バスを待つ男

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 121
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536996

作品紹介・あらすじ

トラベルミステリーの新機軸!無趣味の元刑事がみつけた道楽は、バスの旅。シルバーパスを利用して東京の各地を巡りながら、謎と事件を追う。バス停で何かを待つ男、神社の狐の前掛けの意味、和菓子屋に通う謎の外国人、殺人鬼が逃げた理由、ミステリー作家の死の真相…。解決するのは、家で待つ麗しき妻!?謎解きの面白さと旅の魅力が融合した、大人のための"散歩ミステリー"。ゆっくり味わいたい、心にしみる一作。

感想・レビュー・書評

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  • 元刑事の男が定年退職後の暇つぶしをあれこれと試してみた結果辿り着いたのは、シルバーパスを使っての都内の路線バスの旅。
    日帰りで今まで捜査で訪れたことのある場所、逆に近場でありながら行ったことのない場所をあれこれと巡っていく中で、様々な事件に遭遇したり相談を受けたりするという連作短編集。

    謎そのものは大きな事件というよりは日常系。
    バスに乗らないのにバスを待つおじさんや、お稲荷さんの子狐像だけに白い前掛けが着けられる理由や、日系三世の旅行者が日本人の祖母の過去探しに付き合ったりとか。

    しかも謎解きをするのが元刑事の主人公ではなく、ミステリー好きな奥様であり、主人公の話を聞く中でひらめいてしまうという、いわゆる安楽椅子探偵スタイルを採っている。


    設定はなかなか面白いのだが、色々残念なところもある。
    まず奥様の言葉遣いがやたらお上品で古臭い。最近の60代の方はもっと若々しいだろう。
    それにやたら主人公であるご主人を持ち上げ、自分は謙遜するのが鼻につく。気にし過ぎかもしれないが、見方によっては仮面夫婦みたいに感じてしまう。
    それから奥様のひらめきもかなり強引な感じがする。

    ただ全体的には穏やかで前向きな話が多いので、安心して読めた。
    また東京都は縁のない私なのでバスの路線についてあれこれと書かれている部分については思わず斜め読みしてしまったが、私でも知っているような有名な地名の由来や歴史については興味深いものもあった。
    時折挟んでくる落語のストーリーも面白い。

    エピローグで主人公夫婦が抱える過去の傷と向き合うシーン。
    ここで初めて奥様の、取り繕っていない本心というか素の部分が見えてちょっとホッとした。
    スーパー料理主婦、スーパー探偵主婦だけではなかった。

  • 定年退職した元警察官が、暇潰しにはじめた、気ままな都内のバス巡り。
    そこで、見かけたささいな謎を、奥さんが華麗に解いていく、というもの。
    とっつきやすいストーリーで、小さな謎が解決されていくという趣向も、目新しくはないけど、かなり強引な推理だったりもするけど、まぁまぁ安定におもしろい。

    けれど、この作品に関して問いただしたいのは、なぜ編集者はこのままの文章を採用したのか?ということ。
    こんな言葉遣いの奥さん、今時いますか…?「○○ですわ」って、何時代の人なの…夫に対してどこまでもへりくだり、あくまでも夫を奉る…、何時代なんだ。
    そして一見優しい夫のように見えて、奥さんが下にいることになんの疑問もない夫。
    無理。
    これが昭和に発刊された本ならまだしも、2017年初出ですよ…かなり時代錯誤を感じる一冊。

  • 定年退職し再就職もリタイアした男性が、シルバーパスを使って都内のバス乗りを趣味にしていく。

    バスの旅を楽しみながら、日常の小さな問題や、勤めていた時代の心残りだった事件を解決していく。

    こういう謎解きものって若い女性が主人公の場合が多いように思いましたが、老年の男性たちの旅もなかなか面白かったです。(実際に謎を解くのは出来た奥さんなのですが)

  • 前半のエピソードは人の行動についての謎を地理を絡めて解決する内容なので楽しめた。後半は歴史が入ってきてちょっと苦手。バスミステリーのようなものになれば面白いと思った。

  • 連作短編集。
    警視庁を定年退職した元刑事。在職中は仕事一筋でこれといった趣味もなかったが、妻に薦められ東京都シルバーパスを使用し、バスでの都内散策を始める。行く先々で出会った奇妙な謎を、家に帰り妻に話すと・・・
    元刑事が主人公だが、血なまぐさい事件ではなく、心温まるような話。しかし、実の父もそうだが、妻が家で教室をやる日は外に出かけなくてはならないとは(苦笑)

