プリズム

  • 祥伝社
3.24
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636289

作品紹介・あらすじ

この恋が永遠でないことを知っている。
けれど感じることができるのは現在だけだ。

『アーモンド』『三十の反撃』の著者が贈る、
四人の男女の、揺れ動く心の移ろいを繊細に描いた、大人の恋の物語。

ひとつの恋が終わると、すぐに次の「愛する人」を見つけてしまうイェジン。 「いい人」とよく言われるものの、他人と一定の距離を保つドウォン。離婚した元夫と、不毛な逢瀬を重ねつづけるジェイン。自らを危険人物とみなし、恋愛とは無縁な人生を歩んできたホゲ。
同じ建物で働くイェジンとドウォンは、休憩時間に互いを知るようになり、ジェインのベーカリーでアルバイトをするホゲは、オフ会でイェジンと知り合った。偶然四人が出会ったとき、ドウォンとジェインが十年ぶりの再会を果たし…。

「普通の恋愛小説とは違うものにしたかった。ナイーブな失敗を重ねて迷いながら成長していこうとする、不安な若さを描きたかった」
――ソン・ウォンピョン

過去の傷や闇を抱えた四人の男女が、人との出会いを通して自分を見つめ直し、成長してゆく姿を繊細に描いた、大人のための恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「アーモンド」の著者ソン・ウォンピョンさんの恋愛小説。

    描かれているのは、著者によると「どこか欠陥があって、深く知るとむしろがっかりするかもしれない」男女4人の織りなす恋愛模様。
    確かに欠陥がある人たちなのかもしれない。
    暗いし、めんどくさいし、自分本位だし…。
    でも、なぜか親近感というか、懐かしさを感じる。

    韓流ドラマってほとんど見たことないけど、この小説のような感じなのかな?

    著者は「宇宙が点になって消滅するその日まで、愛は永遠に続く」という。
    今、飲んでますが、その言葉に泣きそうになってます…

  • 韓国のとある街に生活する4人の恋愛関係が徐々に絡まり合ってゆく物語。

    ◆登場人物
    簡単に4人のプロフィールをおさらい。
    ・イェジン:27歳女性。中堅の玩具メーカー勤務。天真爛漫で愛嬌のある性格だが、失恋のたびに寂しさに耐えれずすぐに次の恋人を作ってしまう悩みあり。
    ・ドウォン:35歳男性。映画の音響をミックスしてサウンドの仕上げをするスタジオで勤務。孤独を愛しなかなか心を開かない。元カノのスミンからの連絡に嫌気がさしている。
    ・ジェイン:34歳女性。イーストフラワーベーカリーの店主。問題のある家庭に育ち、母との距離感に悩む。一方、元夫のヒョンジョとは別れた後もSEXパートナーとして体の関係だけ続けている。
    ・ホゲ:25歳男性。イーストフラワーベーカリーでバイト勤務。出会い系アプリ利用。自分は危ない奴だと思ってる。

    ◆感想
    初めはイェジンとドウォンの恋愛が発展していくかなと思いきや、イェジンとホゲ、ドウォンとジェインもいい感じになったり…と関係性が徐々に変化していく。それぞれが、蓋をしてきた過去を持ち、素直になれなかったり、相手を無碍に傷つけてしまったりと、葛藤する。自分に重なる部分もあったりして読んでいて胸が痛くなった。
    アーモンドの時にも感じたが、ソン・ウォンピョンさんは登場人物心の機微や表現力がとても豊かで、それを適切かつ文脈のなかで違和感なく日本語に置き換えてゆく訳の方の能力も素晴らしいなと思った。

    恋愛小説で身近な内容なこともあり、これまで読んできた韓国文学の中ではいちばん読みやすく、一気読みできた。

  • この作者の特徴なのか、韓国の小説一般に共通している特徴なのかわからないけれど、登場人物たちが自分の気持ちを相手に伝える言葉がわかりやすい。人間関係はわりと複雑だが、自分自身の気持ちの向き合い方がストレートで、相手にも上手く伝えられているから(不器用で上手く伝えられないときもあるけれど)、読んでいてもやもやせず面白い。

  • それぞれ恋愛をしている4人の心の中を写した作品。恋愛はタイミングか、運命か。好きな人への嫉妬心から心を吐き出してしまい、深く周りを傷つけてしまう。自分の気持ちを抑えても苦しい、気持ちを伝えても、辛い結果になることもある。
    このあと、4人の恋模様はどう変わるのか、20年後の彼らをみてみたい。

  • ソン・ウォンピョンさんの
    4人の男女の、大人の恋愛小説。

    4人それぞれの愛の形が
    まるで光を受けたプリズムのように
    屈折したり、反射したり、
    思わぬ方へと光射すその様は読んでいて切なく
    光と影が心に揺れ動くよう。

