砂嵐に星屑

著者 :
  • 幻冬舎
3.54
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344039025

作品紹介・あらすじ

直木賞候補『スモールワールズ』で注目を集めた一穂ミチ。
期待の書き下ろしは、あらゆる世代に刺さるすぎる群像劇!
日々頑張るあなたが、きっとこの本の中にいます。

舞台はテレビ局。旬を過ぎたうえに社内不倫の“前科”で腫れ物扱いの四十代独身女性アナウンサー(「資料室の幽霊」)、娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む五十代の報道デスク(「泥舟のモラトリアム」)、好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居している二十代タイムキーパー(「嵐のランデブー」)、向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している三十代AD(「眠れぬ夜のあなた」)……。それぞれの世代に、それぞれの悩みや壁がある。
つらかったら頑張らなくてもいい。でも、つらくったって頑張ってみてもいい。続いていく人生は、自分のものなのだから。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 『俺の人生、この先ひとつもええことなんかないんやろな』

    人は日々を生きていく中でさまざまな事ごとに対峙していかなければなりません。昨日と今日、そして明日、たった24時間の違いの中でも、私たちの周囲は、私たちが置かれる環境は日々刻々と変化していきます。例えば進学、それまで毎日一緒だった友達と別れて全く新しい環境の中に飛び込む、そこでは新たな自分の居場所を作っていくことがまず求められます。それは、その先に続く就職だって同じことでしょう。学校時代と会社員としての人生は全く異なる能力を求められます。さまざまな理由はあるとは思いますが、入社三年以内の離職率が三割にものぼるという事実はそんな現れでもあるのだと思います。

    そして、環境の変化は会社員となったその後の人生でもずっと続いていきます。ある組織の中で、ある一人の人が人事異動した、それだけのことでもその組織のパワーバランスは微妙に変化します。会社員として10年、20年、30年…と生きていくというのはそんな変化に柔軟に対応していくことが必要です。会社員として一生を送ることもなかなかに大変なのだと思います。

    例えば”出世競争”は代表的なものでしょう。『義理人情など重んじるようには見えないのに案外根回しや気遣いを欠かさず、目端が利く男はとんとんと出世して…』と同期入社した人物が順調に出世していく様にはなんとも言えない思いに苛まれもするでしょう。また、『不まじめで要領も悪いから何をやってもうまくいかない』と『同じ屋根の下、同じフロアで働きながら』も他の人間を『別世界の住人』と自らを卑下している人もいるかもしれません。そして、『つぶしがきかない、って、わたしのことだ。社会に出る段階ではそんな予定もつもりもなかったのに、いつの間にかつぶしがきかない人間になっていた』と、思っていた未来とは違う今に慌てたじろぐことだってあるのかもしれません。

    さて、ここに、そんなさまざまな思いを抱きながらも今日も同じ組織の中で働き続ける会社員たちの姿が描かれた作品があります。『俺ひとりおらんでも仕事は回る』と、後ろ向きな主人公たちの感情が渦巻くのを見るこの作品。『ああもうやる気なくした、全部やめたろか』といった内面の吐露に読者も辟易するこの作品。そしてそれは、そんな会社員たちの心のつぶやきの中に、それでも日々を前に進めていくことの意味、人が生きていくことの意味を感じる物語です。
    
