ギリシャ神話神々と英雄たち (現代教養文庫 1314)

  • 社会思想社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784390113144

作品紹介・あらすじ

古くはホメロスの叙事詩のなかに、そして古来の名画や彫刻など芸術のかたちで、ギリシャ神話の神々や英雄、怪物は息づいており、さらに、哲学や心理学、天文学など科学用語として、あるいは日常語のなかに、いわば現代人の血肉となって脈々と生きつづけている。本書は、この人類の遺産ギリシャ神話を、巧みな語り口で面白く読ませてくれる好著である。

感想・レビュー・書評

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  • エヴスリンは上手に物語る。

  • 同じ著者の「小事典」が見つからないのでこっちを。
    この人の書いてるディオニュソス像が、私のディオニュソス像です。

    つまりバッカスのことなんですが、シレノス老爺とかとイメージが混じって布袋腹の中年親父風だと思ってる方々に、その認識を払拭していただきたい!と言う願いをこめて推薦してみる。

  • ギリシャ神話に美術工芸品の類いの美を期待している私にとって、この本は求めるものではなかったのだが、面白いものを見せてくれた。

    求めるものではなかったというのは、まずこのストーリー性の充実ぶりがもはやギリシャ神話ではなくギリシャ神ドラマの観を呈していたことだ。

    一般に神話とは、因果が破壊されているものである。概ねは神々と呼ばれる意味不明な物体の住む出鱈目な世界と人間と呼ぶに値しない木偶人形のような物体で構成されており、ストーリーとしては幼稚園児が考えた以下の理不尽さで、もはや成り立っていないといっても過言ではない。なぜか。それは耽美が神話の意味となったからであろう。絵で言うならシワや無駄毛や鼻の穴を描かれない裸婦像や少女のイラストといったところだ。

    この作品ではそれがエンターテイメント性を伴ったまともな因果関係を持つストーリーへと変換されている。シワや毛が描かれるように、木偶人形が神に思惑を持ち、もはや美の象徴ではなく単なる絶対者となった神は人に動かされ、リアルとは言わないまでも通常のギリシャ神話にはない流れと躍動感を感じさせる。でありながらも絶対者達が神々しさを失うことのないよう注意が払われており(この技術が作者の才能だろう)、ギリシャ神話の名を冠することに一応問題は見えない。

    表面的に見るならこの話はギリシャオペラのように(はじめから観客全員がストーリーを知っていることが前提となっている)すでにある土台に拠ることによってその意味を無視することが可能となる点を利用するスタイルの作品と捉えることができるかも知れない。

    しかし、私の感覚では作者がこのような意図でこの話を書いたようには思えない。結果としてアリなスタイルで成り立ってはいるが、私には何か作者の、人以上の存在を受け入れず人以上を目指しもしない生き方のようなものが強く感じられ、エンターテイメント性はあれども生理的に受け入れ難いパターンを持った生命体に接触しているような印象を受けた。

    悪い意味ではなく、神の美をもってしても世界が「このようにしか見えない」人間。
    これが新たな驚きであったのだ。

    人に生まれている限り、例え探し求める美が目の前にあったとして認識することはできないのかも知れないし、出会ったところで何になろうと思うこともある。
    人らしく、求めることそのものに意味を見いだすのだとしたら、思いがけない拾い物であったこの本に出会ったことが意味なのだろう。

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