死という最後の未来

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344036130

作品紹介・あらすじ

キリストの信仰を生きる曽野綾子。法華経を哲学とする石原慎太郎。
対極の死生観をもつふたりが「老い」や「死」について赤裸々に語る。
死に向き合うことで見える、人が生きる意味とは。


歳はひとつ違い、家も近所で、昔からの友人。だが会う機会は多くはなかったという石原氏と曽野氏。そんなふたりが「人は死んだらどうなるのか」「目に見えない何か、はある」「コロナは単なる惨禍か警告か」「悲しみは人生を深くしてくれる」等々、老いや死、人生について語り合う。老境のふたりにとっての孤独や絶望、諦観や悲しみ、そして希望とは。

感想・レビュー・書評

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  • たまたま図書館で展示されていたので借りたが大当たり。はからずもいろいろ考えさせられたので星五つ。

    死という問題に対して、失礼ながら私から見て生ぬるいキリスト者であるカトリック教徒の曽野綾子と、無神論者である法華経信奉者の石原慎太郎の対話集。キリスト者として読むのではなく、一歩も二歩も引いて世の人同士の対話として読むと、示唆に富む書で感動すらできた。

    キリスト者的には「なぜそこでキリストを伝えない」とか、「そこは聖書にはこうあって…」などといろいろ言いたくなる。

    しかし(カトリックとはいえ滅びの人ととらえて)、滅びゆく人同士が死について自分の思いを語っているととらえると、非常に興味深い。

    付箋を貼った個所の感想:

    70:石原氏がヨットレースでの体験を話す。他の舟のクルーが荒波で死んだと無線で知る。すると自分たちは妙に生き生きとして活気が出る。「自分たちは生きている」と思うのだとか。死は世の人らにはこうやって実感させられる。

    88:その他の場所でも繰り返し石原氏は死についての持論を展開。曰く死は完全に無になるとの事。でも死についての強烈な好奇心はある様子。それでも無だとか、死んだら終わりだとのたまう。大いなる矛盾。氏は死との対決をしているようで、無視して避けたい様でもある。

    120-121:曽野氏の「信仰を生きる」という表現について石原氏は分からない様子。すぐ次の話題に移る。私にはすぐわかるのだが、石原氏には分からないのだろうなと、なるほどと思った。

    199:ここの箇所以外もそうだが、石原氏の生に対する執着を感じられる自己鍛錬に関する記述。いのちを輝かそうと一生懸命な石原氏に対して、信仰的な考えからあるがままを受け入れている風の曽野氏。対照的な生きざま。常に話は閉口するのだが、石原氏は興味を示しつつも絶対に納得しない。納得しないと決めているような、かたくなさというか、はじめから結論を決めているような様子。世の人も多くがこんな感じか。

  • 夫が図書館で借りたので私も読んでみました。

    曽野さん89歳、石原さん88歳。
    お二人が語る死生観は完全に相反する考え方で全く嚙み合わないのですが、でもそれがおもしろかったです。

    曽野さんは、死という逃れられないものがあって、でもその時が来るまでは、与えられている生涯をどれほど自由に使えるか考えながら生きればいい、そして、特に年老いたとき、その人を輝かせるのは「徳」だけであり、社会貢献、人の役に立てるということが自分自身の希望になるんだと言います。

    一方石原さんは、最後までがむしゃらにやりたい、人間は本来、自分はどう生きるべきかを考えて生きる生き物であるから、ただ漠然と生きていてはいけない、と、今だ知識欲や探求心が旺盛で、死に関しても様々な角度から現在も考察を続けているので、まだまだ死にたくないと言います。

    個人的には曽野さんのすべてを受け入れる死生観に惹かれますが、心の奥底からそんな心境になるためには今を受け入れ、満足する日々を送らなければいけないし、でもそのためには漠然と生きるのではなく、それこそ知識欲や探求心を忘れずに、そして人の役に立つことをしていないと満足する日々は送れないなと思いました。

    あとは関係ないけど石原さん、政治家だったのに「僕はあんまり人の役に立つという意識をもって仕事したことはない」と言っててびっくり。政治家失格過ぎる発言・・・

    それと、曽野さんがご主人と死別する際、看護婦さんから「もうすぐお話が出来なくなるので今のうちにお話しなさってください。」と言われたときに「63年間ずっと喋り通してきましたから、喋り足りないことは何もないんです。」と笑ったそう。
    そんな最後を私も夫と迎えられたら幸せかなあ、ととっても印象深かったです。。