    『東京で生まれ育ち、就職で大阪に来て十年暮らし、東京へ異動してまた十年、そして今。どっちが自分にとっての「ホーム」なんだろう』と、『久しぶりに大阪に戻ってき』た今を思うのは主人公の三木邑子(みき ゆうこ)。『ストップウォッチ片手にニュース原稿をざっと下読みして、尺の感覚や、つまづきそうな箇所を確認する』邑子が顔を上げると、そこには『十年ぶりに会う中島』の姿がありました。『三木ちゃん全然変わってへんなあ』と言う『中島は邑子より十年近く先輩』で『ニュース番組のデスク』でもあります。『踏み込んだ冗談も許容してくれる』中島。そして、別の日、仕事を終えた邑子は、『歓迎会、グラフロでやりますんで』と案内され、『大阪駅が目の前という抜群の立地』にできた初めての場所へと向かいます。そんな新しい景色を見ながら『十年という時間の長さは邑子の中でひとつも確かな手応えとして残っていないのに、世界はこうして着実に積み重ねられている』と『物思いに耽』りながら、会場へと入りました。『東京行って報道記者してたんでしょ?すごくないですかー?』等邑子を持ち上げてくれる会話の中で『でもプライベートは見習わんでええからな』と部長の五味の一言に『それ、一応オフレコですからー!』と応じて場を持たせた邑子。そんな中、『お先に失礼させていただきます』、『映画の時間があるんです』と『今年の新入社員』の笠原が出て行きました。『ずいぶんはっきりした子ですね』と笠原の話題で盛り上がる中、『面接の段階で確認せなあかんな、て村雲さんも言うとってー』と『村雲清司の名前を口にした途端、五味はあからさまに「まずい」という表情になり不自然に黙り込』みます。『何も聞こえなかったふりを』する邑子。そんな翌日、中島、松井という三人での飲み会に出た邑子は、『早期退職するつもりやねん』と松井に打ち明けられます。『仮に局を辞めたら、何ができるのか…おそらく収入は今の半分以下になる。無理だ…』とさまざまな思いが去来する邑子。そんな邑子に、『噂が広まる前に知っといたほうがええと思って』、『村雲さんのこと』と中島が声をひそめます。『幽霊、出るらしいねん』、『資料室で見た、いう子が何人かおって…』というその噂を聞いて「ありえないでしょ…いったい誰がそんなたちの悪い噂を流したんだろう』と思う邑子。しかし、そんな話が気になった邑子は、中島たちと別れた後、社へと戻り資料室へと向かいます。『不審な人も物も見当たらない』と部屋を見る中にまさかの笠原が現れました。『ここ「出る」って聞いたんで。興味が湧いて』と話す笠原。そんな中、『明かり』が『すう…と息を吸い込むように消え、また吐き出すようにふう…と点灯する』ことを繰り返し出します。そして、ついに『消えた明かりが暗いままになった時』、邑子の『背中に雪崩のような寒気が走』りました。笠原の『肩越しに、それはいた。村雲だった』というまさかの展開。冒頭からいきなりのファンタジーな展開の中に、邑子が四十三歳の今の苦悩の中にある自身が生きる意味を感じていく物語が始まりました…という一編目〈春 資料室の幽霊(ゴースト)〉。この作品全体の舞台背景の概要を読者に提示しつつ、主人公・邑子の苦悩の正体を見事に描き出していく好編でした。

    “一見華やかなテレビ局。そこで働く真面目で不器用な人たちの物語”と本の帯にざっくり語られるこの作品。本の帯の記載通り大阪にあるテレビ局を舞台にテレビ番組制作の舞台裏で働く人たちの”お仕事小説”としての側面を持つのが一つの特徴です。この作品は四つの短編が連作短編を構成していますが、同じような作りの作品としては、遊園地で働く人たちの舞台裏を描く寺地はるなさん「ほたるいしマジカルランド」、シネコンとも呼ばれる複合映画館で働く人たちの舞台裏を描く畑野智美さん「シネマコンプレックス」などが思い浮かびます。これらの”お仕事小説”としての面白さは、それぞれの舞台となる場所・組織を運営していくにはさまざまな人たちの存在があるという舞台裏を知ることができること、また、連作短編という形式によって、ある短編で主人公を務めた人物が、他の短編で背景の人物として登場した時にどう見えるのか、どんな風に他の人物から見られているのか、まるで読者もそんな場所・組織の内側に入ったような感覚を楽しめるところです。

    では、まずはこの作品の”お仕事小説”の側面からテレビ局の舞台裏で働く人たちがどんな風に描かれているかを四人の主人公を通してみてみたいと思います。

    ・〈春 資料室の幽霊(ゴースト)〉: 三木邑子、アナウンサー、『目の前のニュースを間違えたりつっかえたりせずお送りするのが仕事』
    → テレビ局の”お仕事”で最も華やかと思われるアナウンサーですが、四十三となった邑子はこんな風に現実を嘆きます。『仮に局を辞めたら、何ができるのか。フリーで華々しく…露出できるのは東京の、それもほんのひと握りのスター的な女子アナだけ。デスクワークのスキルや資格はなし…結局会社に守られ、会社に養ってもらうしかない』。一見、華やかなアナウンサーという職業の裏に見え隠れする厳しい現実、そんなアナウンサーの生き方に光が当たります。

