君が降る日 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.71
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本棚登録 : 2272
感想 : 166
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344418431

作品紹介・あらすじ

恋人の降一を事故で亡くした志保。その車を運転していた降一の親友・五十嵐。
彼に冷たく接する志保だったが、同じ哀しみを抱える者同士、惹かれ合っていく(「君が降る日」)。

恋人よりも友達になることの難しさと切なさを綴った「野ばら」など、
恋の始まりと別れの予感を描いた3編を収録した珠玉の恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 島本さん2冊目です。
    何で今まで一冊も読んでなかったのだろう…
    読みやすくて、人の気持ちを表現する例えが、とても綺麗で上手な印象。女性作家さんの中で好みのランクイン!

    本編は、3つのお話
    1、君が降る日
    恋人を事故で亡くして、その車を運転していた恋人の親友との繋がりの話。
    予想と違う結末で、生きてく強さと勇気を感じた。


    2、冬の動物園
    結婚間近と思っていた彼に振られて、英会話スクールで知り合った年下の高校生。この子がまた良い役というか、若いからこその奔放さもあるけれど、失恋直後だと、この行動は全てかっこよくみえるだろうなー。

    3、野ばら
    これまたせつないー
    同級生とその兄、自分と妹。
    どうなるんだ?の最後の展開。。


    『でも無理なのだ、降ちゃんがいなくなった今も、毎日、呼吸をし、死んだもの食べて、疲れれば眠りに就く。生きるということはきっと特別なことではなく、次に必要なものに手を伸ばし続けるということ。』これは君が降る日の引用。志保ちゃん頑張れ!応援してます!という気持ちに。

    どれも感情揺さぶれ、一気読みでした。
    今を少しでも大切に生きよう。
    細かなごちゃごちゃした気持ちとか吹っ飛んでしまい、島本さん2冊連続して読んで良かった!
    3冊目なににしようかなー、、、。

  • 相手を大切に思いながら、不器用で距離を縮められない人たちを描いた3編の短編集。

    どの話も切ないが、個人的には、恋人の降一を交通事故で亡くした志保が、事故時にその車を運転していた五十嵐と次第に惹かれあっていく話を描いた"君が降る日"が一番好き。
    人がその生い立ちによって見にまとってしまうものとか、運命とか、なぜ人は純粋に自分の気持ちだけで相手を想ってはいけないんだろうとか、いろんなことを考えさせられた。

  • すごく私好みの本だった。
    寂しさを抱える男性の描写がとても上手い。
    寂しいという感情は時に周りを飲み込もうとするけれど、自分の寂しさが埋まらない限り、人の寂しさを埋めることはできないのだろうなと思った。

    島本理生さんお気に入りの作家さんになりつつある。
    もっと探索してみよう。

    ✏弱いから、安定してるように見せてるんです。

    ✏彼はもっとずっと切迫していて、一気に吹き出した孤独が、私は本気で怖かった。

    ✏この人の内側は、こんなにも孤独で、寂しくて、前後も分からない鍾乳洞みたいだ。

    ✏そして私は、真の軽薄というのは、責任を負いきれないものに対する安易な情なのだと気づいた。

    ✏苦しそうに言葉を続ける彼は、いつも大人びて優しい五十嵐さんではなかった。
    もっと愛してほしい、大切にされたいと切望する小さな少年だった。

    ✏その真っ暗な目を見て、突然、全てに対する後悔が心臓の薄い膜を破って洪水のように溢れ出した。

    ✏広い世界がどうのって言い出す男って、たいてい新しいもの好きで飽きっぽいだけだよ。自分さえ満足していれば、誰に狭いって言われても気にすることないよ。

  • 囚われるなぁ。どうしようものにどうにかしたくてあがく状況に。
    学生時代だったら恋人を亡くした主人公にずっと気持ちを寄せていただろうけれど、今は息子を亡くしたお母さんの存在が気になって仕方ない。

  • 3つの話はどれも苦しくて、切なくて。

    共通の哀しみがあるもの同士はわかり合ってるようで、でもお互いにその傷をえぐっているような。
    好きとか嫌いとか一言では表せない複雑な感情が、人と関わる中で生まれるのだと改めて実感しました。


    個人的には「野ばら」が好きでした。

    恋愛感情抜きでずっと側にいられる男女の友情を築くのってやっぱり難しいんですね。
    恋人になる方が案外簡単で単純だったりするのかな。
    野ばらの最後の言葉が心に刺さります。

