罪の境界

著者 :
  • 幻冬舎
3.84
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本棚登録 : 2015
感想 : 173
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344040137

作品紹介・あらすじ

無差別通り魔事件の加害者と被害者。決して交わるはずのなかった人生が交錯した時、慟哭の真実が明らかになる感動長編ミステリー。「約束は守った……伝えてほしい……」それが、無差別通り魔事件の被害者となった飯山晃弘の最期の言葉だった。自らも重症を負った明香里だったが、身代わりとなって死んでしまった飯山の言葉を伝えるために、彼の人生を辿り始める。この言葉は誰に向けたものだったのか、約束とは何なのか。

感想・レビュー・書評

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  • 浜村明香里26歳は渋谷の松濤のレストランで恋人で出版社に勤める東原航平と自分の誕生日のデートの待ち合わせをキャンセルされ、渋谷のスクランブル交差点を歩いている時、通り魔に斧で切りつけられます。

    明香里は17か所の傷を負い重傷もう一人の女性も助かりますが明香里を助けようとした飯山晃弘という48歳の男性が、最後に「約束は守った…、伝えてほしい…」と言いながら亡くなります。

    犯人は小野寺圭一26歳。
    すぐにつかまり、拘置所に入ります。
    小野寺は「こっちの世界に入りたかった」といい刑務所に入り、自分を捨てた母親に復讐してやりたかったとフリーライターの溝口省吾に語ります。
    溝口は、自分の生立ちと似ている小野寺に共感し、小野寺の半生を本にして出版したいと思っています。
    そしてなんと溝口は失意のどん底にいた明香里の恋人の航平の勤める栄倫社から本を出版することになります。

    そして、溝口は航平の存在を知り、明香里に本の原稿を送りつけます。
    明香里は実家を出て航平とも別れ、アルコールがなくてはいられない生活を一人で送っていましたが、その原稿を読み航平と再会します。

    そして明香里は次第に立ち直り、航平とともに、自分の身代わりになって亡くなった飯山の最後の言葉「約束は守った…、伝えてほしい…」というのは誰に向けられたものなのか探そうとします。
    飯山には身寄りがなかったのです。


    ネグレクトについて書かれた小説だと思いました。
    犯人の小野寺とライターの溝口はネグレクトを受けて育ちました。


    しかし、身寄りがなくても飯山のように人を助けて亡くなった人間もいるのです。
    明香里はいいます。
    「飯山さんも私も罪の境界を超えなかった」
    それが本作品のテーマだと思いました。
    飯山の守った約束が最後にわかるのですが、泣かせます。

  • 無差別通り魔事件の被害者となり、自らも重傷を負い一時は意識不明だった明香里。
    彼女を助け、身代わりとなって死んだ飯山の最期のことば「約束は守った…伝えてほしい…」
    これが誰に向けたものだったのか、自身の今後に希望を持てず自暴自棄になりながらも救ってくれた飯山のこれまでを辿ることになる。

    一方では、加害者の経歴を辿るライターは、彼が自分と同じような過去であることに興味を持ち、一冊の本を出せないかと幼少期まで探ることになる。
    ネグレクトを受け学校にも通うことのなかったことが、人を恨み世の中を憎むことになるのか…。

    加害者と被害者が、この事件でどう変わっていったのか、そしてどう生きるべきなのかがわかる。

    罪の境界。
    どんなに苦しく辛くてもけっして越えてはいけない。
    自分の人生を呪うな、誰かを恨むな、自ら変えていこうと努力しないと前には進まない。それをとても感じられた一冊である。