    ・〈夏 泥舟のモラトリアム〉: 中島、ニュース番組のデスク、『「報道」という仰々しい仕事の隅っこ』
    → これはなかなかに見えないお仕事。ニュース番組をまとめていく中間管理職的な描かれ方がされます。そんな中島が熊本地震を取材した時のことが印象的に語られます。『毎日毎日、何かネタはないかとアンテナを立て、自らも余震にぴりぴりしながら…オンエアされるかされないかは考えたって仕方ない…という日々。『情報にあふれた』中、『視聴者に熊本を忘れずにいてもらうため…何ができるのか』と現地の人たちと向き合っていく日々が取り上げられます。

    ・〈秋 嵐のランデブー〉: 佐々結花、タイムキーパー、『ストップウォッチを三つ用意して、番組入りから…コーナー入りから…今流れているVTRの尺』それぞれを見ながら、時間を読み上げます。
    → よく聞く名称ではありますが、実際のところは視聴者からは全く見えない仕事です。そんな仕事は女性ばかりだそうです。その理由が『昔はテレビの現場に今よりずっと女がすくなくて…みんなが声張り上げる中で、尺のカウントだけはちゃんと通らなあかん。せやから女の声がええねん…どんなにえらそうに怒鳴ったところで、TKの声に耳澄まさなオンエアできへんねん』とその理由が説明され、結花がこの仕事を選ぶにあたって『いちばん心動かされた要素』と語られます。

    ・〈冬 眠れぬ夜のあなた〉: 堤晴一、下請け会社のAD、『密着系の企画で重要なのは、取材対象者にいかにカメラという異物に慣れてもらうか』
    → 昨今、”ブラック”な仕事として話題になるADのひたすらに気苦労の多い現場が描写されます。例えば病院に取材を行うに際して『事前のOKと現場でのOKは往々にして誤差が大きい』という状況について『カメラが入っていいのは』どこまでか、『子どもの顔や名前がわかるものはすべてモザイクを入れる、インタビューを撮る際は個別に保護者の許諾が必要』という大変さ。そして『オンエアしてから「聞いてない」と抗議がくることも日常茶飯事なので、念には念を…』とテレビに映らない仕事の裏側が描かれます。

    四つの短編に登場する主人公たちそれぞれの仕事の現場とその気苦労が窺い知れる描写の数々。『黎明期にはうさんくさく、最盛期にはやりたい放題で、衰退期にある現在は時代遅れのくせに威張っている、そういうイメージ』と語られていくテレビ局の舞台裏のさまざまなお仕事に携わる人たち。私には全く縁のない世界ですが、そこで作り出される華やかな放送作品の裏側にはどこの会社組織でも同じようなドロドロとした人間関係の闇があるのだと思いました。なかなかに興味深い世界を見せていただきました。

