いつか終わる曲 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396342265

感想・レビュー・書評

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  • 15作の名曲からインスパイアされた、青春のほろ苦さを描いた短編集。
    フジファブリック、スピッツ、カーネーション、miwa、aiko、クラムボン…。15のアーティストの名前は皆知っていたものの、今回取り上げられた曲で、知っているものは実は数曲しかなかった。でも、逆にそれでよかったなと今回は思ったのだ。
    それぞれの短編の冒頭に、テーマである曲の歌詞。ここで、自分なりにイメージを膨らませてからストーリーを読み始める。曲を知らないからこそ、詞の意味が深く心に沁みてくる。読了後、いくつかの曲は動画で探して聴いてみて、改めて作品の良さをしみじみ感じるのでした。
    今回もう一つ、加藤さんが「やってくれたな」と思ったのは、1つの曲に対して、異なる3人の立場から描かれていること。時には時間軸をずらしながら…あの頃好きだった彼はどうしているんだろうと思いを馳せ、その「彼」が日々を送る今、同じ曲を聴きながら過去の断片を甦らせている。同じ曲を聴きながら、決して同じ思いを抱いているわけではないけれど、その微妙なずれがまたリアル。視点が3つになることであぶり出される真実もあったりして、意外な落としどころにびっくりすることも。
    全体的には、起承転結がぼやっとしていて物足りなく感じるところもあるけれど、そのとき一瞬のリアルな心の揺れの切り取り方は、相変わらずお見事。思い出に刻まれた一曲にまつわるドラマはこんなにもあるのかと…勿論自分を含め、誰にもあるものなのだと改めて思えた、余韻の心地よい一冊でした。

  • この曲を聞くと一気にあの頃の温度が戻ってくる。
    そういう曲があって、その曲がこの本と重なっているものもいっぱいある。
    したくないのに落ちてしまったり、本当は世の中ものを好きになりたいと思っていても好きになれない。
    そういう自意識の塊のようなもどかしい思いに共感できる。
    歌人ならではの率直な言葉選びが心地よい。

  • 楽曲の音色は奏でられた途端に消えゆくものであるし、始まりがあれば終わりがあるもので終わりがあれば始まりがあるはず。その意味で最後の一編だけはちょっと趣が異なる。ほかはどれも、悲しいほどのすれ違いを感じずにはいられない。人それぞれに受け取り方やこれまでの来し方が違うのだから、当然と言えば当然なんだけど、なんか切ない。

  • 加藤千恵は大好きで、取り上げられている楽曲も好きな曲ばかりだったので迷わず手にしました。
    けど、なんだろう。これまでのような震えるような共感がない。物語の主人公は中高生から30前半までの女性。恋愛に対する悩みが多め。

    なんというか、たぶん、自分の年齢や状況が変わって、ふっと共感できる境を過ぎてしまったんだろうな、という感じ。

    以前から感じていたのは、自分がネガティブだったり鬱々としているときに共感しやすい作家さんだな、ということ。

  • それぞれの物語が、それぞれの楽曲の歌詞とうまくマッチしてる感じが良かった。
    知らない曲も幾つかあったので、曲を聞いてからまた読み直すと二度楽しめる。

  • この人の文は朝井リョウちっくで、とても素敵だし好き。久しぶりに文がどタイプな人みつけたんだ~、きれいなの。多分加藤千恵に出会ったのはこの本きっかけでした。

  • JPOPの曲が出てくる短編集。
    曲を聞いた時に自分への応援や誰かを想う気持ちを表していたり、過去を懐かしく思う気持ちを思い起こさせてくれる。青春の輝きやその時からは想像できない大人になった今振りかえるとずいぶん遠くまできたと感じるけど、今を生きていることの強さも感じる。
    私が思い出を振り替える時の曲が何かを考えてみるのもおもしろい。

  • J-POPを聞かない人には厳しい
    曲に共感出来ないし、その曲をベースにしたショートストーリーにもついていけない。

    選択ミス

  • 知らない曲が多くてちょびちょび聴いてみたけれど、そこに自分の思い出がない分、登場人物たちのように心を揺さぶられることはなかった。
    私にとってはあの曲かなと考えながら読むのが楽しかった。

  • さまざまな曲にまつわる、思い出の物語。加藤さんらしい話。

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著者プロフィール

1983年、北海道生まれ。歌人・小説家。立教大学文学部日本文学科卒業。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。2009年、『ハニー ビター ハニー』で小説家としてデビュー。その他、詩やエッセイなど様々な分野で活躍。著書に『あかねさす――新古今恋物語』『真夜中の果物』『こぼれ落ちて季節は』『この街でわたしたちは』『消えていく日に』『そして旅にいる』『マッチング!』などがある。

「2023年 『この場所であなたの名前を呼んだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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