ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151)
- 祥伝社 (2009年3月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396111519
感想・レビュー・書評
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ナチスの政治を見直す良書。
第二次世界大戦終了後の戦勝国による国際秩序では
ナチスの功績はすべて否定されていたが,
一つ一つの政策は現代経済政策の手本にもなる。
あの第二次世界大戦とはいったい何だったのか?
を考え直すことにもつながる本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これは経済「学」の書物ではない。またナチス礼賛の書物でもない。「ナチス時代が気になってしょうがない人」(=マニア)による、「ナチス統治下の社会政策は、とても先進的だったんだぜ」「シャハトの経済政策は神レベルだったんだぜ」「ナチスが誕生するにはそれなりの合理的な事情があったのよ」と、いう「NAVERまとめ」的な書きものである。もちろん、国際比較や統計に基づく評価などは皆無。
「現在の日本も学ぶべき点が多々ある」との主張は、感情的には共感する部分もあるが、個別の政策だけを切り出しての評価はあんまり意味がない。
とにもかくにも、軽さと底の浅さが「NAVERまとめ」的で、しかし、だから、それなりに面白かった。 -
ナチスが為したことについて整理された本。支持されていたのは、それなりの理由があることを思い知る。
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ナチス万歳な本でした。経済本ではなかった。。数値は沢山出て来てよく調べるなぁ、という感じだったのだけど、どうにも恣意的に数字を使ったり比率を使ったりしてるようで、ある意味トンデモ本系統かな、と。
ただ、今時のネトウヨの方々が大日本帝国を礼賛するのと似た雰囲気が漂っていて、異文化を知る、という意外な価値はありました。 -
ヒトラーの経済政策を高く評価している。
ヒトラーを決して肯定することはできないが、個々・トータルの経済政策を評価すること自体は学術的な意味がある。 -
ケインズも絶賛したヒトラーの経済思想
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何かと悪者扱いされてばかりのナチスでありヒットラーだが、実は政治家として国民に約束したことは誠実に実現する努力をしているし、成功もしている。1930年代の経済恐慌からいち早く立ち直って、国民の福祉を向上させたことは、もっと評価されて良いと思う。同じ時代に米国もソ連も英国も大した回復をしていない。戦争によって見せかけの経済復興を作ってみせただけではないのか。
ヒットラーは個人的は尊敬出来ないし、また政治が結果責任を負うべきものである以上は、現代からノスタルジーをもって甘い評価をすることは以ての外である。その一線を越えることなく、現代の政治経済をみると、民主主義国の政治家は必ずしも国民の福祉向上に熱心ではないことが目についてしまうのは残念。
歴史の誤りを繰り返してならぬ!と手足を縛っても国民の為になる政策を待望する。 -
今の日本の経済政策と比べると、ヒトラーの経済政策のほうが国民にとってはるかにいい。今すぐにでも実施してほしい政策がたくさんあった。ヒトラー個人の力量というよりは財政家シャハトの力量によることが多かったとしても、登用したのはヒトラー。
ヒトラーのやったことを全否定するのではなく、見習うべきところは見習うへき。これはヒトラーに限ったことではないかな。
【減税する→国民が潤う→景気が良くなる→税金を払う人が増える→税収が増える】
これってわかりやすい図式だと思うけどな。 -
この本の作者が緒言で強調しているように、私もナチスが行ったユダヤ人虐殺を肯定するつもりはありませんが、ヒトラーは当時のドイツ国民の信任を得て権力を握ったのであると同時に、彼の実施した政策は当時のドイツ国民に支持されていたことは事実として認識しておく必要があると思います。