    そんな”お仕事小説”の側面があるこの作品ですが、読んでいて、それ以上にモヤモヤ、もしくはイライラした気分にさせられる作品でもあります。それこそが、それぞれの主人公たちが、それぞれの仕事の中に何らかの不満、不安を抱えながら生きている、その内面が執拗に吐露されていくところです。例えば、一編目の主人公であるアナウンサーの邑子は、かつて新人として働き出した大阪の放送局である事態を引き起こし、東京へと異動、再び大阪に戻ってきたという経歴を辿ります。そんな中に『十年で街はこんなに変わったのに、わたしはただ年を取り、老いへと下っていっただけ。積み重ねた財産も身につけた武器も見当たらないまま、若さという唯一の取り柄さえ失ってしまった』という今を嘆きます。二編目の主人公であるデスクの中島は、『俺ひとりおらんでも仕事は回る。てきぱきと指示を飛ばせるわけでもなく、兵隊として俊敏に動き回れるわけでもない、年だけ一人前に食った中間管理職など組織にとって贅肉に等しい』と自らを揶揄します。そして、四編目のAD・晴一は、『先のことなど何ひとつわからないが、漠然と「詰んでんなあ」』と感じ、『不まじめで要領も悪いから何をやってもうまくいかない』とすっかり投げやりな気持ちの中にいました。人はお互い心の内で何を考えているかは分かりません。笑顔を見せていてもその心の内が晴れ上がっているとは限りません。それぞれの主人公たちは、それぞれに与えられた会社員としての役割を日々こなしながらも、それぞれに複雑な胸の内を抱えています。年齢による不安、結婚に対する不安、そして将来というものに対する漠然とした不安、そんな不安が不満として心の中で渦巻く瞬間がひたすらに描かれていく時、読者はそこにイライラとした感情を抱きます。これは、現実世界でも同じことだと思います。他人のうじうじとした愚痴を聞かされることほど不快な時間はありません。この作品は、そんな愚痴を聞かされるようなところがあります。しかし、そんなイライラする読書の中で、ふっと気づきを得る瞬間が訪れます。それは、この作品を読んでいる読者自身の姿を見ているような感覚、読者自身も主人公たちと同じように他人からは見えているのかもしれない、そんな気づきの瞬間です。『ことあるごとに誰かと比べ』後ろ向きな感情に囚われていく瞬間の意味のなさ。そんな気づきの後に物語から見えてくるもの、それこそが、それぞれの主人公がそれぞれに前を向いていく瞬間を見る物語です。この作品ではそれぞれに何かしらの出来事は起こります。しかし、主人公たちがきっかけを得ていく瞬間はそこにあるわけではありません。ほんの少しの気持ちの持ちようの変化、『誰かと比べ』るのではなく、自分が自分にきちんと向き合う瞬間、『大丈夫、頑張れ、ちゃんと見ててあげるから』、自分自身に呟くそんな言葉の先に次に続く未来が確かに開けていく、この作品には私たち誰にでも決して特別ではない、そんな生きていくためのヒントが描かれていたように思いました。

    『やらかして、腐って、いじけるばかりだった日々を、評価してくれる人がいる』。

    そんな言葉の先に、会社員としての今までの人生の意味を掴んでいく主人公たちの姿が描かれるこの作品。そんな作品では、テレビ局の舞台裏で今日も人知れず働くさまざまな職種の人たちの生き様が描かれていました。『わたしだって疲れてるよ、くたびれてるよ萎びてたるんでるよ』と今の自身の姿を蔑む主人公たちが登場するこの作品。その一方で、それぞれの仕事のプロとしてテレビ番組を真摯に作り出していく姿が描かれもするこの作品。

    普段、特に意識することのなかったテレビ番組のエンディングのテロップの名前に、読後なんだか親しみを感じるようになった、そんな作品でした。

  • テレビ局大阪支局。職種も立場も年齢も違う四人の人生の四季。
    重めの題材を軽めの文章で描いて、妙。
    忘れたい事の方が、こびりついてー。って文章が2話目あたりにあったけど、その楔から解放する何かを求めている感じかな。
    どの年代の短編もしっくりくるけど、〈秋〉嵐のランデブーのような、屈折しながら愚直にしか生きられないマイノリティは、なかなか他の方では読めないので積極的に書いていただきたいのです。
    〈夏〉泥舟のモラトリアムは、ストーリーとタイトルの絶妙感が良いです。残される組織の泥舟で一時考えてみるも良い。

  • 大阪のテレビ局員四人をそれぞれ主人公とした短編集。(初版本は、スピンオフ掌編「砂嵐に花びら」がQRコード付きの作品として読めて良かった。)

    40代独身女性アナウンサー、50代の報道デスクの男性、20代タイムキーバー女性、30代ADの男性の4編。
    華やかで憧れられるTV業界に勤める人達の仕事や、その業界ならではの…大変さが少し垣間見れた。

    この四人は仕事やプライベートで四人とも、それぞれに劣等感やどうしようもない悩みなどを抱えていた。周りからはわからないが、自分の心の内では結構思い悩んでいて、それぞれ序盤はそんな内面の心理描写が多くて読んでいて、ちょっとしんどいところもあった。
    でも一穂ミチさんの文章って、さらっとしていて、リアルな感じの表現が良いし、だからこそいろいろと共感させられてしまうし。ドキッとさせられたり、ほわっとなったりするような、言葉選びも凄いなと思った。