    • ポプラ並木さん
      湖永さん
      親からの虐待とそれによる不条理。薬丸さんならではの内容でした。
      超えてはならない一線が見えました。
      しかし、ラストの下りで一...
      湖永さん
      親からの虐待とそれによる不条理。薬丸さんならではの内容でした。
      超えてはならない一線が見えました。
      しかし、ラストの下りで一気にテンションが下がってしまいました。
      それがなければ⑤だったのに。。。
      2023/05/11
  • ラストがすべてを台無しにした!えっ~薬丸さん、そりゃないよ~絶対に付けない。な~~い!ラスト10ページだったので、重たい本を職場まで持っていき、昼食ガッツリ食べ終わって、歯を磨き、さぁ、正座して読んだ10ページが。。。終わった。。。脱力で感想を書けなかった。。。親から虐待を受けた犯人、恋人のドタキャンでたまたま刺された被害者⓵、被害者⓵を助けたが力尽きた被害者②。犯人と同じ境遇で親から虐待を受けて親を殺したライター。この人物達から垣間見える「罪の境界」、さらに不条理。ただ、ラストが。。。終わった。。。②

    • 湖永さん
      ポプラ並木さん こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      ラストで裏切られた感じですかねぇ。
      けっこう重い内容であったので、それにどう対...
      ポプラ並木さん こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      ラストで裏切られた感じですかねぇ。
      けっこう重い内容であったので、それにどう対処してレビューを書くのか悩ましいところではありました。
      ★5の場合は、感情を文字で表すのが難しいんですよね。(私だけかもしれませんが…)
      2023/05/11
    • ポプラ並木さん
      bmakiさん、
      おはよう!
      最後の最後で余計?な下りが。。。
      これには評価が和返れていると思います。
      でもそれ以外はとても素晴らし...
      bmakiさん、
      おはよう!
      最後の最後で余計?な下りが。。。
      これには評価が和返れていると思います。
      でもそれ以外はとても素晴らしい内容でした。
      是非読んでみてほしいです!
      2023/05/12
    • ポプラ並木さん
      湖永さん
      おはよう!
      コメントありがとうございます。

      そうそう、ラストの下りが、、、いらないでしょ!と思ってしまいました。

      ...
      湖永さん
      おはよう!
      コメントありがとうございます。

      そうそう、ラストの下りが、、、いらないでしょ!と思ってしまいました。

      湖永さんの感想、素晴らしかったですよ。
      共感しました。
      一線を超えてはいけない境界が見えました!!
      2023/05/12
  • 恋人にデートをドタキャンされた明香里は渋谷のスクランブル交差点で斧を凶器にした通り魔殺人の被害者となる。
    十数箇所切付けられたものの飯山晃弘(48歳)に救われて一命を取りとめますが、助けた飯山は死んでしまい身体の傷は癒えていくが心の傷は深く生活は荒れ家族にも心を閉ざすようになっていく。

    死の間際に飯山が明香里に残した「約束は守った…伝えてほしい…」という言葉を届ける為に明香里が飯山の過去を調べていく、明香里のストーリーと
    殺人犯・小野寺の過去をライターが調べていくストーリーで進んでいきます。

    虐待、ネグレクト、毒親、居所不明児童…
    とにかく重い話です…さすが薬丸岳…
    過去を調べるという話ってなんでこんなに引き込まれてしまうのか?
    暗いけど、重いけど、読むのが止まらない。




    でも読んでる間ずーっと引っかかることが…
    なんで明香里は飯山晃弘を飯山じゃなく晃弘と呼ぶ?48歳に名前呼びって薬丸さんおかしくない?
    嫌な予感しかしないんですけど⁇

    評価分かれるかもしれないけど…
    わたしだけかもしれないけど…
    ラスト4ページいる⁇
    それはダメでしょ⁇
    ☆減っちゃうでしょ。゚(゚´Д`゚)゚。






    • 1Q84O1さん
      ☆減っちゃうほどの衝撃!?
      いらなかったラスト4ページ気になる〜
      ☆減っちゃうほどの衝撃!?
      いらなかったラスト4ページ気になる〜
      2023/06/21
    • みんみんさん
      わたしがひねてるかな。゚(゚´Д`゚)゚。
      わたしがひねてるかな。゚(゚´Д`゚)゚。
      2023/06/22
    • おびのりさん
      そのうち読もうと思ってたけど、後に回す。
      そのうち読もうと思ってたけど、後に回す。
      2023/06/22
  •  「むしゃくしゃしていた。幸せそうなやつならだれでもよかった。」
     渋谷スクランブル交差点で起きた無差別通り魔事件。男性一人が殺され二人の女性が重傷を負う。犯人の小野寺圭一は無期懲役を望んでおり、ずっと「こちら側」にいたいと言う。
     罪を犯すものとそうではないものとの「罪の境界」はどこにあるのか。