著者である武田氏は、ヒトラーが行った経済政策にスポットを当ててそれらの数々が解説しています、ヒトラーは汚点があるにせよ大恐慌で崩壊したドイツ経済を立て直した人物として評価される必要があるのではないでしょうか。今までの常識を覆すきっかけとなる本だったと思います。
特に、当時ユダヤ人は西洋諸国から締め出されていてどの国もユダヤ人迫害を非難するのみで、受け入れる国が無かったという事実(p214)には驚きました。
以下は気になったポイントです。
・ケインズはヒトラーの欧州新経済秩序(マルクを欧州共通通貨にする)に対して、「ドイツという言葉をイギリスという言葉に置き換えるならば、優れた内容である」と回答した(p14)
・アウトバーンは1933年に工事が始められ、3年後には1000キロ開通、終戦時には4000キロになっていた、日本の1963年から現在までの6000キロと比較すると凄さがわかる(p33)
・ナチスと日本の公共事業の差は、1)支出の多くが労働者の賃金、2)一定の時期に集中、がある(p42)
・ナチスの雇用政策で興味深いのは、妻や子供のいる中高年の雇用を優先していること(p45)
・少子化対策として、1000マルク(労働者の半年分の賃金)を無利子で貸し付けた、現在価値では200万円程度(p63)
・結婚貸付金は、現金ではなく「需要喚起券」という証券として支払われた、特定の商店での買い物に使える商品券であった(p64)
・ナチスは有給休暇をいち早く取り入れた、その内容は、6ヶ月以上勤務したものに対して、最低6日の連続休暇、休暇中は他の労働禁止等である(p86)
・ポルシェはヒトラーの要請により、フォルクスワーゲン社を設立して大衆車制作を始めた、示された条件は、1)最高時速100キロ、2)100キロをガソリン7リットル以下、3)4-5人乗り、4)空冷式、5)価格は1000マルク(半年分の賃金)、であった(p103)
・大企業に行った配当制限法は、1943年末に導入され、配当は6%しかできず剰余金の残りは特別公債の購入を義務付けであった(p109)
・ベルサイユ条約では、第一次世界大戦の責任はドイツにあり、連合国の受けた損害を補償する義務を負わされた、植民地減少により、人口10%、領土13.5%、農耕地15%、鉄鉱石75%を失った、この賠償金の利子は21世紀になるまで払った(p131)
・ハイパーインフレにおいて大儲けた人として、有力な外貨(ポンド、ドル)を持っていたユダヤ人実業家が多くいた(p140)
・ベルサイユ条約では陸軍10万人と制限されていたので、全員に下士官以上の教育を行った、下士官は一人で10~20人の兵士を統率できるので、すぐに増強可能となった(p145)
・1932年当時のナチス党員は80万人程度、大統領選挙でヒトラーは1350万票を集めた、ヒトラーは党員以外からも支持された(p147)
・ヒトラーが首相になれたのは、共産党の躍進が背景にあった、ナチスと共産党が組めばドイツが共産主義の国になる可能性があった(p151)
・ハイパーインフレ時に登場した「レンテンマルク」は、ドイツの土地を担保にして発行された通貨である、1レンテンマルク=1兆マルク、1ドル=4.2レンテンマルクとされた(p166)
・労働手形は、ドイツの持つ労働力を担保にして発行された国債である(p173)1933年ドイツ帝国銀行は、外国の債権者に対して、利子を半分割り引いた上で、元本50%を現金で残りは特別マルク(ドイツの商品券のようなもの)で払った(p183)
・ユダヤ人は中世から近代にかけて西洋諸国のほとんどの国から締め出されていたが、ドイツはユダヤ人を保護していてユダヤ人にとっては住みやすい国であった(p211)ヒトラーの誤算はユダヤ人を追放しようとしても、受け入れてくれる国がなかった、ユダヤ人迫害政策に非難はしたが受け入れはしなかった(p214)
・ナチスの人工石油(石炭液化法)の製造工場は12箇所あり、1944年には350万トン(天然石油の確保は300万トン)もあった(p223)
・第二次世界大戦のターニングポイントは、アメリカ参戦(真珠湾攻撃による)である、イギリスだけが戦っていた(p243)
・景気を喚起するための財政出動においてもっとも効果があるのは、低所得者層に向けてのもの、これはヒトラーが証明した(p246)