    そして皆、悩みながら懸命に頑張っていて、ちょっとだけ、前に進めるような優しいラストにつながっていくところ……も、良かった-

  • 不思議だ
    普段からスマホでネットを見ていて全く気にならずに当たり前のこととなんの疑問もなんの不便もなく受け入れている「横書き」が小説と言われた瞬間に違和感バリバリで読みづらくイラッとする

    なんの話かって?
    初版特典の『砂嵐に花びら』を読んだ感想です
    QRコードを読み取って出てくる短編
    これが相対性理論というやつだな!(たぶん違う)

    一穂ミチさんのテンポのいいやつ
    小気味よいって言葉がばっちりはまる連作短編若干中編より
    このテンポは作品全体を覆う大阪感とは無縁ではないはず(まず大阪感を説明しろ)

    なんていうかな〜
    なんか好きに書いてるな〜、のびのび書いてるな〜と感じました
    ちょっぴり重いテーマも含まれてたりして、テレビ業界の中で生きる人という横軸の登場人物たちの葛藤や悩み、後悔なんかが描かれてていて本来ジメッとしてる中身から爽やかさを感じるんだよね
    うーん不思議、なんでこの内容から「のびのび」を感じるんだろ?
    分かったこれが相対性理論だ!(恐らくさっきより離れた)

    あれ?なんか一穂ミチさんちょっとハマってる感じなのに今のところ全部★4だ
    うーんあれか?これが相対性(もういいわ)

    • みんみんさん
      文章のリズム?テンポ?
      内容は面白いのに読んででイラッとする作品はテンポが合わないって事かな?

      文章のリズム?テンポ?
      内容は面白いのに読んででイラッとする作品はテンポが合わないって事かな?

      2022/11/10
    • ひまわりめろんさん
      なんだろうね〜w

      ただテンポが大阪感を生み出してるんじゃなくて、大阪感がテンポを生み出してるんよね
      それと俺自身はがっつり関東人なわけだか...
      なんだろうね〜w

      ただテンポが大阪感を生み出してるんじゃなくて、大阪感がテンポを生み出してるんよね
      それと俺自身はがっつり関東人なわけだからある種の分かりやすさも内包してると思えるわけ

      しかも前回読んだ『スモールワールズ』ではいろんなテンポの作品があったことから分かる通り、一穂ミチさんはこの感じを出し入れできるんだよね
      自然に醸し出てるんじゃなくて意図的な作風だと思うんよ
      そのあたりにも大阪感を解き明かす手がかりが隠されてるはず!w
      2022/11/10
    • みんみんさん
      次読んだらまた考察してね\(//∇//)
      わたしはbl一穂で考える笑
      次読んだらまた考察してね\(//∇//)
      わたしはbl一穂で考える笑
      2022/11/10
  • これはなかなかよい。
    前作「パラソルでパラシュート」があまり心に刺さらなかったので油断していた。加速度的に刺さりまくって一気読み。
    読み終わって作品紹介にある「あらゆる世代に刺さりすぎる」というフレーズに思わず苦笑い。

    これも、「パラソル」に続き大阪が舞台。
    地震やら台風やら、最近大たてつづけに大阪を襲う自然災害なんかも素材に使いながら、様々な年代の悩みや葛藤を描く。

    人生はそれぞれだ。自分の人生で手一杯。決して他人の人生を歩むことはできない。

    だけど、

    ー 薄い関わりであろうと縁は縁で、思いがけず誰かの魂にそっと指先が掠める瞬間というのは確かにあり、自分が望むと望まざるとに関係なく、尊い一瞬だと思う。

    そのとおりだと思う。
    前に大阪という街が好きだと書いたけど、大阪にいると、そういう一瞬に出会うことがとても多い気がするから好きなんだな、とこの本を読んで気づいた。

  • 前評判は高く、スモールワールズも面白かったので期待度高め。4話の短編集で、テレビ局を舞台にした登場人物の人生の断面を実写するかのような内容だった。社内不倫の前科者のイタイ四十代独身女性アナウンサーと亡き不倫相手の幽霊、反抗期の娘と早期退職に悩む五十代のデスク、二十代タイムキーパーとゲイの彼氏、モラトリアム中の三十代AD。全ての登場人物への感情移入ができず、盛り上がりを一切感じなかった。大阪弁での会話が苦手作家・有〇作品を想起してしまった。で、読み友さんの皆さんが何故面白かったのか?これから探索しま~す。①

