出張料理みなづき 情熱のポモドーロ (幻冬舎文庫 と 15-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 175
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344432208

作品紹介・あらすじ

会社を辞めた季実は、本郷で下宿を営む祖母の家に転がり込んだ。無気力状態の季実に、「出張料理」の手伝いを頼んできたのは、同居人の桃子さん。鶏肉の旨味を吸い込んだ馬鈴薯のスープ、口の中でほろっと崩れる鮭と大葉のおむすび、甘い空豆のフリット。依頼人達の疲れた心とお腹を満たすうち季実にも変化が訪れて……。人情溢れる料理小説。

感想・レビュー・書評

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  • 心も体も疲れ切った人が、ていねいな料理で元気になる、という設定は珍しくないけれど、この人の描く世界は、とても心地が良い。
    お料理の彩りもクリアで新鮮、人の描き方もとてもやさしい。

    本郷の下宿屋さん、というのがまた良いじゃないですか!
    本郷・・・文豪の匂いがする。
    レトロな洋館風、ステンドグラスのはまった窓。
    昭和だ!

    季実(きみ)は、ブラックな会社に疲れ果て、無職無気力な生活を送り、自己嫌悪に陥っていた。
    見かねた母が、東京のすみれおばあちゃんのところへ行かないか、と勧める。
    そこで、出張料理人をしている、皆月桃子(みなづき ももこ)と出会う。
    おばあちゃんの下宿屋さんの、ただ一人の下宿人である。
    ろくでなし親父、母親蒸発、二十三歳でバツイチになったという彼女だが、清潔でツヤツヤしていて、そんな不幸を感じさせない、小柄なのに不思議な存在感。

    ・如月 始まりのおむすび
    心と体を癒すやさしい味が喉を滑り落ちる
    ・弥生 情熱のポモドーロ
    頑張りすぎて料理を嫌いにならないで
    ・卯月 夢のランチボックス
    自分で作ってみれば、愛情のありかは何処にあるか分かります
    ・皐月 別れの食卓
    傘をありがとう。料理を教えてくれてありがとう。

    季実が主人公なのかと思ったら、意外と桃子?
    ハンサム、からの関西弁の元夫も悪い人ではなさそうで・・・
    さつきさんは切なかったです。
    「さつき」の次は「みなづき」だけど、その次は「ふみづき」じゃなくて「きみ」なのかなあ・・・

  • 社会人となったものの、会社を辞めて静岡の自宅に籠りきりの主人公は24歳の季実。或る日、両親から東京の本郷に独りで下宿屋を営んでいる祖母のもとへ一緒に暮らさないかとの提案を受けて上京します。しかし祖母の家には4歳年上の皆月桃子が同居していました。桃子は出張料理人で、季実は彼女が作る料理が自分の身体にじわじわと伝わるのを感じます。桃子は少しずつ料理の下拵え等をさせながら、季実を出張料理のアシスタントにしていきます。色々な依頼人の自宅等で料理を作っていくのですが、この中で季実が料理を『生きるための前向きな行為だ。気力・体力がないとできない行為でもある』と捉えているのが一判印象に残りました。暫く時間が経ったら読返したい小説でした。

  • Kindleで読んだ。
    会社を辞めた季実は、本郷で下宿を営む祖母の家に転がり込んだ。無気力状態の季実に「出張料理」の手伝いを頼んできたのは、同居人の桃子さん。依頼人達の疲れた心とお腹を満たすうち季実にも変化が訪れて……。

    「ちどり亭にようこそ」も好きだったけど、今作も良かった~。
    ちどり亭の花柚さんと同じように、明るく穏やかだけど自分の芯をしっかり持ってる桃子さん。好きだわー。
    作り置きだったり、ケータリングだったりいろいろな出張料理とお客様の事情。
    とても面白かった!

  • 生きるために食べる

     生きるために食材を料理して食べる

     自分に、誰かに、喜んでもらいたくて料理する

    いつだか、毎日お弁当を作っている私に「自然のものに触れると、張っている気持ちが癒される。毎日食材に触れることは、いいことなんだと思う」と言ってくれた人がいた。なるほど、料理をするのは、別の脳を使っている気がして、ある意味ストレス発散だと思っていた。

     季実はもう辛くて会社を辞めた。辞めて何もしていない自分に罪悪感を持っていた。祖母が持つ寮に呼ばれていくと、料理上手を自負する桃子さんから、あれこれお手伝いを頼まれる。まずはお米を炊くところから。次第に、桃子さんの出張料理について行き、アシスタントを務めるようになる。まるで料理をしてこなかったけど、徐々にこなすようになるにつれ、少しずつ自分を取り戻してくる。

     桃子さんの料理の腕は、ある夜雨宿りをさせてくれたさつきさんが教えてくれた。包丁の使い方、野菜の洗い方、皮の剥き方、味付けの順序を。だれからも奪われることのない、自分を幸せにするための方法を。

     季実の物語であり、桃子さんの物語でもあるそして、さつきさんの物語でもある。料理を通して、連綿と続いていく、自分自信を大切にすること。それは、自分だけでなく、周りも大切にしていることに繋がる。

     作らない時は、作らなくてもいい。作りたい時が来たら、また作ればいい。料理には気負うことなく向き合えばいい。たぶん、それは、自分自身と向き合うことに繋がる。

     ここのところ、料理に気持ちがあまり向いてなくて、自分の中では雑なものを食べているという意識があった。だから料理の物語が読みたくなったんだろう。少しずつ、食べたいものを、美味しく食べるために、料理していこうと思った。

  • 桃子さんの、元義理母さんとの縁、絆が泣けた。

    桃子さんの作る料理がどれも美味しそうで、食欲をそそられました。

  • 「食べる」って大事なんだなぁと改めて実感。
    作ることって生産性があって、ちゃんとしてるっていう実感確かにわくかも。
    話の筋とはずれるけど、この作者さんの料理本出ないかなぁ。この人の描く料理ってどれも丁寧で美味しそうなんだよね。

  • 料理って言うより人情だね

  • 最初の章を読んで、よくあるパターンかなと思ってしまったが、次章から「料理をするという事」がテーマだとわかり楽しく読んだ。また桃子さんの話が読みたい。

  • とにかく料理がおいしそう。ちょっとしたテクニックがさらっと書かれているので参考になる。日々料理を作る大変さや、料理する事によって日々が整えられる様子が良く伝わってきて、なんとなく料理がしたくなってくる。
    疲れて苦しんでいる人にそっと寄り添って、その人のために作ってくれる料理が暖かくて優しい。

  • 何のアドバイスもいらないから聞いてほしい

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著者プロフィール

一九七九年岐阜県生まれ、愛知県在住。第20回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞し、デビュー。著書に、「ちどり亭にようこそ」シリーズ(全4巻)、『かくしごと承ります。~筆耕士・相原文緒と六つの秘密~』など。

「2022年 『出張料理みなづき 情熱のポモドーロ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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