     小野寺は、貧困の中で虐待を受けて育ち、学校に通わせてもらうこともできず、存在が人に知られないようにされていた。ライターの溝口は、自分と同じような境遇の小野寺に興味を持ち、本にまとめようと接触していく。
    裁判での自分の姿を見せることで母親に「復讐」したいという小野寺が、求めていたのは愛情だった。自分を探して会いに来てくれなかったから、自分はこんなふうになってしまった。後悔してほしかった。自分の辛さをわかってほしかった。

    「悲しませたくない」人の存在。「愛情をもって接してくれる」人の存在が、あちら側にいくのを踏みとどまらせる。被害者飯山の「約束」にもつながる。

    簡単に「愛情をもって接する」といっても、もちろんそう簡単なことではない。それぞれの生活、感情がある。被害者である明香里の家族も、覚悟をもって支えようとするが、うまくはいかない。愛情をもって接しても、それが明香里をイライラさせる。家を出たものの裁判の傍聴席にきてくれた姿にはジーンとした。人と人との関わりの中で、みんな生きているんだなとあたり前のことだけれど、しみじみ感じさせられた。

  •  薬丸岳の作品を読むと、いつもナイフを突き付けられているような感覚に陥る。私の心の奥底を鋭いナイフで深く抉ってくるようだ。

     通り魔による殺傷事件などをニュースで見ると、なんでそんなことをするんだと、頭にくるし、悲しくもなる。でも、それだけで感情は素通りしていってしまう。少し経つとそんな事件もあったっけと。

     でも、実際にその事件には加害者もいれば被害者もいる。また、それぞれの家族も。この物語は、傍観者であった私にそんな当たり前のことを突き付けてくる。

     浜村明香里は、彼氏とのデートに向かうが、彼氏にどうしても外せない仕事の用ができてすっぽかされてしまう。待ち合わせ場所を出た明香里は、突然、見ず知らずの男に斧で切り付けられてしまう。そこに助けに入った男性が殺される直前、『約束は守った・・・伝えてほしい・・・』との言葉を明香里に訴えてきた。

     物語は明香里目線と彼氏の航平目線、ライターの省吾目線から成る。次々と明らかになってくる虐待には目を覆いたくなるが、それでも母親はいつでも子どものことが大切なんだなと心が救われる。
     また、『伝えてほしい』の言葉を受け、殺された飯山晃弘の知り合いを探す明香里。犯人の小野寺圭一に興味を持ち、ノンフィクションを書こうとするライターの省吾から、犯人と被害者の生い立ちや人物像を形作ることで物語に深みをもたせている。

     自分が明香里ならどういう行動を取れただろうか。圭一なら、やはり自暴自棄になっていただろうか。航平なら明香里にずっと寄り添ってあげることができただろうか。

     答えはわからないが、納得できる生き方をしなきゃと思わされた。

  • 久しぶりに読むのを止める辛い物語でした。
    通り魔事件の加害者と被害者、ライターのお話。明香里が家出しウィークリーマンション借りて、201号室の子供が万引きしたところで嫌になってしまいました。虐待、貧困、不登校、毒親、生い立ちが悲惨過ぎる。無理、、、とりあえず一旦やめた!

