完本 乙女の港

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 96
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408107769

作品紹介・あらすじ

伝説の少女小説、完全復刻。昭和13年刊、中原淳一装丁による単行本を完全復刻した旧かな版と『少女の友』連載時の、中原淳一による挿絵を全点収録した新編集新かな版の豪華二冊組。

感想・レビュー・書評

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  • この作品の初読は、まだ小学校…うーん。4年から6年の間くらいだったか。赤いカバーのジュニア向け日本文学の全集で、タイトルは『伊豆の踊り子』だった本に併録されていた。有名だった表題作目当てで、従姉妹のお下がりのその本を、応接間と呼ばれていた従姉妹の勉強部屋で夢中になって読みふけった。なんて面白いお話か…と、この『乙女の港』を、本を献本に出し、手放してからも、ずっと忘れられずにいた。長じてこれが、叙情画家の中原淳一の挿画に飾られた、少女小説の傑作であったことを知って、淳一文庫版の同作(国書刊行会からの復刻版)を手に入れた。

    今回こちらを手にしたのは、それと初版の挿画の差を比べて見たかったことによるのだが…。復刻版の方は、国書刊行会版と同じ挿画を用いているようだ。また『薔薇の家』という短編と巻末に鹿島茂氏ほかの、興味深い作品解説が寄せられている。鹿島氏の解説を読んでいると、現在のBL小説に対しても当てはまる読解の姿勢が垣間見えて、少々興味深かった。私はむしろ、エスとはメンタリティをメインにした心模様だと思うので、後世、『マリア様がみてる』などにつながる、肉体的な関係に至る恋の、前段階の恋愛体験ではないかな、なんて思ってしまうのだけれど。

    この完本が刊行されたあと、好評を受けて文庫本も出ているようである。長らく入手が難しく、幻の名作のような感じになっていた本書。入手しやすいうちにお手にされるのも良いのではないだろうか。

  • 横浜のミッション・スクールに通う1年生の三千子は、2人の上級生から手紙を貰う。凛として大人びた美しい5年生の洋子、勝ち気な性格でやはり美しい菫の花を愛する4年生の克子。女学校の上級生と下級生が姉妹の様に仲良くなる、エスの関係を描いた小説。三千子は洋子を「お姉様」に選び、洋子と克子は敵対する。軍靴の音の鳴る前の昭和10年代の横浜を背景に、当時の女学校の行事の様子や女学生達の言葉遣い(意地悪を言う時も)がわかって興味深かった。少女が少女らしく生きていた(エスも含めて)、今はもう失われてしまった時代が羨ましい。

    • だいさん
      貴女のレビューはとてもユニークで面白いですね。
      貴女のレビューはとてもユニークで面白いですね。
      2012/07/08
  • ちょっとお高いですが、これは多くの人に読んで欲しい物語です。
    文豪・川端康成が実は乙女であったことがわかります。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「川端康成が実は乙女であったことが」
      逆かと思った「眠れる美女」を読んで。。。
      「川端康成が実は乙女であったことが」
      逆かと思った「眠れる美女」を読んで。。。
      2012/05/24
  • 清い、かわいい、麗しい、はかない、という言葉が思い浮かぶ。とても近くて、遠い昔のミッションスクールでの出来事。私の子供のころには似た雰囲気が残っていた気がする。
    中原淳一の押絵が挟まれ、とても良い雰囲気だ。その時々の場面を盛り上げている。この小説(書籍用に)かかれたもののようだが、旧版に押絵はなかったようだ。雑誌用にかかれたものであるとのこと。
    エスとは?シスターである。洋子5京子4三千子1年生。
    女学校ならではの噂とおせっかい。ご機嫌様の世界。当時で生活レベルは上流の娘達であろう。私生活はよく見えない。女学校での生活は、あるところ自由であるが、これから卒業後は家に入っていくのだろうか。前半の華やかな学校生活から、終盤のクリスマスシーン、贈り物には感動する。
    川端の女の描写は極である。

  • 「少女にこそ一流のものを。」をモットーに掲げた雑誌「少女の友」。この雑誌の黄金時代を飾った文豪川端康成の作品「乙女の港」。
    今はもう影のほとんどなくなってしまった「エス」という関係を中心に、港町の女学校のお話が展開されている。
    「エス」、シスターの頭文字をとったその関係は擬似姉妹関係を上級生と下級生が結ぶんでいること。「マリア様がみてる」での姉妹関係と似たものです。
    新装版にはこの「エス」という関係についての見解、解説がついており、またこの作品が書かれた時代背景についても書かれているので、物語の世界を読後も味わえ、お得な気分になった。また、当時の読者投稿欄も一部掲載されており、当時の少女達の息遣いを感じられる投書から、この作品が連載されたからこそ、「少女の友」は多くの少女達に愛されたのかも知れないと感じました。
    可愛いもの、綺麗なもの、美しいもの、優しいもの…そのようなものがギュッと詰まった作品です。妹獲得をめぐる、静かな戦いや、上級生への憧れのささやき声、そんな少女の時代をそっとのぞいて、心が安らぎました。マリみてが好きな方には特に気に入ってもらえるのではないでしょうか。少しタイムスリップして、学生時代を味わえる作品です。

  • 何度でも読み返して忘れないで居たい少女の心。装丁も中原淳一の素敵なイラストで眺めるのも良し。完全復刻版のほうが雰囲気も楽しめて尚良い。山手へいったばかりで家並みが思い返された。

  • (目次)

    乙女の港
    Ⅰ 花選び
    Ⅱ 牧場と赤屋敷
    Ⅲ 開かぬ門
    Ⅳ 銀色の校門
    Ⅴ 高原
    Ⅵ 秋風
    Ⅶ 新しい家
    Ⅷ 浮雲
    Ⅸ 赤十字
    Ⅹ 船出の春

    薔薇の家

  • 資料番号:011144672
    請求記号:F/カワバ

  • 本屋で見掛けた。少女の友と一緒に欲しい。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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