    引用されている、谷川俊太郎さんの「あなたはそこに」という詩を読んでみたいと思いました。



    「私はこの人が、痛々しい。怖い。愛しい。自分には重すぎる。ぜんぶ本心だった。一つだけなんて選べなかった。」


    「好きなものは、たいてい、好きな相手と共有する。だから相手がいなくなっても思い出が残る。」


    「私は、祐に恋をしなかった。それでも大切に思ってさえいれば、ずっと一緒にいられるものだと思ってた。私たちは、あの雪の日から、別れると言えない関係を紡いでいたのだと、初めて気付いた。ただ一つの、好き、だけが欲しい思春期にとって、それがどんなに棘だらけの野ばらだったか、私は知らなかった。きっと祐だけが知っていた。」

  • 短編集。

    君が降る日
    恋人が亡くなっても死んだりできず、「鈍く、頑丈」という表現が印象的だった。
    割と淡々とした文章なのに、心に入り込んでくる。

    冬の動物園
    タクシーで送るのを遠慮する美穂に、森谷君が返したセリフがいい。
    あんな風に相手の負担にならないように気遣う言い方、私が高校生の時にはできなかったと思う。

    野ばら
    友情と恋のギリギリな感じ。
    切なさと残酷さがラストですごく胸に迫ってきて、余韻に浸って、また読み返したくなる。

  • この先ずっと一緒にいたいと思える彼に、誕生日は指輪が欲しいと伝えた。しかし、彼が用意していたものはピアスだったとわかる場面は辛かった。
    彼は、将来自分と一緒にいると確約しきれなくて、でも、それでも自分のことを大切に思ってくれていたから、だからこそのピアスだったんだろうな。
    少しの偶然が沢山重なって今がある。

  • ひさびさの島本理生作品。

    やはり、登場する主人公の女の子たちは皆しっかりしているというか、
    自分をしっかり持っているわりと自立した女の子。
    対して、男の子は、暴力的だったり(この作品の中ではいなかったですが)深い傷を負っていたり、何かしら影がある。

    そのへんは、どの作品読んでも変わらなくて、しっくりきて嫌いじゃない。

    表題作『雪の降る日』はなんだか悲しくなる。
    恋人が死んで・・・っていうストーリーはありふれたものだが、五十嵐さんとの関係がとっても悲しい。お互いに孤独すぎて。

    『野ばら』が、なんか難しかった!
    やばい、恋から遠ざかりすぎ?と思った(笑)
    谷川俊太郎の詩を探してみよう。

    • daidai634さん
      俺は『野ばら』が一番好きでした。
      俺は『野ばら』が一番好きでした。
      2012/05/05
    • mariさん
      daidai634さん
      コメントありがとうございます。興味グラフから本棚拝見したところ、好きな作品がかぶっていそうでしたのでフォローさせてい...
      daidai634さん
      コメントありがとうございます。興味グラフから本棚拝見したところ、好きな作品がかぶっていそうでしたのでフォローさせていただきました☆
      『野ばら』良い作品でしたね。ストンと腑に落ちるまで読もうと思っていますが(・・;)
      2012/05/05
  • 4.5寄りの星4です。島本理生さんの作品を始めて読みました。恋人を亡くした主人公のお話はとても切なくて、でもあたたかくて丁寧に人間関係を描いていて優しい気持ちになれました。その他に収録されていた2つのお話もとても素敵なお話でした。恋愛ものは島本理生さんの本を読んでいこう。

  • とてもリアルな恋愛小説。
    思うようにならなくて、悲しくて切なくて胸が苦しい。でもこれが現実。

  • 恋愛がテーマの短編が3つ。
    いずれも女性が主人公。
    1つ目は事故で恋人を失った女子と事故時に一緒だった彼の友達の交流を通して、恋人を失ったことを受け入れる話。
    2つ目は、結婚するものと思っていた恋人に振られうじうじしている女子と英会話学校のクラスメイトの男子高校生の話。彼に振り回されるが、自分の視野の狭さに気付かされる。
    最後は普通の女子高校生とクラスメイトの男子、そしてその兄、最終的には主人公の妹まで出てきて、言葉にしない想いがその中で渦巻く話。

