まだ温かい鍋を抱いておやすみ

著者 :
  • 祥伝社
3.64
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  • (28)
  • (6)
本棚登録 : 2021
感想 : 156
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635855

作品紹介・あらすじ

今がどれだけキツくても――“おいしい”が、きっとあなたの力になる。ほろ苦く、心に染み入る極上の食べものがたり
「遠くへ行きませんか」「行くー! 行きましょうぞ!」
スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ……(「ポタージュスープの海を越えて」)

彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。
病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。
――“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 食事をキーにした6つの短編集。特に「シュークリームタワーで待ち合わせ」と「大きな鍋の歌」がよかった。夜子が何となく自分に似てる(笑)夜子が幸のために食事をふるまっていくのはすごく良かった。
    特に後半の2編に食と生のつながりを強く感じて心に響いた。
    普段自分は別に料理が好きでもないし、人にふるまうよりふるまわれる方が好き。でもスキルのない人でも容易に、あたたかく優しさを伝える事ができるものに料理や食があるんだなと温かい気持ちになった。

  • 食事を通じて変わっていく人間関係を描いた6つの物語。

    現代に生きる私たちが抱える不安や悩みが、それぞれの食事を通して解消されていく。どの物語も読み始めはザラザラとした感覚が心の中に生まれるけど、登場人物が咀嚼するほどに滑らかになっていく感覚。

    子育て中の女性が主人公ということもあって、「ミックスミックスピザ」「ポタージュスープの海を越えて」「シュークリームタワーで待ち合わせ」は頷く部分が多かった。3つとも「完璧でなくていい」「母親になっても自分は自分でいい」というメッセージが伝わる。大切なものを大切にしながら自分の人生を生きていくという、覚悟を決めた主人公たち。登場人物から勇気と力強さをもらった。

  • 食べることは生きること。自分や大切な人のために美味しいと感じられる料理を作りたい、美味しいものを誰かと楽しくいただきたい、そんな時間を大切にしたいと改めて思わせてもらえる本でした。

  • 食べることとは生きること、を実感した1冊でした。

    温かいご飯が出てくる食卓を家族や仲間と囲む幸せ…みたいな感じのお話かなと思いきや、意外と世間や人とうまく行かない女性や、子育てに疲れ自分の好きな食べ物を忘れてしまう母親、一昔前の息苦しくなるようなステレオタイプの男女観や家族観を持つ人たちもサラッと描かれているので、読みながらどことなくもやもやした気持ちになりつつ、読後感は、そんなに悪くないよな、暖かいものでも食べてまた前向ければいいよなって思わせるところが彩瀬まるだなあって思いました。 

    ポタージュスープの海を越えて、のクリーニング店の2階での1シーンや、シュークリームタワーで待ち合わせの毎日毎日おいしいものを作り続ける夜子と、泣きながら食べる幸のシーンが、なんだか寂しいんだけど懐かしさとかあったかさがあるような気がして特に好きでした。

    ひと匙のはばたき
    かなしい食べもの
    ミックスミックスピザ
    ポタージュスープの海を越えて
    シュークリームタワーで待ち合わせ
    大きな鍋の歌

    1冊のタイトルももちろんだけど、短編もれなくほんとにタイトルがうまいですよね、この作家さん。

  • 6つの短編。心の機微の描写が細かくて、自分の身近な人の物語みたいに近しく親しく感じます。あたたかい誰かの手作りの食事を食べたくなりました。どれも素敵ですがコーンポタージュの海が1番好みかなあ。

  • 食をキーにした短編集。著者は、女性の心の揺らぎ、シスターフット系の作品に長けている。
    ふと道を外しジャンクなピザの味に恍惚としたことで、逆にメンタルを病んだ夫を理解し包摂できるようになる「ミックスミックスピザ」子を亡くした友人を引き取って食を与え続け自らの喜びを知る「シュークリームタワーで待ち合わせ」がんで味覚を失い死にゆく優しい友人が残してくれた鍋「大きな鍋」がよかった。

    P172「家庭は、異世界だよ。社会とは違う。ちょっとずついろんなものがずれる。愛情で、何らかの磁場が狂う。」

    P182それは奇妙に甘美な体験だった。一つの命にずっと触って、それが太くしたたかになるのを待っているのだった。【中略】私はたぶん今後も、満ち足りた人を祝福するヒトサラは作らないのだろう。そういう食卓を、心の底では信じていない。それよりも幸のような人に食べてほしい。苦しい時間を耐えていく人の食卓に豊かさを作りたい。

    鶏とセリのさっぱり煮:鶏とセリに細切りにしたゴボウ。薄味に仕上げてお酢とごま油で風味をつける。

  • 食べ物にまつわる短編集。
    「食べることは生きること、つくることは生かすこと」って感じ。
    誰かのために自分を大切にするだけじゃなくて、自分のために自分を大切にできるようになりたいなぁと読み終わってぼんやりと思っていた。

  • 生きることは食べること。そんな物語でした。
    シュークリームタワーのお話が1番好きだけど、よく分からないなと思う話もありました。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/802918

  • 私とよく似た人がたくさん出てきた気がする。てことはどの人も普通の平凡な人たちなんだろう。どっか満たされない部分とか、どうしても埋められない隙間を、なんとかしようとする食事。食べることは生きることだってことなんだろうな。ポタージュスープの話は「夢オチかよ!」なんて全く思わなかったばかりか、なんだこの話すごいって読み終えてしばらくゾワゾワしてた。不思議で温かくて、この人の作品好きかも。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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