誓約 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426016

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。
    薬丸岳さんの作品は3作目。『友罪』『Aではない君と』は少年犯罪についての話でした。今作は過去に犯した罪についての話でした。
    顔に醜い痣を持って生まれ、家族にも恵まれず、社会を恨み罪を重ねた男。新しい戸籍を手に入れて生まれ変わったように幸せに暮らしていたが、ある日突然過去に犯した罪が自分の幸せを壊し始める。。。
    被害者からすれば、刑期を終えたからといって加害者が今は幸せに暮らしていると知ったら心穏やかではいられないだろう。
    罪を償うということはどういうことなのか。犯した罪は永遠に赦されることはないのか。。贖罪とは、更生とは。色々なことを考えさせられた。
    難しい表現は少なく、ストーリー展開もうまいので読みやすい。

  • 一気読みしてもうた…^^;
    因果応報…
    やっぱ、若気の至りとか言ってワルさしたら、いずれはそうなるわ〜と思ってしまったけど、まだ、そんな事実が…
     何か、みんなが過去を引きずって、みんなが復讐、復讐…って…
    これは、何か起こるわな。
    でも、完全な復讐には至れない。みんな、どこかに善意というか、そんな事したらアカンって思ってる気もする。それがコトを余計複雑に…
    こんな訳ありな人ばっか集まるか?とは思うけど…
    後半に色んな事が、一気に結びつく!
    薬丸さんのは、最後は、ええ感じで、まとめてくれるので好き!

    やっぱり、守れん約束は、しない方が良い!

  • 薬丸作品の中ではちょっと印象の薄い作品かもしれません。
    どんどん読めますし面白いですが、主人公に肩入れできない気持ちになります。
    罪、そして罰、誰にとっても他人事ではない。一度犯してしまった罪が許されることはあるのか?どうやって罪を贖ったらよいのか、では、一体その罪を許すのは誰なのか?
    他人を大切にできない人間は大抵自分自身を大切にしていないものだなと思う。どん底での行動が自分の本心なのか、それとも環境のせいで悪を働くのか…色々考えさせられます。

  • 罪の償いということについての、読み手の思想あるいは立場によって、主人公に対する思いは分かれるだろう。
    罪を犯したが、改悛し、幸せな家庭を築いている者を許せるか。それとも、一度罪を犯した者は一生幸せな家庭を持つなど、もってのほかと考えるか。
    主人公は、過去の約束の履行を迫る謎の人物に蹂躙され、常識外れの要求にもかかわらず、警察にも届けることができない。
    何故なら、顔も整形し、他人の戸籍を取得して、家族にも打ち明けられないおぞましい過去が彼にはあるから。
    電話で、主人公を翻弄するやり方は、『アノニマス・コール』でも使われたっけ。
    電話の相手は誰なのか。そして、主人公の運命は。
    真相と結末を求めて、ひたすら頁をめくり続けてしまうのは、著者の作品を読むいつものパターン。

  • 面白かった!
    薬丸さんのテーマはいつも重い。
    今回は「復讐」をテーマに、「赦し」のことを考えさせられる展開です。

    ストーリとしては、過去、いろいろ過ちを犯しながらも、現在は家庭も仕事も順風満帆な幸せな日々を送っている主人公の向井に1枚の手紙が届きます。
    それは、刑務所から出所してくる男たちを殺害する約束を果たせといった内容。
    過去にその男たちを殺すことを約束したことから、今の生活が成り立っています。
    しかし、いまさら殺すことなど出来るはずもない主人公は、娘の身柄を盾に脅迫されていきます。
    自分の過去を家族には知らせたくない向井。
    家族を守るため、その男たちを殺すのか?
    脅迫者は誰なのか?
    そして、娘を守ることが出来るのか?
    といった展開です。

    読み進めていくと、なんとなくこの人が怪しいというのはわかります(笑)
    そして、最後の最後で、一気に真相が明らかになります。
    しかしながら、ちょっと強引な展開!
    あれよあれよと終結に向かってしまいます(笑)

    とはいうものの、最後のシーンはとてもよかった!
    お勧め!

