天帝のはしたなき果実 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (765ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344417533

感想・レビュー・書評

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  • 古野まほろ『天帝のはしたなき果実』読了。
    第五の奇書を求めて。奇書を追っていくと、どうしても行き当たる本作。端々に見られる『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』『匣の中の失楽』へのリスペクトからも、その流れを踏襲していることがわかる。何より、「天帝の」というタイトルそのものが、冒頭の奈々村久生の引用文が、この作品の『虚無への供物』からの影響を物語る。
    序盤は世界観が嫌でも解る吹奏楽部の青春劇。「帝国」と名のつく日本。この世界は現実の日本とはパラレルな関係にある。それは多くの謎の真相に接続する世界の親和性を高めている。というのはまず措くとして、それよりも先んじて強烈な「まほろ語」の連発、外国語ルビの多用という読み難さから始まる本書は黒死館の疲労感を思わせ、奇書好きとしては俄然スイッチが入った。
    内容としても、『黒死館殺人事件』や『虚無への供物』を踏襲した衒学的な会話や推理合戦は圧巻だ。しかし、奇書だからといって本格ミステリの純度が低いかというと全くそうではない。推理パートの論理は作者が師と仰ぐ有栖川流で、精緻そのもの。推理合戦の形式から導かれる公理、演繹推理の果ての真相。論理の純度が恐ろしく高いことは証言しておきたい。
    但しそれだけで終わらないのが「奇書」たる所以。終盤の展開は「唖然」の一言。だが個人的には終盤の展開そのものよりも主人公「古野まほろ」の行為の方が衝撃的だった。正直なところ「こいつ」は好きになれない(笑) なんだこいつ、嫌いだ、地獄に落ちろ(笑)
    しかし、それでもやはりどうしようもなく楽しかった。読みにくい、わかりにくい、荒唐無稽、主人公嫌い、それでも楽しい。純粋に面白かった。その論理と、唯一無二の奇特さと、先達への想いに脱帽する。

  • 面白かったです。
    学生の部活動の音楽の情熱と、芸術語学軍国主義…情報量が多くてお腹いっぱい。
    濃い登場人物、文学や歌劇(たぶん創作だろう歌詞が凄かったり)、美術、日本語に仏語独語露語伊語のルビがカタカナでふってあったり、見え隠れする軍国主義、どぎつく際どい性的発言…と世界観に翻弄されて、ミステリ部分はははぁと読むだけになってしまいましたがそれでも犯人にはびっくり。由香里ちゃんが実際に手を下したのは全員でないけど。
    表の修野家と裏の上巣家のあれこれはよく分からなかった…オカルトで。
    でもまほろくんが結果的に切間を死なせちゃってるのつらい…元々、精神的に不安定っぽいのに。二条さんのところ行くのかな?
    大会の演奏の描写は短いながらも胸に来るものがありました。彼らが今後も穏やかに過ごせるといいです。
    登場人物は例のごとく、一馬が1番好きです。

  • 初読:2012年4月12日(ノベルス)
    再読:2017年12月28日(文庫)

    新刊が出たので、そのために久しぶりの再読。
    はふう。疲れた。
    もういわゆる「旧訳」を読んだのが5年も前だから記憶がおぼろげだけれど、文庫版、「新訳」はかなり改稿を加えられている。
    一番気になったのはパロディネタ、メタネタの多さ。「探偵小説」シリーズなんかもそんな感じだったけど、個人的にこれはあんまり受け付けない…。
    ただ文章自体はだいぶ読みやすくなって、なおかつこの人の個性を残しつつ、というラインを維持してるのではないかなと。
    とりあえず新作を読みまーす。

  • 全然、万人向けじゃない(笑)
    かなりのオタクでないとついて行けないかもしれないです。
    癖の強い食べ物と同じ。
    食べられない人は食べられない、好きな人にはこたえられない。
    そんな感じ。
    とりあえず、Zガンダム、源氏物語、昭和史、九尾の狐…その辺の知識があると楽しめるかも。

  • とても受けとめ切れない。
    またいつか再読しよう。

  • 日本語英語フランス語…言葉の大洪水!!
    ものすごい分厚さだけど、テンポよく進むからさくさく読めた。今の会話どういうこと?って言う部分もあったけど楽しめた。続きも読まなきゃ。

  • ・・・なんじゃこの話わ~!!というのが読み終わった直後の感想でした。
    ジャンルは・・・メフィスト受賞したらしいのでミステリー?・・・イヤ!ミステリ要素も無理くり入ってるけどなんか違う!!

