軍師 千利休――秀吉暗殺計画とキリシタン大名 (単行本)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396617202

作品紹介・あらすじ

茶聖・千利休(宗易)は、日本に上陸したイエズス会によってキリスト教思想に目覚めた。
しかも、キリシタン大名たちを従える〝軍師〟だった――。
超衝撃の〝加治史観〟が炸裂する、著者1年ぶりの書下ろし。
直筆の書状や茶器、伝承が多く残る利休だが、真の姿は謎に包まれている。
秀吉に命じられたという切腹にしても、その理由は諸説あって定かではない。
著者は綿密な取材と史料考証で、利休の実像と死の真相を解読する。
のちの千利休こと田中与四郎が、武野紹?の門下となり茶の湯の道に入ったのは、
1540(天文9)年、18歳のときだった。それから約10年、キリスト教が日本に伝わる。
ローマ・カトリックの尖兵的役割を負ったイエズス会は、
日本の風土に適合しながらカトリックの教義と西洋文化を広め、南蛮貿易を取り仕切った。
日本に浸透してゆくキリスト教。その波の中に利休もいた。
やがて利休は侘茶を完成させた当代一の茶人となり、幅広い人脈を築く。
信長、秀吉と近かったのは言うまでもないが、その高弟たちに注目すべきだ。
高山右近、蒲生氏郷、古田織部、黒田官兵衛、前田利家……
みな、キリシタン大名である。
秀吉は当初、信長同様、キリスト教=イエズス会に友好的だった。
その利用価値を認識していた。しかし……
本能寺の変を経て天下統一の野望が現実化するに従い、「伴天連追放」へと舵を切る。
そのとき、利休がとった行動とは

著者について

加治将一(かじまさかず)
札幌生まれ。米国でビジネスを手がけ、帰国後、執筆活動に入る。
『借りたカネは返すな! 』(アスコム)がベストセラーに。
明治維新の裏面を描き、坂本龍馬暗殺犯を特定した『龍馬の黒幕』(祥伝社文庫)は、テレビで4度映像化された。
大学、企業、経済団体などでの講演も好評を博す。世界有数のアンティーク・コインのコレクターでもある。
主な著書に『龍馬を守った新撰組』『第6天魔王信長 消されたキリシタン王国』(以上、水王舎)
『幕末 維新の暗号』『西郷の貌』『幕末 戦慄の絆』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(以上、祥伝社文庫)などがある。
2017年夏、初監督・脚本映画「龍馬裁判」を公開した。
Twitter、YouTube (チャンネル加治将一)も必見。

感想・レビュー・書評

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  • 分厚い。
    秀吉の天下取りにおけるイエズス会の力を大いに評価。
    それらネットワークのハブが千利休。
    豊臣政権が安定期に入ると秀吉はイエズス会&千利休らのやり口に疑念を持ち・・・

    ●陰謀説というのは歴史学会などでは忌避されがちなものだと思うが、本書は安土桃山時代のイエズス会が日本史に与えた影響について大いに評価した。
    @フロイス日本史は一時期は信用がおけない史料だとされていたようだが、最近は信頼性が高まっているらしいし。
    ●秀吉が政権を奪取して安定期に入るまでのキリスト教との蜜月ぶり、譜代家臣のいない秀吉はキリシタン大名を通じての勢力拡大、イエズス会を通じての武器の調達、貿易による利益、、これらネットワークのハブでありフィクサーのような存在であったのが千利休。
    ●完全に公認されているキリシタン武将というのはそれなりの数いるわけだが、入信が確認はされていないものの明らかにキリシタンシンパだなという武将はかなりの数。
    ●@暴力と裏切りが蔓延する殺伐とした時代のニーズに仏教や神道は応えることができなかった。そこにタイミングよくやってきたのがキリスト教。当時の人の葛藤、新しい思想への欲求に応えた。
    ウソはついちゃだめ!という教義によって信長、秀吉などはキリシタン武将を信用。
    ●当時の大名支配についても、江戸時代のような確固とした徴税システムがあったわけではない、土地は家臣に分け与える。大名は強大な権力があってもカネはない。@寺社取り壊しなどは利権収奪の一環か。
    ●秀吉の行動理由=女が好き。秀吉は巨視的な政権構想を持っていたわけではない。当たり前だがいろいろな偶然によって天下人になった。そこに千利休とイエズス会が絡んでいた。
    ●本書が描く豊臣政権の雰囲気は秀吉の気分次第で大名といえども簡単に殺される世界。そんな中で絢爛な安土桃山文化。歴史学会では、五大老や五奉行や太閤検地やと確固とした政権構想によって豊臣政権が運営されていたように描くことが多いだろうが、実際のところは強大な暴力を持った独裁者が好き放題にやっている感じかなと。
    ●とはいえ、秀吉は切れ者なので政権が安定してくるとイエズス会、キリシタン大名、千利休のネットワークに疑念と警戒心を持つようになる。キリスト下げ朝廷上げとか。
    ●茶道にキリスト教の影響がある、というのは90年代には流布していた説だが、本書でもそれを補強している。本書における千利休の心は完全にキリシタンなので茶道のあらゆる部分にキリスト教の儀式、思想が塗りこめられているとなっている。
    ●本書における本能寺の変は秀吉の陰謀説だが、@最近に桐野作人の本を読んで光秀単独犯行説に自分としては傾いている。
    @=私見

