- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396636289
作品紹介・あらすじ
この恋が永遠でないことを知っている。
けれど感じることができるのは現在だけだ。
『アーモンド』『三十の反撃』の著者が贈る、
四人の男女の、揺れ動く心の移ろいを繊細に描いた、大人の恋の物語。
ひとつの恋が終わると、すぐに次の「愛する人」を見つけてしまうイェジン。 「いい人」とよく言われるものの、他人と一定の距離を保つドウォン。離婚した元夫と、不毛な逢瀬を重ねつづけるジェイン。自らを危険人物とみなし、恋愛とは無縁な人生を歩んできたホゲ。
同じ建物で働くイェジンとドウォンは、休憩時間に互いを知るようになり、ジェインのベーカリーでアルバイトをするホゲは、オフ会でイェジンと知り合った。偶然四人が出会ったとき、ドウォンとジェインが十年ぶりの再会を果たし…。
「普通の恋愛小説とは違うものにしたかった。ナイーブな失敗を重ねて迷いながら成長していこうとする、不安な若さを描きたかった」
――ソン・ウォンピョン
過去の傷や闇を抱えた四人の男女が、人との出会いを通して自分を見つめ直し、成長してゆく姿を繊細に描いた、大人のための恋愛小説。
感想・レビュー・書評
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「アーモンド」の著者ソン・ウォンピョンさんの恋愛小説。
描かれているのは、著者によると「どこか欠陥があって、深く知るとむしろがっかりするかもしれない」男女4人の織りなす恋愛模様。
確かに欠陥がある人たちなのかもしれない。
暗いし、めんどくさいし、自分本位だし…。
でも、なぜか親近感というか、懐かしさを感じる。
韓流ドラマってほとんど見たことないけど、この小説のような感じなのかな?
著者は「宇宙が点になって消滅するその日まで、愛は永遠に続く」という。
今、飲んでますが、その言葉に泣きそうになってます…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この作者の特徴なのか、韓国の小説一般に共通している特徴なのかわからないけれど、登場人物たちが自分の気持ちを相手に伝える言葉がわかりやすい。人間関係はわりと複雑だが、自分自身の気持ちの向き合い方がストレートで、相手にも上手く伝えられているから(不器用で上手く伝えられないときもあるけれど)、読んでいてもやもやせず面白い。
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それぞれ恋愛をしている4人の心の中を写した作品。恋愛はタイミングか、運命か。好きな人への嫉妬心から心を吐き出してしまい、深く周りを傷つけてしまう。自分の気持ちを抑えても苦しい、気持ちを伝えても、辛い結果になることもある。
このあと、4人の恋模様はどう変わるのか、20年後の彼らをみてみたい。 -
ソン・ウォンピョンさんの
4人の男女の、大人の恋愛小説。
4人それぞれの愛の形が
まるで光を受けたプリズムのように
屈折したり、反射したり、
思わぬ方へと光射すその様は読んでいて切なく
光と影が心に揺れ動くよう。
上手く届かなくても
思い通りにはいかなくても
愛は消えることなくここにあって
尖った鋭さも、揺れるほどに光はきらめいて
そっと目を細める。
そんな、静かで繊細な光の通った物語でした。
流石、ソン・ウォンピョンさん。
こんな恋愛小説は初めてです。
恋愛も人生も甘くない
ビターな味わいが好みでした。
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4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。
それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。
けれど、確実に未来へは進んでいく。
そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。
簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もとても響いてきて、この作者さんと訳者さんのコンビは絶妙だな、と思えました。 -
利己的で自己愛の塊のような人としてイェジンの目に映っていたハンチョルも、新しい彼女とはどうやらそれなりに楽しくやってるらしい。
誰のことも綺麗に描きすぎず、ただの悪役にもせず、市井の人々のささやかな日常として淡々と場面を進めていく感じが、最初は物足りなかったけど最終的には心地よく感じた。 -
【この恋が永遠では無いからこそ、出逢いと別れを繰り返せ】
ソウルで暮らす四人の男女の一年間の出逢いと別れを、四者四様の愛の形の物語。
愛は始まるのと同時に終わりをじっと見つめなければならない。
偶然、始まった出逢いからの恋愛は、その刹那さ故に思いがけぬきっかけで脆く壊れてしまう。
その結果、残るのは心の傷と痛み。
そして有り余る後悔。
だが、そんなに傷ついても尚、人はいつの間にか別の恋愛を始めてしまう。
その繰り返しの中で、繋がって断ち切って、人は誰かと関わって生きていく。
そのサイクルの中に恋愛の本質が隠れているのだ。 -
20-30代の男女のすれ違う大人の恋の物語。
初夏の日差しのような爽やかな女の子、そんな彼女に恋われる孤独を好む男性、家族や感情を断ち切るのが苦手な女性、彼女のパン屋でアルバイトする男の子。
劇的な物語があるわけではないけれど、作品全体の空気感が柔らかく、それでいて現実感があり、ハッピーエンドでめでたしめでたしの夢物語に終わらせないところがとても良かった。
わたしも過去に引きづられてるのではないかな、断ち切るべきものをきちんと断ち切って前に進みたい。
恋愛をしてる時のワクワクした気持ち、世界がキラキラして見える奇跡のような瞬間に身を浸してみたいな、って思った。
同じ著者の「アーモンド」はあまりハマらなかったけれど、丁寧な心理描写がとても良かった。人物描写がとても上手で、引き出しの多い作家さんだなぁと感じた。