平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344985261

感想・レビュー・書評

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  • なんか年始から読み始めております。
    片山氏は博学ですよね。実に面白い御仁を見つけた感じです
    少しばかり、読書の切れ目で困っていましたが、
    何気なく手にとって読み始めました。

  • 天皇、災害、ナショナリズムから論じた平成史。
    災害があっても立ち直る日本と災害があるから何を考えても無駄という楽観と刹那主義。それでも民に寄り添った今上天皇。人間不要のAI資本主義で国民はもはや恩恵を享受できない。果実の分配ではなく負担と損を誰に押しつけるのか。かけ声と綺麗な言葉でごまかす政治。アジアに残された冷戦構造を利用したナショナリズムとただの復古主義の奇妙な融合。

    トリビア的な知識もあり(「平成」命名者の経緯や日本会議誕生のキーパーソンが音楽家の黛敏郎だったことなど)、読んで楽しめるが、まとまりがない構成で新書の限界だろう。それほど平成史を論じるのは難しく、複雑で、全てを書けば大部となる。
    平らに成らなかった「平成」。込められた理念と言葉は必ず時代や現実に裏切られるという。これを書いているのは2019年3月。新元号発表までひと月。改元まで二ヵ月。
    新たな元号も新たな時代に裏切られるのだろうか。
    さて、平成の次の世はどんな元号と時代になるのだろう。

  • 著者のことは知らないが手にとってみた本。平成を様々な視点から、話し言葉で書かれている。守備範囲が広く、博識なお方だ。たまに皮肉も入り口調がキモくなるのだが、それは片山節、というものだろうか。日本人のニヒリズムは他の本でも言われていることだが、納得させられるというか再認識というか。シンゴジラのパートでは氏の古典芸能への造詣も感じられ、なるほどというところ。
    色々な問題提起が出てくるが、もはやこの国民性にこの流れ、窮地に立つとこまでいかないとどうしようもないよね、という本音なのか感想なのか、そうしたものを感じるような。
    坂口安吾の堕落論に通ずるような。

  • 片山杜秀氏が相変わらずの切れ味を発揮。

    良質で安価な労働力を際限なく求める資本主義と、そこに国民を参加させるための仕掛けとしての民主主義は足並みをそろえてきた。という論。
    グローバリズムと国民国家は対立する、という論調を片山氏は採っていない。

    でも、もうわが国(というか世界どこでも)、国家は成長の実感も福祉も国民に提供できない。ナショナリズムという幻想で国家を維持する運動が強まるのは必然。
    そしてその背景に流れる、絶え間ない天災と虚無感、ネット社会の進行で進む視野の(拡大ではなく)狭窄、AIによる人間労働の代替の予感。
    そんな中、国家が壮大なフィクションに向かう今の流れに強い危機感を抱かれているのが、自らの意思で平成を終わらせた今上天皇。

    後段のAI論など、著者のほかの本とくらべても随分ある意味情緒的というか、むき出しの危機感。
    資本論が読まれなくなって労働者は自分を守るすべを失った、という主張と、民主主義の守り神としての天皇陛下への敬意を矛盾なく両立させる片山氏は、イデオロギーを軽々と乗り越えて、それでも暗い予感に充ちた時代に一筋の光を招き入れているかのようだ。

  • 【幕引きに思う】数多くの災害等に見舞われ、「平らかに成る」という意味とは異なる様相を見せた感のある平成。波乱に満ちたその時代を精神史という形で描き出した作品です。著者は、音楽評論家としても活躍する片山杜秀。

    平成、そしてその後の時代に対してもかなり悲観的な見方になっているのですが、憂世の文章にはなっていない点が見事。明治から昭和にかけての出来事から照り返す形で平成について問い直しをしていますので、広く日本史に興味がある方にもオススメです。

    〜バブルの真っ只中に始まった平成は、巨大な天災と人災に同時に襲われ、その傷が癒えぬどころか、その傷から蝕まれて戦後日本のさまざまな分野の貯金を食いつぶしながら足下を危うくして終わろうとしているのではないでしょうか。〜

    片山氏の作品は基本的に読んでハズレなし☆5つ

  • 平成を日本が後退した暗い時代としてとらえ、今後についても、昭和初期と重ねて悲観的な見方をしている。
    AIが支配する資本主義社会では、人間の役割がなくなるとしているが、供給側の側面のみ強調しすぎていないか。需要側、すなわち、モノやコトの消費は人間しかできない。AIによる生産性向上の分け前を人間に再分配しないと、資本主義社会は成り立たないとも考えられるのでは。

  • 本書は『平成精神史』という題名だが、内容に関しては「思想史的な観方で考えてみる平成」ということになるのだと思った。

    後から振り返って好い時代でも好くない時代でも、とりあえず生きて来た訳だ…過ぎた時代は「こうだったのではないか?」と考える対象になるばかりのことだが、次の時代は未だ何がどうなるか、自身がどうするのか、ハッキリはしていない…本書のような「考える材料」を手に、色々と次の時代に向けて考えてみるべきなのだろう…と思う…

  • 東2法経図・6F開架 B1/11/525/K

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著者プロフィール

1963年生まれ。政治思想史研究者、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(いずれもアルテスパブリッシング、吉田秀和賞およびサントリー学芸賞)、『未完のファシズム』(新潮選書、司馬遼太郎賞)、『鬼子の歌』(講談社)、『尊皇攘夷』(新潮選書)ほかがある。

「2023年 『日本の作曲2010-2019』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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