    3つともある人に出会う前と後の変化を描いている。現実の世界ではそう都合よく異性のキーパーソンが現れることはないので、こういうお話として読む感じ。だが、ところどころ身に覚えがあるというか理解できるような描写があって、こういったシチュエーションが自分の身にも起きればいいなとか思ってしまう。

  • ゆっくりと静かに紡がれる、世界で誰かが抱いているのかもしれない感情。

    「君が降る日」
    恋人の死を介して繋がった話。死がなかったら、繋がらなかった。良くも悪くも、そういう繋がりの。

    「冬の動物園」
    失恋の淋しさとも悲しさとも言えない感情が、突飛な存在に緩く溶かされていく。

    「野ばら」
    友達になるって友達でいるって、どうして難しいんだろう。求めあったり好きあったり、おおよその縛りが発生する恋人の方が、容易いのだ。

  • ナラタージュを読んだ時みたいな暗いけどなぜかみずみずしい感じや、語り手が見ている風景がスッと入ってくる感じがとても良かった。
    どの話も良かったけれど、やっぱり表題作が一番心に残った。最初から良い意味で残酷なのにラストの全然違った方向の残酷さに驚いた。いや、ラストでそんな事ある?って感じだったけれどなんともリアルだった。
    解説にもあったけどストーリーというか設定が残酷なのに読みやすいのがすごい。お気に入りの作者になりそう。

  • 普段あまり読まない恋愛小説
    読み終わったあとなぜだかしんみり、切ない気持ちになった。
    作者の文が素敵だった。
    特に感情表現の文は恋の切なさが詰まっていた。

  • 君が降る日・冬の動物園・野ばらを収録

    どれも自分の青春時代の体験とはあまり似ていないながら、ちょっと似ているような、なんとも懐かしい感情であり、痛みでもある。
    この中では「野ばら」がいい。

  • 短編集
    ひとつめのはけっこう苦しくなるものであった。

    大人になって恋人を作るよりも友達を作るのが難しいみたいな話はなるほどなあとなったので、今いる人たちは大事にせねばならぬ

  • 直木賞受賞の記念に♪
    なんて軽い気持ちで島本理生作品を手に取りました。

    3部作で構成された恋愛小説ですが、この3つのお話を同じ人が書いたとはとても思えないほど優しく染み込んできたり、あるあるって思わせておきながら深く考えさせられてその先を考えたくなくなるお話だったり…
    とくに、「君が降る日」のお話の中でP144~145にかけての言葉は、生きる意味って…と思ってしまいます。

    でも、たくさん素敵な言葉や表現(私の大好きな月の表情など)を頂けてすばらしい作品でした!

  • 「もし食べ切らなかったら僕が食べるから無理しないで」という男性と、
    「自分で来たいって言って注文したからにはがんばりな」という男性。
    どっちが好き?とみんなに聞きたい。笑
    なぜなら、私は圧倒的に後者の方が愛情を感じるから。
    そして最終的には文句を言いながら平らげてくれるような空気を感じる、という甘えも生じる。
    「君が降る日」は最愛の人を亡くすというとても悲しい話だけど、懸命にもがき前へ進もうとする女性の話でもある。

    ”真の軽薄とは、責任を負いきれないものに対する安易な情なのだと気付いた”

    ”「志保。降一くんと偶然に出会って楽しかったように、彼のいない世界にも別の素晴らしいことや楽しい景色は均等にあるのよ」”

    母親からこんな言葉をかけられたら、それだけで世界はこれからも色彩に満ちていると思ってしまう。


  • 3つの話からそれぞれ異なったことを感じたけど
    どれにも共通してることは胸がぎゅっと痛くなること
    君が降る日からは底抜けに人を愛してみたいと、あそこまでの感情を抱ける人に人生で一度は出会ってみたいと思った 

    冬の動物園からは偶然な出逢いでもひょんなことでも自分の人生にとって大きな分岐点になり得ること、人の感情には変化があるものだということ

    野ばらからは恋の種類について、友情と恋は紙一重なのかもなと思った

    とにかく君が降る日が一番切なくて、やり場のない感情に襲われたりもしたけど自分も同じような感情を抱えた時どうなるんだろうと考えてみたりもした

  • 個人的に最後の野バラがすごく好きだった。

  • 『野ばら』がすきでした。
    「あー、あー、あ。」(p.247)のところが苦しかったです...。

    明確な始まりと終わりがない関係がゆえに、残酷さを増す描写が印象に残りました。永遠に続くのではなく、永遠に始まりもしなければ終わりもしないという状況。双方が真に友情を保てる関係であるとは限らないのが男女というものなんですね〜切ない。

    友だちだと思っていた人を好きになるのは、もう自分の意思で止められることじゃないからこそ、あの結末は悲しいですね...