    上手く届かなくても
    思い通りにはいかなくても
    愛は消えることなくここにあって
    尖った鋭さも、揺れるほどに光はきらめいて
    そっと目を細める。
    そんな、静かで繊細な光の通った物語でした。

    流石、ソン・ウォンピョンさん。
    こんな恋愛小説は初めてです。

    恋愛も人生も甘くない
    ビターな味わいが好みでした。

  • ソン・ウォンピョンさんは好きな作家さんだ。
    過去作も色々思い入れはあるものの、この物語はいちばん好きな作品。

    何でもない出会いを特別な時間にするためにいつもの場所での「偶然」を装いそこを訪れるイェジン。待ち人であるドウォンは歳の離れた「友人」の気持ちに気付きながら適度な距離を保つ。
    パン屋のオーナー・ジェインとアルバイトのホゲ。感情が表に出にくいホゲだが年上で気さくなジェインとは程よい距離で接している。

    2組が揃って対面した瞬間、互いの距離感は変化していく。

    交差する感情とそれぞれの立ち位置が時間と共にもつれ合い、分断されていく様子が歯痒く、痛々しく、これもまた人生の学びとも感じられた。

    大人だってひとを愛すことは不安だし怖いしだからこそ決断をしなければならない事だってあるんだと、言いたい。ただ。幾つになっても心に温かな火を灯すのは諦めないで。そんな想いで彼氏の物語を読み終えた。

  • 4人の男女の季節と共にゆらめき移ろいゆく関係性を、繊細に、けれど明快に描き上げた作品です。

    それぞれの持つ個性、抱えていた過去、今も持つ秘密。それらが、芽生えた恋情を後押ししたり、邪魔をしたり影響させていく。「とにかく好きだから」でなんとかなった(かもしれない)十代ではない彼らは、だからこその選択をして、それは新たな悲しみや傷も生んでしまう。

    けれど、確実に未来へは進んでいく。
    そのうちに、受けた傷もいつか未来の日向にかざせばプリズムのように美しく光る、自分の糧になるのかもしれないと、ささやかに思わせてくれる温かみのある物語でした。

    簡潔だけれど柔らかな比喩や言い回しが巧い訳文が今回もとても響いてきて、この作者さんと訳者さんのコンビは絶妙だな、と思えました。

  • 利己的で自己愛の塊のような人としてイェジンの目に映っていたハンチョルも、新しい彼女とはどうやらそれなりに楽しくやってるらしい。
    誰のことも綺麗に描きすぎず、ただの悪役にもせず、市井の人々のささやかな日常として淡々と場面を進めていく感じが、最初は物足りなかったけど最終的には心地よく感じた。

  • 【この恋が永遠では無いからこそ、出逢いと別れを繰り返せ】

    ソウルで暮らす四人の男女の一年間の出逢いと別れを、四者四様の愛の形の物語。

    愛は始まるのと同時に終わりをじっと見つめなければならない。
    偶然、始まった出逢いからの恋愛は、その刹那さ故に思いがけぬきっかけで脆く壊れてしまう。
    その結果、残るのは心の傷と痛み。
    そして有り余る後悔。
    だが、そんなに傷ついても尚、人はいつの間にか別の恋愛を始めてしまう。
    その繰り返しの中で、繋がって断ち切って、人は誰かと関わって生きていく。

    そのサイクルの中に恋愛の本質が隠れているのだ。

  • 20-30代の男女のすれ違う大人の恋の物語。
    初夏の日差しのような爽やかな女の子、そんな彼女に恋われる孤独を好む男性、家族や感情を断ち切るのが苦手な女性、彼女のパン屋でアルバイトする男の子。

    劇的な物語があるわけではないけれど、作品全体の空気感が柔らかく、それでいて現実感があり、ハッピーエンドでめでたしめでたしの夢物語に終わらせないところがとても良かった。
    わたしも過去に引きづられてるのではないかな、断ち切るべきものをきちんと断ち切って前に進みたい。
    恋愛をしてる時のワクワクした気持ち、世界がキラキラして見える奇跡のような瞬間に身を浸してみたいな、って思った。

    同じ著者の「アーモンド」はあまりハマらなかったけれど、丁寧な心理描写がとても良かった。人物描写がとても上手で、引き出しの多い作家さんだなぁと感じた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。2016年、長編小説『アーモンド』で第十回チャンビ青少年文学賞を受賞。短編集に『他人の家』、長編小説に『三十の反撃』『プリズム』がある。現在、映画監督、シナリオ作家としても活躍している。

「2021年 『私のおばあちゃんへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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