- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344415164
感想・レビュー・書評
-
対談ではなく対話、というタイトルで、9本(11人)の対談が収められています。中でも翻訳家の岸本佐知子さんとの回がとても気に入りました。
岸本-海外に住んだこともないし、陸サーファーみたいなもんですね。
小川-アッハッハ、オカ翻訳者なんですね。
という会話があって、何だかとても勇気をもらった感じになりました。お二人とも、「一日一イベントしか駄目」なタイプで、その一イベントが郵便局に行く、とかだったりするとか。私も複数の仕事を同時にこなすと必ず何かミスをしてしまうので、ばりばりと仕事をしている同僚に引け目を感じたりしていたのですが、レベルは違えどここに仲間が!すごくうれしいです!
この本によると、小川洋子さんは一日に五枚くらい書かれるようですね。この直前に読んだ『ジェネラル・ルージュの伝説』には、海堂尊さんが百枚という数字を挙げていました。京極夏彦さんは60枚くらいの短編なら一日で書く、とラジオで仰ってましたし、個人差って大きいんですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出版されたことも知らなかったのですが、本屋さんのレジへ向かう途中で目にとまったので。ぱらぱらっとめくって、ラインナップで「むむっ!」とお買い上げ。言葉・音楽・野球と、小川さんのお好きで、大切にされているものの「達人」たちとの対談集。最初の対談相手がびっくりしました。このかたなんだ、と思って。「甘美な一瞬のために」周到な準備がされる、小説家のもくろみがあけっぴろげに話されていて、楽しいです。新しいビジネスモデルを礼讃・批判するような、新書系の対談でもなく(笑)、かつての『PLAYBOY』誌のインタビューのように、あえてキツい質問をぶつけて文学の本質に迫るような攻撃的なものでもなく、ただただ、自分の「好き」をお相手とシェアして盛り上がるさまは、小川さんのコアな面がむき出しで、タイトルどおり「対話」という響きが似つかわしい面白さ。『VISITORS』は、私も名盤だと思います(笑)。海外作家との対談は、コーディネイター的な第3者が入るから、やっぱり理性的に話が進むなぁ、と思ったり。でも、対談のなかでも、やっぱり数学系は苦手かな(苦笑)。自分にみえないものを読みとれる感性や、理論を組み立てる力は、数学という分野にかかわらず、全方位でリスペクトしてるつもりなんだけど…その世界にだけ「完全なる真理」があるとは思わないんですよね…って、ここはただのやっかみかも。偏屈なニンゲンだからかしら(笑)。小川作品のファンなら、小川作品のパーツを1つ1つばらして楽しめるように思う1冊。小川さんを軸に据えなくても、対談相手の感性が「へぇー、そういうもんなんだ」と、あざとくなく楽しめると思った本でした。