いのちの停車場

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 973
感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344036048

感想・レビュー・書評

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  • 上司、リーダーのあり方としても勉強になりました。人魚の願いの章がいちばん好きです。涙が止まりませんでした。

  •  残念ながら読み終えることができなかった。
     面白くなくはないのかもしれないけれど、私には合わず、最後まで読む気力がなかった。半分くらいまで読んで断念してしまった。

     でも、ラストは確認して、ある程度の内容は理解できたと思う。

     東京の救命救急センターで働いていた咲和子は、現場のミスの責任を取り、退職する。故郷金沢に戻り、訪問診療医となる。救急センターで働いていた咲和子は、多少なりとも舐めていた訪問診療医の大変さを痛感することになる。
     日々、癖のある患者たちに揉まれながら、訪問の仕事に取り組んでいく咲和子。
     咲和子には慣れない仕事以外にも問題があった。体調を悪くした父親が『安楽死をさせてくれ』と訴えてきた。

     安楽死を選ぶ父親の気持ちはよくわかる。もし、自分が病に侵され、まともに生活を送れないようになったら楽に死にたいと願うのではないだろうか。
     また、周りの人間の気持ちは真逆だ。いくら身内の人間が安楽死を願っても、どんな姿であれ、長く生きて欲しいと願わずにいられない。

     現役医師という作者。彼女の葛藤により生まれた作品なのかもしれない。

  • 死と向き合う。
    読んでいるのはいつの間にか小説ではなく、それをきっかけに覗く自らに関連した死であり、その連想により脱線し、物語が繋がらなくなる。死の瀬戸際に立ち会い、考えさせられる読書。

    小説が先だったか、近頃、死について考える事があり、その為に手に取った小説だっただろうか。生きる事の歩みや出会いをバスに乗り合わせたかのように例えるなら、バスから降りずに停車する生き様は在宅医療に似ている。物語は在宅医療の現場を通して、患者と向き合う在宅医。自らの選択で停車場を決め、降車していくのだろう。自らのいのちは自由なのか、ならば自ら停留所を決めて良いのか、読後もその答えは分からず、小説も答えは明かさない。

    死と同時に作話は途切れる。そして物語は、別の語り部が紡ぎ続ける。それが種の存続における利他性の本質であり、継承こそ人生の寄る辺。子孫、あるいは営為や事業であれ、歴史や教養、認知そのものであれ、いずれ。

  • 在宅医療をテーマにしたヒューマンドラマです。救急救命士として活躍していた主人公が、訪問診療医として奔走します。
    全6章+プロローグとなっていて、各章ごとに異なる症状を抱えた患者が登場し、主人公はどう患者と向き合っていくのかが見どころとなっています。さらに家族との絆、死を目前に控えた身内との向き合い方が描かれていて、辛く悲しくも暖かくさせてくれました。日に日に衰えていく状態にページを捲るのも辛かったですが、家族ならほぼ訪れることであり、色々と考えさせられました。死を目前に関係者は、冷静さを保てるのか。自分だったらなかなか正常ではいられませんが、その覚悟は常時持っていないといけないなと思いました。

    現役医師ということで、文章は医療関係の難しい言葉が多いですが、医者が患者に分かりやすく説明するかのように丁寧に書かれているため、そんなに支障はありませんでした。
    主人公の周りの人達も個性溢れる人達で、ほっこりとした気持ちにさせてくれました。

    物語では、その他にも主人公の父が、骨折を皮切りに日に日に体調が悪化し、全身に痛みが。そして、「死なせてくれ」と主人公に安楽死を懇願します。主人公は、どう判断するのか。

    最後は、予想もしなかった展開、衝撃的過ぎる結末に言葉でどう表現したらいいのかわからないくらい複雑な気持ちになりました。
    結末のその先が気になりますが、この気持ちを他の人と共有して話し合いたいです。
    暖かい気持ちにさせた矢先の衝撃的展開を是非目撃してみてください。