  •  面白かったと言う満足感とともに、ちゃんとしてるな、ちゃんと書いてるなぁと、自分でもよくわからない感慨にひたりました。

     話の筋としては、子供の頃虐待を受けた人が母親になり、また子に虐待し、その連鎖を続けるうちに、人を殺したり犯罪に手を染めてしまうというものです。散々書かれてきた内容です。そして、その結末は、そう選択肢がないため、結局同じになりがちです。

     そのような中で、どうしてこの本に感慨を受けたのか。被害者と加害者、その両方の人と似通った境遇で育った人たちをそれぞれの登場人物の側に配置して、両者の生きてきた過程、感じてきたこと、あきらめ、願い、親に対しての思いなどを、丁寧にすくい取り、書き表しているからだと思いました。筋と結末がある程度決まっている中で、その過程がどう書かれているかにより、物語の深さが、読書への問題提起や、共感反感などの心の振れ幅が、左右されます。この本は、色々な立場の人の思いが自分のことのように感じられ、その振れ幅が大きかったです。

     やっぱり薬丸岳さん、好きだなぁと思いました。

  • 後半になるにつれて読むペースがあがりました
    どんどん引き込まれていきました

    分厚いと思いましたが、心理描写や背景が丁寧に書かれていると思いますが、これは
    好みだと思いました

    罪の境界ってそういう意味だったのかと
    思い読んでよかったと思いました

  • 26歳の誕生日。恋人からディナーの約束をドタキャンされた明香里は渋谷のスクランブル交差点にいた。信号が青になり、大勢の人が行き交う中 一人の男と目が合った。男が手にしていたものは斧だった。
    17ヶ所も刺され重傷を負った明香里だが、一人の男性のおかげで一命を取り留めた。明香里を救うため 命を落とした男性 飯山晃弘。彼が最後に残し言葉「約束は守った…伝えて欲しい…」。約束とは何か。誰に伝えたかった言葉なのか。 自分を救うために命を落とした飯山の最後の言葉を伝えるため、明香里は飯山の過去を調べ始める。

    週刊誌の風俗ライター 溝口省吾は、ニュースで見た渋谷スクランブル交差点通り魔事件の犯人小野寺圭一の犯行動機に違和感を感じた。「むしゃくしゃしてた。幸せそうなやつなら誰でもよかった」─本当にそうなのだろうか?16歳まで施設で育ったという圭一の生い立ちを調べる省吾。省吾もまた母親から虐待をうけ、ある理由から施設に預けられていた。そして省吾はある答えに辿り着く。圭一と省吾の果たしたい目的は同じなのではないか。「母親への復讐」─。

    貧困問題。ネグレクト。所在不明児。
    親からの愛情を受けられず 捨てられた子供。

    罪の境界
    超える者と超えない者
    その違いはどこにあるのか。

    加害者の闇
    被害者の傷
    ともに再生されることはあるのか。

    ✍︎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    虐待を受けた過去はどんなに辛いことかと思う。
    わたしがそれを100%わかってあげることも無理だと知っている。けれどそれでも 圭一の犯した罪は絶対に許したくないし 同情もしたくない。

    明香里が、飯山が残した言葉を伝えたかった相手を探しに行くシーン。今まで通りに生きてはいけないと悲観し自暴自棄になった明香里が立ち直るキッカケにはなったのかも…だけど よくわからんかった。

    ただ、吐夢の未来には幸あれ!と思う。







    • ゆーき本さん
      え!?おかあさんといっしょに??
      なんで??爆笑ꉂ(ˊᗜˋ*)
      あぁ、もう番組おわってた!
      機会があったら観てみよー(*'ヮ'*)
      え!?おかあさんといっしょに??
      なんで??爆笑ꉂ(ˊᗜˋ*)
      あぁ、もう番組おわってた!
      機会があったら観てみよー(*'ヮ'*)
      2023/04/12
    • みんみんさん
      「みぃつけた」って知ってる?
      スイちゃんって人気子役の番組に出演したけど
      特別出演かなぁ?ラクダの着ぐるみです\(//∇//)
      「みぃつけた」って知ってる?
      スイちゃんって人気子役の番組に出演したけど
      特別出演かなぁ?ラクダの着ぐるみです\(//∇//)
      2023/04/12
    • ゆーき本さん
      みいつけた!はコッシーのやつね!
      ラクダって!ラクダって!!ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ◍)笑
      みいつけた!はコッシーのやつね!
      ラクダって!ラクダって!!ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ◍)笑
      2023/04/12
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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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