  • 生き方が対称的なお二人の多彩な会話がとても含蓄が深くよかったです。

  •  曽野綾子さん(1931~)、石原慎太郎さん(1932~2022.2.1)。お二人の人生観、死生観がよく出た対談だと思います。「死という最後の未来」、2020.6発行。テーマは、他人の死と自分の死、死をどう捉えるか、老いに希望はあるのか、の3つです。①知覧、富屋食堂の鳥濱トメさん。特攻隊員にお母さんと慕われていた。亡くなった時、官邸に国民栄誉賞をと言った慎太郎氏の気持ち、よくわかります。②円谷幸吉の遺書は、ただ涙です ③起きたらタワシで全身をこすり、2km散歩、スクワット30回 ④毎日、あえて自分に義務を

  • 一昨日のニュースで石原慎太郎氏の訃報を知ってその日の仕事帰りに、ずっと気になっていたこの本を購入して読んだ。死に対する石原、曽野両氏の正反対な考え方に「ごもっとも」と両者の意見に納得してしまう風見鶏な私は、自分自身が全くもって「死」と言うものに向き合った事の無い浅はかな人間で有る事を思い知った。誰にでも平等に用意されている「死」。どうやって向き合い、そして受け入れて行くべきか?それはもちろん答えなど無い。その時が来て、後悔する事が無いよう今後の生き方を真剣に考えるべきと思った。石原氏は89歳で生涯を閉じたが、この本は石原氏88歳の時に書かれたものである。石原氏の影響力は甚大で日本国民に与えた影響と功績は計り知れない。石原氏のご冥福を心よりお祈りしたい。

  • あまり期待したほどの内容ではなかった。
    この辺りの問題は、書物にて習得するものではないと言うことか?
    宗教者と語っても、出てきる答えでもなし…
    もう少し楽しみながら考えてみます。

  • 死とは人生の頂点であり最期の未知そして希望

  • キリストの信仰を生きる曽野綾子。法華経を哲学とする石原慎太郎。対極の死生観をもつふたりが「老い」や「死」について赤裸々に語る。死に向き合うことで見える、人が生きる意味とは。 歳はひとつ違い、家も近所で、昔からの友人。だが会う機会は多くはなかったという石原氏と曽野氏。そんなふたりが「人は死んだらどうなるのか」「目に見えない何か、はある」「コロナは単なる惨禍か警告か」「悲しみは人生を深くしてくれる」等々、老いや死、人生について語り合う。老境のふたりにとっての孤独や絶望、諦観や悲しみ、そして希望とは

  • 50歳を迎えて体力の衰えを自覚すると同時に、何事にも「欲」というものが弱まってきた。そして「どう死にたいか」を考えることが多くなった。そこで本書。
    著名作家である石原慎太郎、曽野綾子が死について語り合う内容。「自然の流れに任せて静かに死を迎えたい」という曽野に対して、石原は「最後まであがいて死の本質を見き分けたい」という考え。なので最後まで話が噛み合っていない。
    ただ、曽野は「人は人、私は私」と石原の意見も受け入れるのに対して、石原は曽野の考えを正面から否定する。その配慮のなさが子どもっぽい。また、「僕はあんまり人の役に立つという意識を持って、仕事をしたことはない」という言葉も。
    この人はいったい何を考えて政治家になったのだろう。頭はいいが組織のトップに向いた人柄ではないように感じた。総理大臣候補になったこともあったが実現しなくて本当によかった。
    しかし一点だけ感心したこともあった。曽野への態度に敬意を感じるのだ。テレビからの印象では、いつもふんぞり返っているので、完全に男尊女卑の人だと思っていた。しかし実績ある年長者には、例え女性であっても相応の対応ができるらしい。そこは意外だった。

  • 曽野綾子さんと石原慎太郎さんでは、正反対の対象的な考え方。曽野さんの考え方に同意

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著者プロフィール

1932年神戸市生まれ。一橋大学卒業。55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」により第1回文學界新人賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞受賞。『亀裂』『完全な遊戯』『死の博物誌』『青春とはなんだ』『刃鋼』『日本零年』『化石の森』『光より速きわれら』『生還』『わが人生の時の時』『弟』『天才』『火の島』『私の海の地図』『凶獣』など著書多数。作家活動の一方、68年に参議院議員に当選し政界へ。後に衆議院に移り環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職し、99年から2012年まで東京都知事在任。14年に政界引退。15年、旭日大綬章受章。2022年逝去。

「2022年 『湘南夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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