- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396635879
感想・レビュー・書評
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偏屈だが解剖の腕は超一流の光崎藤次郎教授が率いる浦和医大法医学教室に、城都大附属病院の内科医・南条がやって来た。前日に搬送され急死した前都議会議員・権藤の死に疑問があるという。肝臓がんが死因とみられたが、九カ月前に受けた健康診断では問題がなかった。捜査に駆り出された埼玉県警の古手川は、権藤の甥が事故米を使って毒殺を目論んだ証拠を掴む。しかし、光崎が司法解剖から導き出した答えは恐るべき感染症だった!直後、権藤の周囲で新たな不審死が判明。感染源特定に挑む新米助教・栂野真琴が辿り着いた驚愕の真実とは―!?
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原因も状況も違うが、まさにいま読むために書かれたようなストーリーである。良いのか悪いのかは別にして、エキノコックス感染症でパンデミックになった時の状況が想像しやすい。パンデミックを封じるために動く光崎教授と研究室のメンバーの必死さ。それに比べて、感染元を疑われる都議会の面々の歯切れの悪さ。アメリカにまで渡った調査の過程で目にし、耳にした事々の醜悪さ。人間の弱さ醜さ、自己保身、プライド、などなどあまりにも多くの要素が絡み合った結果の、悶絶死なのである。思わず目を覆いたくなる。読後感は決して良くはないが、人の命を救うことにかける情熱がぐいぐいと伝わってくる一冊ではある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ第3弾。
第1弾では研修医だった真琴先生も助教として光埼教授やキャシー准教の立派な防波堤になっている。成長成長。古手川刑事も相変わらずいいように使われているものの、貫禄も出てきたようでなにより。
今回のケースは突然劇症化し死に至った肝臓がん。無関係と見えた二人の死因。そこから4人の「捜査」が始まるのだけど、今回はいろんな意味で今までと違うところが。意外性にワクワクしながら読む。
しかもニューヨークにまで飛び出すとは!キャシー准教の出番です!!
ただ、問題の感染源についてかたくなに口を開かないアイツらの、その話せない理由がわからないまま残りあと数ページ。あぁ、そこはわからないまま終わるのか?と気を抜いた、その瞬間いきなり明らかにされるその唾棄すべき理由。え?そういうこと?いや、ちょっと待って、それすごく問題なんですけど。それ、このまま終わるんですか!?ともやもや。でもそりゃそうか。その部分は(たとえ許しがたいことだとしても)彼ら法医学者たちにとっては関係ない事ではあるか。
でも、気持ち的にはヤツらのやったことは許しがたさの極致である。もし手術するなら麻酔なしでやってやればいい、と鬼のような気持になってしまった。
そして、少しずつ少しずつ縮まる真琴先生と古手川刑事の仲。今後が楽しみだ。 -
シリーズ3作目
コロナ禍に読むと、ウィルスと寄生虫、感染経路の違いはあるものの恐怖を感じずにはいられませんね
話の筋には、いろいろと無理があるかな(パワーバランスが変だ)
結末は、最低最悪、気分が悪くなる話でした -
安定した読みやすさ。
最後まで引っ張った自分の命より守らなければいけない秘密は想像より小さなものだった。 -
「ヒポクラテス」シリーズの第3弾。
1.米の毒 / 2.蟲の毒 / 3.職務に潜む毒 / 4.異国の地の毒 / 5.人の毒
の5つの短編連作。
後半部分の人種差別などは不快な気持ちになるような部分が多かったけれど現実は残念ながら実際にそうなんだろうなと思いました。
真相はあまりにも不快な理由だったけれど今回も面白く、前作よりもより読みやすく感じました。 -
法医学シリーズ第3弾・・・・?
解剖した遺体から変異種の寄生虫が見つかり、寄生虫の発生源を追う長編。
寄生虫発生源の場所に対して怒りで頭が沸騰する。
読了後に受けるストレスが大きく胃薬必須。
多くの人に読んで頂きたい一冊。
だけど・・・
読了後の感動等は得られないのでそういう意味ではおススメできない。 -
20.12.12読了
ふっと現実逃避のために読み始めたが、ほんの数ページで本の世界に引き込まれる。
さすが七里さんだと思った。
古手川が、神永さんの八雲シリーズに出てくる古手川?と名前が一緒の気がして、人物像が若干混乱して、過去の作品を読み直さないと人物像が分からないと思った。笑
世界観も、法医学の世界もアメリカにも広がるグローバルな話題と、読み応えがある作品でした。満足。 -
ヒポクラテスシリーズ第3弾。何だかんだ真琴先生もだいぶ光崎先生カラーに染まってきました。
議員達の言動は正直耐え難い物もありますが、最後まで一気に読めました。
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光崎教授の法医学シリーズの第三弾は、未知の変異を遂げた感染症との戦いを描いた物語でした。
感染症…というと今の世の中を写し取って描いたかのようで、けれど実際には書かれたのは数年前ということです。言い方が難しいですが、物語の題材となりうるほどの感染症というものの持つ恐ろしさや、人の理知の及ばない領域を含んでいることの恐怖を改めて思い知った気もしました。
人の恨み辛みを探っていく筋ではないのでどう謎の感染源を突き止めていくのか、その展開そのものを楽しめました。その中であらわになってくる政治家の汚い闇や人種差別問題などは重く残酷なもので、読後感はけして爽快ではありませんが……。
この作者には珍しく?淡い恋愛模様も描かれているのが、息苦しい要素ばかりが詰め込まれていた物語と、実際に感染症に苦しんでいる現実から息をつける、救い、なのかもしれないと思いました。