  • やはり一穂ミチ、これも読み捨てには出来ない作品でした♪
    大阪のテレビ局に仕事する四人のそれぞれにフォーカスして構成されている物語で、アナウンサー・報道デスク・タイムキーパー・ADと職種も性別も年齢もバラバラだけれど、しかも秀でてもいないけれど人知れぬ悩みや苦労を抱えて人生を歩んでいる様子が切なく迫ってきます。
    けっこうシビアな四話ですが大阪弁がいい働きをしているし四人がそれぞれの編にも適当に出ているので馴染み易い展開になっています。
    哀しいのだけれどどこか可笑しいし切ないしそれでいて応援もしたいような、陽の当たらないバイプレイヤーたちの切り取り方が著者特有ですね。
    追伸、巻末のQRコードでの小編「砂嵐に花びら」もちょいとしたオマケでした♪

  • 大阪のTV局で色々な事で悩みながらも働く人々達の連作短編集。昔の不倫相手が亡くなったため大阪に戻ってきたアナウンサーの邑子が新人アナの雪乃に巻き込まれて不倫相手の幽霊騒動に関わっていく「資料室の幽霊」でもしや非現実路線か、と思っていたら地震で徒歩通勤する羽目になった過程で娘との関係やこれからの仕事について見つめ直したり「泥船のモラトリアム」ルームシェアはしているが絶対振り向いてくれない男の「何か」になりたくて苦しむ「嵐のランデブー」非正規ADという立場にもやもやしている所にステップアップとなる仕事がきたのに相変わらずもやもやしてしまう「眠れぬ夜のあなた」ととても地に足のついた路線でした。誰にでも後悔している取り戻せないものはあるけど、それでも歩いていけばなんとかなるといった感じで締まるのがしみじみした。でも話としては小粒かなー。新人女子アナの雪乃が最初と最後で印象が違って可愛かった。

  • 一穂ミチは『スモールワールズ』に続いて2作目。
    『スモールワールズ』は読むのにしんどさを感じたけど、こちらはそうでもなかった。
    やはり家庭より仕事場の物語の方が引いて読める分だけ気楽なのか。
    日々の仕事に倦んだ時に読むと、ほんの少し心が軽くなる、かもしれない。そんな感じ。


    作品紹介・あらすじ
    直木賞候補『スモールワールズ』で注目を集めた一穂ミチ。
    期待の書き下ろしは、あらゆる世代に刺さるすぎる群像劇!
    日々頑張るあなたが、きっとこの本の中にいます。

    舞台はテレビ局。旬を過ぎたうえに社内不倫の“前科”で腫れ物扱いの四十代独身女性アナウンサー(「資料室の幽霊」)、娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む五十代の報道デスク(「泥舟のモラトリアム」)、好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居している二十代タイムキーパー(「嵐のランデブー」)、向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している三十代AD(「眠れぬ夜のあなた」)……。それぞれの世代に、それぞれの悩みや壁がある。
    つらかったら頑張らなくてもいい。でも、つらくったって頑張ってみてもいい。続いていく人生は、自分のものなのだから。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。

  • 仕事のやり方に落ち込んで、まわりの人が完璧に見えてさらに沈んでいた最近。帯の「大丈夫。みんな、そんなにちゃんとしてない。」という言葉に惹かれて手に取った。
    充実しているように見える人も、何か問題を抱えているのかもしれないとちょっと気が楽になった。
    砂嵐のように荒れた毎日の中に、ちょこっとの星屑があれば。

    一見華やかなテレビ局で働く4人にそれぞれ焦点をあてた連作短編集。
    一話目を読んだときは「え、ファンタジー…(?)」と思ったけど、ちゃんと人間の悩み、苦しみが描かれている。
    「〈秋〉嵐のランデブー」と「〈冬」眠れぬ夜のあなた」が良かった。


    「「……よるべになりたい」
    結花は答えた。由朗がよるべない日、たとえば遠くで弾けるパレードの光が寂しくにじむ夜には、佐々がおるし、と思ってほしい。何の役にも立たないけれど、脳裏に描くのを許し合えるよるべになりたい。誰のハンコも許可もいらないのに、それはきっととても難しい。」

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

一穂ミチの作品

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