主よ、永遠の休息を

著者 :
  • 実業之日本社
3.29
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本棚登録 : 644
感想 : 117
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408535692

感想・レビュー・書評

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  • 3.2
    読むのが辛かったですね。
    痛々しくて、、

  • 誉田さんの作品は文章に堅苦しさがなくて、いい意味で緩さがあって非常に心地いいんだけど、随所で生々しい描写を入れて物語に緊張感を与えていく緩急のつけ方が上手い。そして何より物語は必ずしもハッピーエンドで終わらないんだぞという厳しい現実を突きつけてくるのも誉田作品の特徴の一つ。その気にさせておいて最後に見事に裏切ってくれる。読み手が思う通りには物語は終わらせないぞという著者の意地か意地悪さがジワジワと伝わってくる作品。ま、この作品も決してハッピーなエンドではないって事です。

  •  休むひまもなく作品を書き続ける人気作家の本音? と思わせるような、あまりピンと来ないタイトルだが、内容は、人気作家ならではの現代的犯罪ネタを基調とし、よくこなれたクライム・ノヴェルである。

     一方で警察詰めの若手記者の視点から、もう一方で都会のコンビニに働く地味目な若い女性の視点から、どちらも得意の一人称を駆使して物語を綴ってゆく。

     深夜のコンビニ強盗捕獲事件をきっかけに、この作品の重要な登場人物たちは出逢い始める。もちろんその偶然を理解するのは、本人たちも、読者の側も、ずっと後になってからのことなのだけれど。

     次第に明らかにされるのは、過去に起こった幼女殺害事件の真実である。その際の容疑者(山ほどのビデオを集める猟奇殺人鬼として宮崎事件を一部モデルにしているようだ)は、心神耗弱を理由に無罪となっており、今また牙を剥こうとしている。

     一方、事件当時の容疑者によって録画されていた幼女暴行の映像が、裏ネットで流されているとの噂が流れ、その供給元である組事務所は、謎の侵入者により荒らされる。

     そうした不穏な空気の中、主人公の女性は心身の不調に悩まされる。途切れている幼女時代の記憶。事件では被害者となった親友の薄れた記憶。突然の、恐怖と吐き気の発作にたびたび見舞われる彼女の真実とは?

     二人の主人公が、徐々に距離を縮めて接近し一つの物語の真実に向けて収斂してゆく経緯こそが、この作品の読みどころである。恋愛小説的流れに重なる暗いサスペンスフルな宿命が痛々しい。

     誉田流サイコ・サスペンスの容赦なさは、本編でも十分に描かれる。類型的な犯罪者よりも、どちらかと言えば、被害者やその家族の側が受ける、逃れようのない悲劇を描き切った重厚な後味の作品であると思う。

  • みなさまのレビューにあるとおり。後味悪く、何も救いのないお話。…なのかもしれないけど、わたしはそんな誉田さんのお話が好きだったりします。別に、全てのお話に救いを求めなくても良いでしょう。むしろ、桐江にとってはこの結末が救いだったんじゃないのかな、というのは可哀相すぎるかな。タイトルも、誰に向けてかは読み手の解釈なんだろうけど、わたしは、桐江に対してなのかなあ、なんて考えてました。確かに、こんな犯人に対しては気持ち悪さ、憎悪、狂気しか感じられない。殺してやりたいって思うかも知れない。悪いのは全部この稲垣満という男だし、桐江にはもっと楽しいことや幸せを沢山感じて生きていって欲しいと思うけど、でも、稲垣満が傷つけたものは、桐江の身体と心だけじゃない。もっと深くて、深くて。治らない、傷。そんなものを残された桐江に、これからも頑張って生きろなんて、わたしは言えないや。死ぬことが正解だったのか、生きることが正解だったのか、分からない。だけど、こういう事件を目にし、関わった者たちは、忘れちゃいけないんじゃないか。こうやって死んでいった子がいるんだってこと。絶対忘れないで、一生、犯人を赦さない。それがやるべきことなんじゃないか。そんなことを読了後、考えました。

  • 池袋警察署の記者クラブに詰める鶴田。
    コンビニ強盗現場に、たまたま居合わせ、犯人逮捕をスクープ。バイト店員の芳賀桐江と知り合う。
    逮捕に協力して立ち去った男から強盗の件ではなく、暴力団事務所が襲われなかったか何度も聞かれる。
    事実を確認する過程で鶴田は、14年前の女児誘拐殺人事件の実録映像がネット上で配信されていたらしいことを突き止める。犯人は殺害を自供したが、精神鑑定によって無罪となっていた。

    実在の事件、宮崎勤のものを題材にしている。宮崎勤は死刑になっているはずだが…
    被害を受けた少女たちのことを考えると、たまらない。

    桐江は、付き合っている彼氏と性的なことが、うまく行かない。いろいろなことで、貧血をおこし倒れる。
    それは、桐江の幼い頃の経験に蓋をしていた、そのことにより起こることだった。父親が、愛する娘のため、何もなかったことにしていたはず、なのに当の娘は、心の何処かで苦しく引っかかるものがある…
    幼い頃の事件の稲垣は、成人した桐江に再び接近し、誘拐、再度あの時と同じ自分の部屋に連れて行く。
    ここで、かわいそうに桐江は、過去の事件の細部を思い出してしまう。そして自死する。
    これが、まさに
    「主よ、永遠の休息を」

    小説だとわかっていても、読んでいて辛いもので、気持ちが元気でない人にはおすすめできません。

    でも、誉田氏はこの題材から、よくこの話を完成させられることができた、と流石の筆力を感じた。
    御本人も書いていて、辛かったのでは、と要らない心配までしてしまう。

  • なんとも悲しい話。
    14年前の捜査、いい加減過ぎないか?

  • 読み始めて3分の2くらいで、殆どの伏線が回収され、悲劇しか待っていないことが予見される。でも、読んでしまう。

    誰も幸せにならない、救いのない終結ではあるが、せめて、桐江が安らかな休息を得られることを。

  • 誉田作品の中でも、かなり後味の悪い作品でした。誉田さんの作品って、必ず人が死んだりするんですが、結構、筋は通った死が多いので読んでいても、そこまで違和感がないんですが、本作は読み進むうちに、いってほしくない方へどんどん行っちゃう感じで、終章を読んでいても・・・。記憶の彼方にあるミヤザキツトムの映像がヨギッタ( -_-)

  • あぁ、なんということ。自分の娘だったらなおさら。
    子どもだったとしても事実を明らかにしておけば、こんなに苦しむことはなかったのでは? 覆い隠そうとするとどこかにひずみが生じるもの。

  • 救いもないし、バッドエンドだし、でも読んでしまう。。。
    それはそれで書く力なんだろうけど、ちょっとえぐいですよね。。。
    昔の事件を下書きに、そしてそれをこの作者ならではで消化した結果、なんだろうけど。。。後味きついっすね。。

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著者プロフィール

誉田哲也
1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞、03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。主なシリーズとして、『ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲ』に始まり『国境事変』『ハング』『歌舞伎町セブン』『歌舞伎町ダムド』『ノワール 硝子の太陽』と続く〈ジウ〉サーガ、『ストロベリーナイト』から『ルージュ 硝子の太陽』まで続く〈姫川玲子〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『ドルチェ』など〈魚住久江〉シリーズ等があり、映像化作品も多い。

「2023年 『ジウX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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