追憶のかけら

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408534602

作品紹介・あらすじ

戦後間もなく自殺した作家の未発表手記。そこに秘められた「謎」とは-?最愛の妻を事故で亡くした大学講師。失意の底にある彼をさらに翻弄する何者かの悪意。長編ミステリアスロマン。

感想・レビュー・書評

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  • わたし(松嶋真司)は、明城大学の国文学の講師だ。

    妻とはあることが原因で夫婦喧嘩。

    わたしが愛想を尽かされ一人娘(里菜)を連れて実家に帰ってしまった。ある日最愛の妻(咲都子)は、暴走者にはねられ帰らぬ人となってしまった。

     咲都子は、松嶋と付き合う前は人も羨むような男と交際していたが、松嶋を選び結婚した。咲都子の父親は、同大同学部の麻生教授だ。結婚を決める理由にそのことは一切関係ないと著書に書いています。

     自宅アパートの前で知らない男が待っていた。名刺には「増谷富昭」と携帯番号だけだ。

     増谷は、「先生は佐脇依彦という名をご存知ですか?」「終戦後に数本の小説を発表したことがある人物ですが」
    「佐脇の未発表原稿があるのです。それを先生にご覧いただきたいのですが」原稿は手記(五十六年前の原稿)で佐脇が命を絶つ直前に書かれたものです。なぜ佐脇が自ら命を絶ったのか、その理由が克明に綴られています」と…。未発表の原稿なら是非とも読みたいと思い原稿のコピーを預かった。

     松嶋は、学者と雖も一介の講師、安月給で働き、この手記を元に論文を発表すれば注目されるかもしれないという淡い期待を抱いて読み始めたところから物語が始まります。

     手記の信憑性を巡り原稿のコピーは、贋作だと麻生教授から指摘を受けた。しかも論文が学会で発表された後である。

    汚名返上をするため、真相究明の手掛かりを求めて松嶋は動き出した。手記に登場する人物が、今も存命だった。幸いなことに事情説明をして面会を求めると快諾してくれた。手記に書かれている人物は間違いがないといってくれた。その後手記の内容から現在の松嶋に二転・三転と畳みかけるように災厄と謎が起き始めた。以上が小説導入部分の骨子です。

     僕には、主人公がお人好しに思える。出会った人には簡単に騙され挙句の果てには、「あなたは、○○か」と罵倒される始末だ。
     慎重さが足りないと言えば、しっかりと裏付けを取るべきだが、見えない悪意の黒幕は巧妙で破滅に追い込む手口は推理が出来ない。

     松嶋に瑕疵はなく、逆恨みなら愚か者の仕業ですね。

     読書は楽しい。

  • 面白かったしこんなにワクワクして先が知りたいと思ったのは久しぶり。

    だが、手記の真相と大学講師の方の真相があまりにもつまらなくて残念でした。
    もっと他に犯人作れたやろうに…

    偶然が多すぎやし。

    だけど面白かった!

  • 妻を失くし娘を義父母に取られ上司である義父との関係悪化からキャリアまで危うくなった大学講師の元に戦後間もなく自殺した作家の未発表手記が持ち込まれ、論文に仕上げていくが…。本書のかなりの頁をこの旧仮名遣いの手記が占めており先が読めないが、作家の自殺の真相、手記に関する真相、主人公を取り巻く状況がこんがらがりながらも一本の線で繋がって行くのはさすが。

  • 面白かった~。自死した作家の手記の真相を主人公が探る~というストリーだけど、その自死した作家の手記自体も面白い。結果、この小説のストリーが面白い、そのストリーの中に出てくる手記も面白い。。で二重の面白さ。ラストまで主人公を追い詰めた人間がわからない。理由もわからない。ここに着地するんだね~と思うと新たな事実が出てきて、また振り出しに戻る。。ただ、ラストにわかる主人公を追い詰めた人間の動機が??。普通、そんな理由だけで、こんな手の込んだことしないと思う。ラストで急に現実離れした内容になってしまったのが残念。

  • 謂わゆる作中作と言うのだろうか、凝った作りの物語であるのだが話が小さい、有閑マダムが暇つぶしのため思いついた、全く見当違いな復讐劇に人のいい主人公は苦しめられる。作中に出てくる復讐が全てが八つ当たりで読んでいて気分が悪い、結局主人公が妻の愛を再確認して終わるということになるのだが、ミステリーとしてはどうなんだろう?しかし主人公は国文学の講師である訳だが、今の安倍総理は大学の人部科学をなくそうとしている、こういう物語も成立しなくなる訳で、ひたひたと軍靴は忍び寄っている。

  • 図書館で借りた本。
    大学で講師をしている松嶋の妻は、夫婦喧嘩をして実家に帰省中に事故で亡くなってしまった。
    愛娘は、そのまま妻の実家で育てられていたが、引き取って一緒に暮らしたい。そのために、経済力をつけたかった。
    そんなある日、松嶋の元へ終戦後に自殺した作家の遺書とも呼べる未発表の手記が届けられた。
    この発見の論文を書けば、高収入な職場への転職も夢じゃないと、手記について調べ始める。

  • 今年のNO1か!チョーおもしろいよ。

  • この手記だけをひたすら読みたかったけれどもそうもいかないんだろうな。
    初期の作品に較べて随分と救いを潜ませるようになった気がする。

  • 犯人にたどり着くまでの一転二転する展開にはらはらして面白かった。佐脇氏の話も読みごたえがあったし、二度お得な感じ。最後がハッピーエンドでよかった。

  • 二転三転する話に時々挫折しそうになったけれど、勢いで読了。
    最後まで読めてよかった。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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