    とにかく言葉遊び&多数の言語が飛び交っている本文中であります。雑学的な文から、古語、アニメネタの文から、ただ単にゴロがいいというだけの深い意味はない文(たぶん。自分の無知のせいも多分に入ってると思うけど)の嵐です。
    ルビの嵐はSFにありがちな感じなんで別にいいんだけど、英語、独語、仏語が入り混じっているのがツライ。
    個人的に言葉遊びが過ぎる本は好きなんですが、こいつは強敵でした。
    もちょっと時間があるときにゆっくり読めばよかったなと思いました。

  • 青春と音楽、吹奏楽と殺人事件。そして幻想、謎、人外。
    吹奏楽部、探偵部。キャラが濃い。
    ルビの洪水に見舞われた。怒涛の衒学趣味にも。
    引用だらけ外国語だらけ。
    慣れないうちは非常に鬱陶しいが慣れると逆にこれがいい。
    長さも長いがこの長さは必要。長すぎる序章も。

    そんなに違うのならばノベルスから読めばよかった。

  • 天帝シリーズ1作目。
    名門・勁草館高校吹奏楽部が連続殺人事件に巻き込まれる。

    講談社ノベルスで読了済。
    文庫版は全面改稿されており、ノベルスとは重要な設定部分まで大分違っています。
    分かりやすさなどは二の次で情熱のままに綴られたようなノベルスの勢いも好きですし、より詳しく分かりやすく手直しされた文庫も好きです。

    わたしはノベルス→文庫の順番だったので、文庫の方はどうしてもノベルスとの違いを意識しながら読みました。ですので、最初に読んだ時のこの物語の衝撃が文庫だとどのように思うのか分からないのがちょっと悔しいです。
    どっちが良いかと聞かれれば文庫の方を薦めますが、両方読むならノベルスからの方が良いと思います。

    ネタバレ(主にノベルスとの違いについて)・・・・・・・・・・・・・・・・・・











    まず文庫には登場人物一覧表があるのが嬉しい。
    しかし主要人物の名前が変わってるし、新たな主要人物も登場したりといきなり大胆な変更がなされています。
    人間関係も変わっていますが、これはよりすっきりしました。
    ノベルスでは誰がどの楽器担当か分かりにくかったのですが、メンバーの説明がきちんとなされていたのも良かった。
    しかし登場人物表のみづきの欄に「?」とあるのはどういうことなんだろう?「古野まほろの妹」ではないのか?今後なにかあるのだろうか。

    その他にも改稿後の変更箇所は挙げればキリがないですが、大筋ではノベルスの通りです。
    個人的には改稿後の以下の点が好きでした。

    周囲がまほろと瀬尾が似ていると言及しているところが増え、まほろと瀬尾の繋がりが強くなっていること。特にまほろと瀬尾と栄子さんと由香里ちゃんの会話が良い。

    切間とは、仲が悪いわけではないが微妙に反りが合わないというのが強調されていたように思います。そのせいかどうか瀬尾事件の最後の展開もあまり違和感はなかったです。

    由香里ちゃんの登場場面が増えており、可愛らしさだけでなく妖しさも見えています。いつの間にそんなことに?という終盤の置いてけぼり感は軽減されました。

    まほろの心の病気が早い段階で明示されているのも物語の展開上とても分かりやすかった。

    全体的に無駄な設定や情報が省かれており、重要な伏線や手がかりはきちんと強調されていると思います。

    終盤の組織についてなど、由香里ちゃんのお話は格段に!分かりやすくなっていました。このシリーズを通してのテーマも見えた気が。

    最初の方にあった栄子さんのドラえもんのネタの真意は文庫で触れられて気付きました。その他にも、思った以上に多くの意味を含んだ表現があったのだと気づかされます。小ネタが多く全部は分かりませんが。

    まほろの親しい人の心の声が聞こえるという設定は文庫ではなくなっていました。実際必要のない事だったのかもしれませんが、あれは奥平と柏木との絆の強さを示していたように思うのでそれは少し寂しかったです。

  • 古野まほろデビュー作。長かった〜。本格ミステリと思って読んでたらどんどん色んなジャンルが入り交じって来ちゃった。ジャンルつけるなら「古野まほろ」になるんだろうな。エブァネタはなんとなく分かるけどガンダムネタがさっぱり分からんかった(笑)

著者プロフィール

東京大学卒。リヨン第三大学法学部第三段階専攻修士課程修了。元警察官僚。2007年『天帝のはしたなき果実』でデビュー。以後続く「天帝シリーズ」は、高校生、大学生を中心に熱狂的なファンを獲得。他著作に『絶海ジェイル』『背徳のぐるりよざ』『その孤島の名は、虚』など。

「2022年 『老警』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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