  • 読み物としてはめちゃくちゃ面白い。ただ学術書ではないから研究者の査読を受けたわけではないし、そこは割り引く必要あり。明智光秀の子孫が本能寺の変に関して書いた本が出てくらいかな、一般に秀吉って性悪エロ鬼畜みたいなイメージが流布したの。前からそう?武家なんてヤクザ、ってのはずっと思っていたので同感。
    茶の湯はキリスト教の影響を受けていて、台子はデウスに繋がるとか、茶道具セールスの仕組みだとか、日本列島の先住者と渡来者の関係とか、南宗寺や大徳寺とイエズスの関係とか、利休の前妻が三好長慶の妹だとか、千利休はセントルカだとか、将棋で上手が王で下手が玉なのは玉が内裏だからとか、イエズスの茶の湯布教だとか、茶会は緑のミサともいえるものだったとか、小西行長は海軍長官、高山右近は陸軍長官要員としてイエズスに育てられたとか、本能寺クーデターは利休をはじめイエズス勢力の力添えで秀吉が光秀を討っておさめたとか、細川藤孝の光秀や信長への恨みとか、家康は大坂夏の陣で死んでいたとか、利休の末路が不明なのは十字軍を動かさないために秀吉が情報を曖昧にしたからとか、朝廷に箔をつけてもらってイエズスの支援を必要としなくなった秀吉が十字軍を先方として使って戦力を削り大友宗麟もグズグズ助けなかったとか、九州平定後に秀吉がバテレン追放令を出し、これに危機を感じた利休が伊達政宗を使ってクーデターを企てたとか、山上宗二の処刑は暗殺に失敗したからとか、東北の一揆は政宗と十字軍を使ってクーデターを目論んでいたが結局利休は政宗に会えずうまく機能しなかったとか、最後に利休をはめたのは細川藤孝だったとか。

  • 本を手に取ると、加治将一ファンの自分ですら尻込みしてしまうほどの文量に圧倒されつつ読みはじめました。できるだけ時間をかけて読みたい、加治氏は何が言いたいのか読みほぐしたい、と思いながら読み進ました。
    これまでいくつか利休ものを読んできましたが、ボクのモヤモヤ感は、利休の切腹理由が曖昧だったのだと改めて気づかされました。
    読了後、全てが納得、感慨無量の境地で、また一つ加治作品を読めた自分が誇らしく思えました。

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著者プロフィール

札幌市生まれ。米国で不動産投資事業に従事、帰国後、執筆活動に入る。 『龍馬の黒幕』 『幕末 維新の暗号』『幕末 戦慄の絆』『舞い降りた天皇』『龍馬を守った新撰組』(すべて祥伝社文庫)他、タブーを破る歴史ミステリーが読者の心を摑み、大ベストセラーに。近年はYouTube「Kajiチャンネル」でオリジナルな世界観、歴史観、幸福哲学の情報発信を続けている。近著に『軍師 千利休』(祥伝社四六判)がある。

「2023年 『第六天魔王信長 消されたキリシタン王国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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