  • 久々の薬丸岳さん。やっぱり面白くて(面白いってちょっと、語弊があるんだけど)、夢中になって一気読みしてしまいました。
    薬丸岳さんは犯罪を犯した人の心の変化(人間的成長)を描くことが多いように思う。
    この小説では、過去に犯罪を犯して逃げ回り、素性を隠して結婚し子どももいるバーテンダーの主人公が、過去に自分が犯した罪と向き合わなくてはならなくなる、という設定。
    正体不明の何者かから、「あの約束を履行せよ」と迫られ、殺人を犯さなければならなくなる…。
    15年前、新しい戸籍と顔を手に入れるためお金が必要だった。犯罪被害に遭い、犯人を激しく憎む女性から、復讐を果たす約束と引き換えにお金をもらった。その女性は死んだはずなのに、犯人が刑務所から出てきたから約束を果たせと要求されるのだ。いったい誰が、あの約束を知り、そんな要求をしてくるのだろう…?
    読みながら、けっこう身近な人のはずだと考えていたが、一番信頼し、身近にいた共同経営者だった。実は、主人公が過去に悪いことばかりしていたとき、強盗に入った家の女性の恋人だったのだ。彼女はその事件がきっかけで自殺した。自殺したのは主人公が彼女を強姦したせいだと誤解していたのだが、そこには深い事情が隠されていて(実は強姦していたのは実の父親、強盗に入った主人公は、それを目撃していた)、彼女は忌まわしい事実(息子は実の父との間の子ども)を隠すために、強盗が自分を犯したことにしていた。共同経営者はゆえに、彼を憎しみ続け、復讐の機会を15年も待っていたのだ。
    途中まですごく面白かったのだが、この最後のネタバラしが、ページ数が足りなくなって大急ぎで書いたのかな?って感じでした。
    だけど、一緒に店をやってきて、主人公が本当に生まれ変わり、悪人ではなくなったと感じて許そうかと思ったこともあったのに、小さなきっかけで「やっぱり更生なんかしてない、強盗に入った日(つまり彼女が深く傷つきその後自殺するきっかけになった日)を覚えていないじゃないか」と思って許せなくなった、というくだりが、薬丸岳さんらしいしかけだと思った。
    「悪い人間」が「本当に反省」して「善良な人間」になる、というのは、どういうことなのか、はたして他人に(または本人に)判断できるものなのか、心から反省するとは、どういうことなのか、人は生まれ変われるのか、過去に犯した罪は許される可能性があるのか、そういう問いが、これまでの作品にも散りばめられていたので…。

  • 初めて読んだ薬丸岳さんの1冊。
    コイツ怪しい…と思いつつも最後まで全然わからなかった。
    なかなか複雑で結末まで遠回りだけどどうなるのか気になって気になってとても面白かった。
    最後はちょっと泣けた

    違う小説も読んでみたいと思えた作家さん

  • 完全に騙された! チョロいぞ私...。
    電話等で聡を追い込んでいく脅迫者は何者なのか、グイグイ引き込む筆致は流石!
    あぁ、○○の視点で読み返すとまた違う感情が湧いてくる。自分が同じ状況下に置かれたら、ここまで負のエネルギーを保ち続けることができるだろうか...。

  • 家庭も仕事も順風満帆だった主人公向井聡の元に、一通の手紙が届く。向井は過去に犯した罪を回想しながら、送りつけてきた脅迫者に一人立ち向かっていく。
    スリリングな展開に時間を忘れて読み進めてしまいました。罪と償いを描く薬丸岳さんの真骨頂のような小説でした。

  • 薬丸岳『制約』幻冬舎文庫。

    文庫化されたので再読。薬丸岳は、外れの無い数少ない作家の一人だと思う。

    微かな救いはあるものの、この作品もまた人間の罪と罰をテーマにした重苦しい小説だった。いつもの薬丸岳ならば、説得力のある緻密なプロットに手に汗握り、感情移入しながら読むのだが、この作品には少しプロットの粗さを感じた。

    家族にも恵まれ、幸せに暮らすレストランバーの向井聡には、誰にも言えない過去があった…

    向井の驚愕の過去とタイトルの『誓約』の意味が少しずつ明かされると同時に向井は事件の火中に身を投じていく。

    現代版の『カルネアデスの舟板』といったところだろうか。

    向井を追い詰める者の正体は誰なのかという興味と二転三転の展開は相変わらず見事。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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