  • 在宅医療がテーマの作品。連作六章の構成となっております。

    東京の救急救命センターで働いていた、医師・白石咲和子は、とある事情から故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療の医師になることに。
    救急救命センターとの勝手に違いに戸惑いながらも、周りのスタッフと協力し合いながら奮闘する日々ですが・・。

    基本的に環境の整っている病院と異なり、在宅の場合はその患者さんの環境が様々なので、フレキシブルな対応が求められる現場だなと思いました。
    本書に登場する患者さん達も、オフィスビルの最上階に住むIT社長からゴミ屋敷に暮らす老女まで、まさにピンキリです。
    彼らの“生活そのもの”と向き合っていく、咲和子先生たちの姿勢に感心すると同時に、学ぶところが多くありました。
    とりわけ、第五章では、幼い少女が自分の死を受け入れていく姿に胸が締め付けられるようでした。
    そして、さらに辛かったのは第六章で、咲和子先生の父親が脳卒中後疼痛という激痛に苦しみ、“積極的安楽死”を望む話で、これはかなりシビアでした。
    在宅医療の難しさや「命を送る」ことについて考えさせてくれた本書ですが、個人的にはもうちょい後味の良いラストだったらなー・・と思った次第です。

  • 救命医療
    在宅医療
    安楽死
    様々な問題提起がなされ、興味深く読んだ。
    金沢の風景描写もいいなあ。

    でも
    肝心のラストに???
    すべて分かってる父親が何故???

    脊髄損傷の肝細胞治療 
    が尻切れトンボになってて???

    共感できるところとそうでないところ
    ちょっと消化不良のままページを閉じました

    ≪ 医療とは 命を送る 手伝いを ≫

  • 映画化された作品

    どこか幻想的に終末期医療を描いた「ライオンのおやつ」に対し、こちらは医師が書いたということもあり現実的に描かれています

    実際の在宅医療は難しいことが多いのだろうと思います
    作品はやや理想的に描かれているとは思いますが、いろいろと感じ入るところがありました

    最終的な判断は本人ではなく、残される者に委ねられることになる、いざその時どのような決断をするのか、難しいことですね

  • 東京から金沢、「命を助ける」場から「命を送る」場へと、環境も立場も全く違う、反対の状況で、戸惑いながらも溶け込んで行く咲和子先生の姿に、金沢の町並みが背景にあって、凄くいいです。この咲和子先生を、映画で吉永小百合さんが演じられることに、ぴったりだなと思いました。また、ちょっと抜けた感じのする野呂くんを、全く雰囲気の違う松坂桃李が、どう演じているのか楽しみです。
    腎腫瘍でもう治療法がない6歳の萌ちゃんが、両親より自分の死を受け入れていること、「癌になっちゃってごめんね」ってお父さんとお母さんに謝る場面が凄く切なくて、そして、生まれ変わった自分宛へのメッセージには、涙を止める事ができません。健康でいる事がどんなに幸せなことか、改めて思いしらされました。
    自分が、余命を告げられたら、どう過ごすか・・・また家族がそうなったら?
    人生最後の在り方について考えさせられる一冊でした。

  • 2020年5月幻冬舎刊。書き下ろし。在宅医療の医師を始めた咲和子先生は62歳。随分と若々しく、スタッフ逹と患者に向かい合う様子は真摯で終末医療の重い話が伝わってきます。6つの連作短編中、5つは重く、明るい話は、1つだけというのが残念です。東映で映画化されるそうで、咲和子先生を演じるのは誰なのか、が気になります。

  • 人の数だけ、生き方、そして、死がある。
    在宅医療を選ぶことは、患者だけでなく、家族の生き方にも関わる。人は一人では何もできない。いろいろなことを考えた。

    安楽死のところは、これまで何度も読み返した高瀬舟のことを思った。

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著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の高齢者向け病院に内科医として勤務するかたわら『サイレント・ブレス』で作家デビュー。『いのちの停車場』は吉永小百合主演で映画化され話題となった。他の著書に『ヴァイタル・サイン』『ディア・ペイシェント』などがある。


「2022年 『アルツ村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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