  • 70歳になり、仕事を辞めて、やることがなくなった元刑事が、「東京都シルバーパス」を使って、路線バスで旅をする中で出会う日常の謎を解決していく連作短編集。いわゆる「日常の謎」ものだけど、実際にはバスに乗っていて、不思議に思ったことを元刑事が妻に話して、妻が解決しているので、「安楽椅子」ものでもある。謎自体は、そんなに難しいものではないけど、自分も路線バスが好きで、「シルバーパス」は持っていないものの、「どうしたら、路線バスだけで目的地まで行けるか?」と言うことを日常的にやっていただけに、出てくる路線もほぼ利用したことがあり、見える景色やそれにまつわるうんちくなど、「そうそう!」とか「へぇ」とか思わず声に出してしまうほど。主人公が住んでいるのが、錦糸町と言う設定なので、ほとんどが都バスの系図だが、ぜひ、シリーズ化して、他のバスにもたくさん乗って欲しい!

  •  路線バスを題材とした、トラベルミステリー連作集。
     元刑事が定年退職後に見つけた趣味は、シルバーパスを利用した東京散策。
     かつて捜査で訪れた場所を巡りながら、日常に潜むささやかな不思議や、過去の未解決事件を解き明かす。
     バスの経路や位置関係が詳細に解説されており、推理物としてだけでなく、街の散歩録としても楽しめる。
     気ままに路線バスに乗ってみたくなる佳作。

  • 主人公は警視庁を定年退職した無趣味で暇を持て余す元捜査一課刑事。妻に勧められバスでの都内散歩を始め、同好の士もできる中、ゆく先々で奇妙な謎に出会うが、持ち帰ったその謎を解くのは妻という設定。
    基本的に血生臭い事件はなく、謎と言っても犯罪とは関わりのないもの。登場人物も全てが善人。凄惨な事件を扱ったミステリが多い中、久々に後味の良い小説に出会った。

  • 警視庁を定年退職して既に10年。妻の毎週水曜日の料理教室の間時間をつぶすために東京都シルバーパスを使って行き先も決めずバスであちこち回ることにした。最寄りの錦糸町からバスに乗り、その日見た景色や出来事を妻に話すとー

    ◆安楽椅子探偵は料理上手なおばあちゃん♪正直、そこからそういう結論導くのはいささか強引(笑)って思うような無理やりな謎解きなんで、謎解き自体は置いといて(笑)錦糸町から亀戸、王子、青梅、多摩に土地勘ある人ならちょっと行ってみたくなるバス旅。

    バス仲間になった吉住さんも奥さんも落語とか歴史とか詳しくて、そういうの知った上で今も現存するお店とか道とか見るのはとても楽しいと思う♪

    私は通学してた品川、ツーリングで行く青梅、旦那はんの通勤圏がまさに錦糸町バスターミナルに定期買うのに付き合って亀戸天神やスカイツリーまで歩いたり、王子は飛鳥山公園のアスカルゴを電車から見かけて初めて知ってわざわざ行ったりしたことあるから読んでてとても楽しかった♪「王子の狐」は知らなかったー、また行ってみたい-♪

  • 初読み作家さん。定年後の元刑事がフリーパスを使って路線バスで徘徊しながら日常の謎を解く。奥さんの「○○ですわ」の口調が違和感。サザエさんに出てくる人みたい。

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著者プロフィール

1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。労働省(現厚生労働省)勤務後、フリーライターに転身。96年、『ビンゴ BINGO』で小説家デビュー。『劫火』『残火』で2005年と10年に日本冒険小説協会大賞(第24回、29回)、『地の底のヤマ』で11年に第33回吉川英治文学新人賞と第30回日本冒険小説協会大賞を受賞。14年、筑豊ヤクザ抗争を描いた『ヤマの疾風』で第16回大藪春彦賞受賞。他の著書に『光陰の刃』『最果ての街』『目撃』『激震』などがある。本作は『バスを待つ男』に続くシリーズ第二弾。最新刊は、シリーズ第三弾の単行本『バスに集う人々』。

「2023年 『バスへ誘う男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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