- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396343002
感想・レビュー・書評
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テーマは生活保護。
不正受給、貧困ビジネス、といった生活保護の闇に迫る物語です。
ストーリとしては、
ベテランのケースワーカの山川が訪問先で何者かに殺害されます。その後任となったのが新人職員の聡美と指導係の小野寺。
山川の担当していた受給者を訪ねていくと、徐々にヤクザの陰が..
山川がヤクザと関係をもって、不正受給に加担していたのか?
前半、生活保護の実態や貧困ビジネスの実態が語られます。さらに、受給側や役所側の考え..
闇が深いです。
中山七里の「護られなかった者たちへ」が思い出されます。
そして、警察顔負けの聡美たちの調査力(笑)で徐々に明らかになるその真相。
結果、後半、聡美にも危険が迫ります。
誰が聡美の情報を流したのか?
聡美はどうなるのか?
ハラハラドキドキの展開です。
パレートって何のことかと思っていたら、パレートの法則の事でした。
生活保護について、考えさせられる物語でした。
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生活保護に関わっていたケースワーカー・山川が殺された。同僚の新人女子職員が山川の不正を疑うが、、、貧困ビジネスを扱ったミステリー。柚月さんの作品の中ではイマイチだった。
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生活保護係のケースワーカーを主人公にした、本格的な生活保護ミステリーである。映画「虎狼の血」が面白かったので読んだのであるが、舞台津川市は、明らかに広島県呉市をモデルにした映画(呉原市)と同じ場所と思われる。山陽方言圏の私としては、親しみのある内容(作者の出身は岩手県らしい)。
生活保護受給者の何人かを知っている私としては、興味あるテーマであり、どのように料理したのかを見守ったという感じ。結果は、大枠では正しいが、部分的には「この作者もそうか」とがっかりした、という感じ。
ミステリー部分は、大枠では予想通りに進んだので、ここでは述べない。テーマ部分について書く。書いても別に面白さは減少しないと思う。
最後にある登場人物が言う。
「たしかに生保のあり方には、問題が多い。不正受給やら貧困ビジネスが、あとを絶たない。でも、生保という行政の制度があったから、育つことができた子供がいたことは確かだ。さまさまな理由で、自分の力で生きていけない人は、いつの時代にも必ずいる。そういう人を救うために生保は、必要な制度だ。言うなれば、生保は自分の力で生きていけない人のー社会的弱者と呼ばれている人たちの最後の命綱だ。その命綱を、悪用する奴らを俺は許せない」(420p)
そのことに異論は一切ない。しかし、作者はかなり生保について調べているはずなのに、私でさえ知っていることに言及しない。ここに出てくるケースワーカー(専門家)の言葉を借りて反論しないばかりか、彼ら自身がそのように認識しているかの如く、ミスリードするように物語を構成している。
曰く。(1)生保の金を受け取ったその足で、パチンコに並んだりする者がいる。と書いているが、パチンコ依存症だった場合は、アルコール依存症と同じ「病気」であることの認識がない。(2)テーマ的に「不正受給」について延々と書いているが、あることを書いていないから普通に読んだら不正受給は全体の1割から2割はいる印象を受ける。実際は、1%にも満たないし、そのほとんどは家族の子供のバイトの申告漏れ等の制度無理解によるものが多いのである。(3)生保受給者に同情してお金を立て替える場面を美談的に描いているが、規則的にもやってはいけないことであるが、受給者の自立を促すということでも「絶対やってはいけない」悪影響しか及ばさないことである。
建前は正しいけど、本音の所で、この作者生保制度のことをホントにわかっているのか?わかってないだろうなあ。 -
ケースワーカーの仕事や不正受給問題について考えさせられる作品。ヤクザも絡んではくるが柚月さんの作品ぽくない?感じかもしれない。
でも終わり方はやはり柚月さんの作品だなって思った。「前を向いて歩いていこう」ってなった。 -
社会福祉士が殺されるドラマ、の原作ということで読みました。まぁ面白かったです。
なんだろう、どんでん返しはどんでん返し…だと思うんですが、この方の書くどんでん返しはぎこちない気がします。 -
ケースワーカー、生活保護受給者、貧困ビジネスを描いたミステリー小説。
ミステリーとしては物足りない部分があったが上記ジャンルの勉強になった。
生活保護に関しては、
二進も三進もいかなくなってやむなく保護に至った受給者もいれば制度に甘んじる受給者もいるのが事実。個別具体的に審査をするのが理想だが人も時間も足りず、かと言って形式的に合致するものに支給するのでは国税を無下に扱っていることになる。
一概に意見を付せない点で扱いの難しいテーマ。
個人的には読了後も不完全燃焼感が残った。
一方で、主人公たちの働きぶりは自身の仕事ぶりを再考するきっかけとにもなった。
機械的にやってしまえば簡単に処理できる仕事である一方で、各生活者の受給に至った経緯や家族構成、資産状況など多角的にすることが不正受給抑制につながりその責務を全うする姿勢は、対人のビジネスである多くの職種に共通するテーマだと思う。
当たり前の心構えではあるが、膨大な事務量に忙殺される中でこれを実践するのは難しいと思う。 -
生活保護を舞台にしてて、
とても楽しみに読んだ。
が、結果としては普通。
柚月の作品らしい感じの、平板な感じ。 -
wowowドラマになると聞き読んだ。
生活保護費の不正受給をめぐる殺人事件を探る担当者の話。パレートという数式を持ってきたのはキャッチーだけどさほど目新しい展開がなく思っていた人が思っていた通りの理由で犯行を行っていた。
不正受給の手口が思いもよらない方法なのかと思ったのだけどそこも普通。よくあるやつ。
親子愛に重き置くでもなく、人間関係のしがらみを描くわけでもなく。
事件が進んでゆくのを主人公と一緒に探してゆく感じの描き方だったからすらすら読めたけど全体には大変物足りないです。ドラマはこれをどう見せてゆくのかには興味がある。 -
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市役所の臨時職員に採用された聡美は
取得した福祉の資格が活かせると考えていたが
配属されたのは生活保護受給課だった。
人手不足の中、入庁後直ぐにケースワーカー
としての業務に就く事になり不安で戸惑う。
そんな聡美に先輩のケースワーカー山川は
いつかこの仕事をしていて良かったと思える時がくる
、と激励した。
初めての現場に挑んだその日、先輩の山川が
市役所に戻らない事態が発生する。
生活保護について、受給者とその対応をする
市役所職員の両方の姿が描かれる。
不正に身を染める人、
不正を許さない人、
悪意ばかりだと諦める人、
悪意だけでないと希望を見据える人、
いくつもの真実が人の数だけある。
パレートの法則が全てではないと思える物語。
規則だからなにもできないではなく、
たとえ規則を破ってでも、
本当に相手のためになることをする
そんな熱い使命感を持つ者が、
優れた職業人だ
こんな心をもっていられたら
と、聡美が眩しく思えた。 -
今生活保護の申請がうなぎ上りで増えているという。
不正受給や貧困ビジネスなどニュースを耳にするたびに
複雑な思いにかられてしまう。
しかし、働き蟻の中で二割の働かない蟻を除去しても
またその中の二割は働かなくなるという話が人間にも当てはまるとしたら、
いつかは自分がその二割の中に入ってしまうことだってあるかもしれないということだ。
(そんな風に考えることができたのは、この小説のおかげ)
それにしても柚月さん、相手が主人公であろうと
うら若き女性であろうと、暴力シーンに容赦がないのね~^^;