- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396346409
作品紹介・あらすじ
文芸評論家 大矢博子さん、絶賛!「きっと読者にも勇気と力を与えてくれる」“秘密”を預かる奇妙な商いには、驚きと喜びがあった。重荷を抱えて生きる人に寄り添う物語。
京都西町奉行所同心の手先の蝶次は、高瀬川の辺で美女と遭う。「女の訪れた家には死人が出る」閻魔の使い女こと謎の質屋『むじな屋』の主お理久だった。大店の娘から、亡き毋が秘密を預けていた代償として広大な庭を取り上げられる、という阿漕な話を聞いた蝶次は、義憤から化野のむじな屋を訪れるが……。誰しもが抱く悔恨。それでも前を向く勇気と覚悟を描く時代小説。
感想・レビュー・書評
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三好昌子氏の妖系(勝手に妖系なるジャンル分けをしてる)の3冊目である。コレまでも、良質な時代物の妖系を堪能させてもらったが、これはまた秀逸と言えるのではなかろうか?
無尽無屋のお理久が主人公でも蝶次が主人公でもどちらでも連続物を期待させる物語りなのに、次は無いのだろうか?
妖の話しであり、ミステリーであり、ドキュメンタリーであり、が上手くミックスされていて、この先をまだ読みたくなる作品だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めて読む作者 三好昌子氏の本である。
時代小説がすきで、色んな本を読んでいるのだが、江戸を舞台に描かれている者が多い。
その中で、これは京都!
近畿在住の私には、その土地柄がわかり易い。
そして、この著者のなんとも言えない情緒豊かな風情の表現が、すんなりと頭に入って来る。
話しは、いまは同心の手先になっているのだが、呉服商の須磨屋のお妾の子である蝶次が、主人公である。
本当だったら、その呉服商の跡取りになっていたのに、女の子が、生まれて、その子が養子を迎えて跡を取ることに・・・・
しかし、それは、陰謀が、あっての事だった。
蝶次は、そんな中、自分の生い立ちをひょんなことから、知ることになっていく。
第2の主人公ともいえる謎の女、お理久。
訳の分からない品の引き取りで、質屋 「むじな屋」を営むのだが・・・・
人生、知りたくなかった事、忘れたい事、辛かった事、胸に仕舞っておくことが、とてもつらいという十字架を背負っていく秘密を、誰かにうち開けたい。
その想いを、叶えるあやかしの世界があったなら・・・
秘密の記憶を預かるという 想像できないような話なのだが、・・・今までの安倍晴明のような者でもなく、妖のような妖怪が、出て来るわけではないのだが、・・・・このような蝶次が、お理久に良いように、使用人の如く扱われて行く事に、少し、違和感もある。
僧侶のように、秘密をかかえても、其のまま、自分の非を悔いながら、生きて行く勇気も必要かと思いながら、自分の出生に疑いを持ちながら、蝶次は、これからどのように人生を歩むのだろうと、読み終えながら、本を閉じた。 -
変わった形の自分探しの 時代劇です。
蝶次は 呉服商 須磨屋 のお妾さんの子供
最初は跡取りで引き取られたのに 本妻に女の子が生まれてから
実の母親がやっている料亭に 返された。
博打なんぞに手を出してから 駒屋という庭師のもとへ
そこからもとびでて 同心の手先になる。
そこまでは 普通のはなし
それから 実の母親はお姫様だったり
本当はどうなんだ?
と探っていく。
この世のものでは ないものたちに助けられたり
謎の質屋 むじなや から話しが広がる
ファンタジーだけど 逃げないで留まる力をつけていく
結構 好きなはなしです。 -
方向は違いつつも理久も蝶次も優しい。そのおかげであやかしの物語だけど柔らかい雰囲気になってます。辛い過去を背負ってなお、何者にもなれると前を向く蝶次の成長が軽やかで明るい。
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三好作品は本当にハズレがなく安定して面白い。テーマも確りとしている。が、平坦な予定調和的な安定感で終始しているわけではなく、所々に読者の想像以上のストーリーを提供してくれ、全体を飽きさせることなく読ませてくれる。平易な文章なのに行間が深いところなどは山本周五郎作品にも通じる。もっと評価されていい作家だと思う。