    現実味を帯びていて素敵な作品でした。

  • 切ない恋愛短編小説。
    どれも共感したし、描かれる感情がリアルで胸がぎゅっとなった。
    野ばらが好きかな。
    谷川俊太郎さんの「あなたはそこに」
    この詩を伝える不器用さが素敵。

  • 私は私でしかないのに、他人を自分の一部に思ってしまうことがある。思えてしまう出会いがあるのはある意味では素敵なことだが、他人を自分の一部だと思うことには、多分に傲慢さを含む。
    結局他人の考えであることなんてわからないし、言葉にされても伝わらなかったり、解釈違いが起こったり、心底わかりあうなんて無理。
    だけど、わかりたい、という気持ちを持つことは決して無駄ではないし、今この瞬間だけは完全にわかりあったとかはあるだろうし、その通じ合った瞬間も、わかりあえなかった瞬間も、大事に育てていければきっと、いい関係がうまれるんじゃないかな。

  • 島本理生って本当に天才なんじゃないかなと思う。それぐらい自分の心にスッと入り込んでくる物を描く。『野バラ』はラストが秀逸。一気に読み始めからそこまでを思い出して祐に感情移入して色んな感情が湧き上がる。3作品それぞれから感じられるものが違くて、色んな気持ちを味わえた

  • 本当に同じ作家さんが書いたのだろうかと思うくらい、物語によって印象が変わる短編集でした。

    「君が降る日」は、触れられたくない所をザラザラしたもので逆撫でされるような、感情をえぐられるような、なんとも言えない重苦しさに囚われ、気持ちがズーンと沈み、次の物語に進めませんでした。

    しかし、「冬の動物園」で心が温まり、「野ばら」で再び考えさせられる…。感情の持って行き方が難しい1冊でした。

  • こんなにも切なさを表現できるのが怖い。私は「野ばら」が好きだったなあ。谷川俊太郎の詩と最後リンクする瞬間とか、「友達」のしんどさとか。表題作はもっと簡単に線ぐらい踏み越えたらいいのにって思ってしまう。私は軽率な人間だからなあ

  • 本音を言うと、島本理生さんの作品はあらすじを見ると登場人物がちょっと複雑なことが多く、手をとるのを躊躇ってしまうことが多い。
    手を取るまでが長くなってしまうことが多い。今回もそうだった。
    でも、手に取り、読み始めると止まらなくなる。早いと1日で読み終えてしまうくらい、世界に引き込まれる。続きが気になって仕方がなくなる。





  • 恋人をなくす、という体験について。

    事故で恋人を亡くした志保。
    その事故の原因となってしまった車を運転していた、恋人の友人。
    恋人の家族たち。
    それぞれが感じている「不在」がどれも噛み合わなくてもどかしい。
    同じ人を亡くしても、その痛みはそれぞれなのだ。

    彼がいなくなっても、私は「死んだものを食べて」毎日を生きていく、というような描写があってドキリとした。


    「野ばら」がよかったな。
    踏み出せない思い。恋愛にならない感情って難しいね。


    島本理生さんは、喪失や不在に伴う切ない痛みを描くのがとても上手だな。
    本当に大切なものを失ったとき、きっと私たちは泣き叫ぶことも喚くこともできず、ただ呆然としてしまうのだろう。

  • 久々の島本理生。読み終わった感想も島本理生だなぁ〜っていうw
    恋人を事故で亡くした女の子が事故を起こした五十嵐さんとの付き合い方、亡くなったひとの思い出に触れたくて福岡にいる五十嵐さんに会いに行くお話。
    こう、島本理生って恋愛の始まりというよりはじまっててほっこりしてるひとのお話が多そうである意味はじまる話だったりするよね

    結婚目前と思ってた彼に振られ、高校生の男の子と新しく出会った女性のお話や(冬の動物園)
    男女の友達とは恋愛なのか?みたいな友情からの失恋や家族やらのうねうねしちゃった関係のお話と(野ばら)
    谷川俊太郎の「あなたはそこに」も読みたくなる

  • 関係性を変えることに理由を求めるのは、居心地の良さが崩れる気がして怖いから

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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