映画にまつわるXについて2 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408556147

作品紹介・あらすじ

監督も俳優も丸裸!
一本の映画が出来上がるまでの「すべて」

原作として執筆した小説『永い言い訳』を自ら脚本化。
オーディションを行い、配役を決定して、撮影開始。

オリジナルの音楽を作り、百戦錬磨の映画職人たちを束ね、

俳優たちの自意識に翻弄され(主演・本木雅弘氏のメールを収載。必見! )
公開前には宣伝活動に精を出す……。

才気あふれる映画監督が作品制作に費やした、
かけがえのない日々を克明に綴り、
スクリーンの向こう側にある、濃密な〝人生〟を描き出す、
愛と覚悟に満ちたエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 今回も面白かった。
    主に『永い言い訳』を執筆、撮影している期間にまつわるエッセイ。監督ご自身の煩悶や撮影現場のドタバタも楽しみつつ何よりそんなメール、晒していいんですか?!という感じの本だった(読んでのお楽しみ)裏側の覗き見はいつも楽しい。


    西川美和氏、小説はたぶん全作読んでてとても好きな作家なのだけど映画の方はなぜか『ゆれる』しか観てない、『永い言い訳』も小説は読んだけどそういえば映画観てない
    でも西川美和のすごさはわたしにとっては文章なんだよ、なんだよその圧倒的な描写力は どんな目で世界見てるんだ本当にまじで

  • とにかく映画「ゆれる」のプロダクションノートが読みたくて。個人的にもう何回見たことか、な映画だったので、クランクインまでの苦闘、キャストのこと、撮影のこと、読むことができて収穫だった。◆生きることだけが、大事である、ということ。たったこれだけのことが、わかっていない。(坂口安吾「不良少年とキリスト」)p.242◆(是枝監督は)「「描く」ということは、観ることも、撮ることも、書くことも、その中には必ず暴力性を含み、そして僕たち描き手は自分の目的の為にしばしばその凶暴性を野放しにしてしまうのだと言った。」p.211◆映画は言葉を尽くした散文よりも、行間から様々に想像を巡らす詩や俳句に似ていると、私は思う。p.49

  • 西川美和のエッセイは面白い。

  • この本も、前作に続いて映画作りにまつわる色々なことと、プラスアルファ短編小説と全く別な形のエッセイ。時期的には「永い言い訳」を着想し、制作している時期が多いようだ。「永い言い訳」は本木雅弘さんが主演で、モッくんはNHKの「坂の上の雲」で秋山真之を演じてめちゃくちゃ好きになったのだけど、意外にめんどくさい性格で、この映画の主人公幸夫と本当に同じみたい。でも、このエッセイを読んで、西川監督のこだわりも思った以上に凄くて、なかなかご一緒するのは難しそうな感じがしました。それは仕事の面でも、仮にプライベートな知り合いであっても・・・そういうこだわりがあるから、着想が生まれて、こだわりのある作品が作れるのだろうけど、身近にいたら一言で言うとめんどくさいかな。
    一番の違いは、我々は効率を優先しがちで、100点を取ることではなく、どうやって効率的に合格点の60点を取るかという思考をしがちで、かつ行動は真にそのもの。でも、一本の作品に何年もかけて、手作りで作品を作る人たちはやっぱり妥協を許さない。何が違うのか説明できなくても、違うものは違う。「こんなもんでいいか」がない。そして、その分私生活は意外にルーズそう。なかなかこういう人達とは生きている世界が違うなと、何かそんなことばかりを感じてしまいました。
    ・ものを作るのに、必要なものは何か。アイデア、情熱、才能、自信、金、愛情、怒り、希望、欲望、羨望、人望、その他各種色々だろうけれど、〈孤独は、人のふるさとだ〉と言った 坂口安吾 のことばの通り、さびしさに身を沈め、じっと孤独と詰める瞬間がなければ、作り手の中の鬼は物語で踊らない。
    ・映画は俳優本人の根っこにあるものを映し出してしまう。嫌な人間を演じる俳優は、根っこのところではやっぱり『良い人』でないと、観客には愛されない。
    ・心に誰かを宿すことで、人は心強さを得ると同時に守りの姿勢が芽生え、迷い、心に波風が立ち、そして何より孤独でいることに耐えられなくなる。

  • 前作も素晴らしかったですが、こちらもやはり、紛れもなく素晴らしいですね。前作が、映画で言うと「ゆれる」「ディア・ドクター」「夢売るふたり」の時期のエッセイだとしたら、こっちは「永い言い訳」の時期のエッセイ。

    「あの映画を撮っていた時、西川さんはこんなことを考えていたのか!」という思いが感じられますし、映画に関しての裏話的な話も沢山聞けますし、ましてや西川さんご自身の「映画とは、なんなんだろうなあ?」という様々な気持ちを垣間見ることができる。うーむ。まさに、映画人としての西川美和に興味があるかたなら、抜群に楽しめると思います。で、ワタクシは、映画人・西川美和に途轍もなく興味がある。ということは、ハッキリ言って最高の一冊ですなあ、って感じ。

    メインエッセイ記事ともいうべき「映画にまつわるxについて」は、一コラムごとの文章量が、前作よりも増えている気がします。多分、ですが。増えてなかったらゴメンです、ワタクシの勘違いです。で、ま、増えてる分、読みごたえもガッツリ増し。

    それにしてもホンマに、西川さんは、自分の気持ちを誰かに伝えることが、映像で伝えるにしろ文章で伝えるにしろ、なんでこんなに見事に的確に上手いのかしら。西川さんの映像は、文章は、ホンマのホンマに「腑に落ちる」んですよね。「ああ。わかる。わかります。あなたの気持ち、間違いなく、僕は、わかります(と勝手に思った気持ちです)」とね、感じさせてくれるんだよなあ~。

    個人的には「永い言い訳」の主演である、モックン、こと、本木雅弘さんと西川監督とのメールのやりとりが、爆笑モノでした。モックン、、、凄い。色々な意味で、凄すぎるよ。いやあ。モックン、、、ホンマに凄いぞ。

  • 記録。

  • 時期的には著者監督作品の「永い言い訳」のシナリオ執筆から製作までを追ったドキュメンタリーのような監督の映画に対する濃密な時間の断片が垣間見れる。特に、主演の本木雅弘とのメールのやり取りなど、あまり知り得ない舞台裏は楽しめた。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

西川美和の作品

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