- Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
- / ISBN・EAN: 9784403030154
感想・レビュー・書評
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ここに堂々の完結。始まりであり終り、円環の物語。まずは物語を聞いて、そこから音楽を聞いていたのだが、やはり音楽に圧倒される。
話の筋は相変わらずどうしようもないというか笑。あっという間にブリュンヒルデを忘れ、偽りの誓いをたて、そして滅びるジークフリート。苛烈な魂でその結末に導きながら、自身もジークフリートへの愛に殉じるブリュンヒルデ。美しい愛の死であることは変わりがない。二人は死することでようやく永きの愛を実現できる(トリスタンとイゾルデのように)「さあ、ごらんください!あなたの妻が、今おそばに!」
これはオペラで見てみたいものだ。そして崩れ去っていくワルハラ。神々はなぜ滅びる必要があったのか、私はまだその答えがつかみきれていない。これはオペラを見た時の楽しみとして取っておきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
借りたもの。
神々、人間、侏儒族、そして親子三代――種族と世代を超えて連綿と受け継がれてしまう「指環」の呪い。
その連鎖と円環が、英雄とその妻の死をもって遂に断たれ、ラインの川の三人の乙女たち、在るべき場所に還ることで浄化される。
権力欲、そしてその後ろにある「指環」を渇望する男たち――
肥大してゆく男たちの執着と傲慢を、叡智と悟性で終止符を打つのは、女たちの役だった。
そこに至るまでには、女も信じる思いが執念になり愛憎に苛まされるのだけれど……
ブリュンヒルデ、グートルーネ、ラインの三人の乙女(ヴォークリンデ、ヴェルグンデ、フロースヒルデ)たちの意思が、遂に指環を元の黄金に還元する。
その指環に絡み、築かれたワルハラは、『ラインの黄金』( http://booklog.jp/item/1/4403030106 )でのローゲの思惑通りに炎上する。
そこに神々の姿は無かったようだが、ヴォーダンはそれを見ながら何を思ったのだろうか?
己の願いの成就――指環の呪いの連鎖が解けた安堵だろうか?
破滅の安息だろうか?
それにしても、ワーグナーのオペラの中には不思議な薬が主人公らの命運を左右してしまう。
いや、ケルト・ゲルマン神話のお約束なのか……
『トリスタンとイゾルデ』の媚薬、『神々の黄昏』の忘れ薬と記憶を呼び戻す薬――
西村佑子『魔女の薬草箱』( http://booklog.jp/item/1/4635810089 )を読んだばかりなので、ドイツと魔女の使った薬について考えることが多く、気になった。