後も失踪した元夫を気にしてすごしていくお話。

    主人公の女性がどうしたいのか意味不明。
    登場人物ほぼ全員が嫌味っぽいのばかりでうんざりする。
    読んでいてあまりの苦痛に半分読んだところで挫折した。
    作中のメールのやり取りの様子で話を進めていく手法も苦手。なんだか疲れる。
    自分の好みではない。

  • 生死不明な伴侶を想う心の葛藤を描いた作品。

    第一章 庭の勾配
    第二章 海からの声
    第三章 あやしい夢
    第四章 親のこころ
    第五章 友人たち
    第六章 夫の心境
    第七章 釣り部
    第八章 痛手
    第九章 帰るべき場所

    八年前に、海で遭難した夫・庸介の妻・早樹は、死亡認定を経て、年の離れた富豪の後妻に収まる。

    しかし、庸介の母より、庸介を見たという目撃証言から、生死を疑うようになり、果ては自分と夫との関係まで掘り下げ、何が起こっていたのか知りたいと思うようになる。

    夫の釣り仲間や、周囲の人間に話を聞くにつれ、夫を理解していなかったことに絶望しつつ、現実の結婚生活、親族との関係性と負のスパイラルに。

    自分の生きる道は何かと自問自答しつつ、最後には答えが。


    予想外の展開というか、早樹が意外と思慮が浅い人物だっというか、人間というものは脆いものかという、なんとも言い難い読了感。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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