僕ならこう読む (青春新書インテリジェンス)

著者 :
  • 青春出版社
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本棚登録 : 95
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413045087

作品紹介・あらすじ

「小説を読むことは、読書力をつける最短コースである」──。『羊と鋼の森』、『火花』、『沈黙』、『堕落論』など、話題のベストセラーや名作の読み解きを通して、佐藤流の“小説を深く読む技術”を大公開。優れた本には現代社会の潮流や普遍的な人間心理など、さまざまな意味が内包されていることがわかります。そして、読書でいくつもの人生を仮想体験すれば、この混迷の時代を生き抜く力になります!

感想・レビュー・書評

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  • ここの紹介されている12冊の小説のうち、
    『火花』はもちろん読んだし
    『伊藤君AtoZ』『ニューカルマ』は佐藤さんの他の本で知って読みました。
    『異類婚姻譚』『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は予め読んでおきました。

    「第3章信念を貫く生き方について」の『沈黙』『塩狩峠』の二冊は
    本を手に取って、挫折。
    だってこの二冊を読んでいては、
    『僕ならこう読む』が期限内に終わらないと思ったから。
    でもこの第3章が自分にとって一番心に響く内容でした。

    「戦後、日本人は三つの原理に立脚していると考えられます。
    一つが「生命至上主義」。命より大切なものはないという考え方です。
    二つ目が、物事を合理的に捉え行動するという「合理主義」。
    三つめが、個性や個人の生き方を尊重し、集団や組織の論理で個を犠牲にする生き方をよしとしない「個人主義」です。」

    こんなことは私たちにとってあまりに当たり前すぎて考えたことなかったけど、確かに戦前戦中は全く別の価値観で生きていたのです。
    今ISが理念と理想のために戦っているのは、まさにこの三つから反する行動原理ですが、
    日本だってほんの70年前は同じような状態を経験しているのですから、
    時代と状況によって人間の意識や考え方が劇的に転換するということが私たちは理解できます。

    『沈黙』は江戸初期の長崎を舞台にした作品で、まさに譲れないもの、人間にとっての信念とは何かを問いかける名作。
    『塩狩峠』は、信念を貫くことと、自己犠牲について考えさせられる名作。
    どちらも実話を基にしています。
    だから心に鋭く突き刺さってくるのです。自分ならどうするだろうと。

    読みながらあれこれ考えさせられましたが、
    結論として、今の私にできること。

    「たとえば日ごろの生活や仕事で、ちょっと自分が損することを実践してみるのです。
    仕事を一緒にするときに自分が仕事を多めに負う。
    宴会の幹事や飲み会の企画など人がやりたがらない仕事をやる。
    直接利益にならないことでも淡々と引き受ける。
    部下と飲むときはときに気前よくおごるー。
    日々の生活や仕事の中で、ささやかな自己犠牲を発揮する場面は実はたくさんあります。
    でも、面倒なことや損することはだれでもイヤなので、実際にやろうと思うと腰が引けてしまいます。
    しかし、私たちの周りを見回すと、そういうものを積み上げている人がいるはずです。
    そういう人には不思議な存在感があることが多いものです。
    周囲も一目置いているし、何かあったら相談したい、この人なら信用できる、などの雰囲気を漂わせています。
    逆に、口がうまくて調子がいいものの、結局のところ自分の都合や利害を最優先して仕事をする人がいる。
    そういう人は、周囲からそれなりの評価しか得られません。
    小さな自己犠牲の種を、自分の周りにどれだけまくことができるか。
    『一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん』
    作中の聖書の言葉が印象的です。
    一粒の麦は地に落ちて、そこから芽が出て実を結ぶ。
    一粒の麦としての存在は終わってしまうけれど、だからこそ多くの麦に変容するのです。
    自己犠牲こそが、最も豊かなものを生み出し得る。
    そこには前に触れた「生命至上主義」「合理主義」「個人主義」の原則は必ずしも存在しません。
    私たちの日々の生活においては、この三つの原則を基本としながらも、
    ときにそれを超えたところで大きな価値が生まれることがある。
    そのことを心にとどめておくだけで、人生や周囲が変わって見えてくるかもしれません」

    私事ですが、何年もかかえている問題があって
    後半三年間解決すべく中心となって頑張ってきたのですが、
    絶望して一年前、仲間を置いて離れてしまったのです。
    「信念を貫きとおすことは本当に良いことなのか?」
    未だにそのことが頭から離れる日はなくて、自分なりに悩んでいたのです。

    でもついに!一昨日突然光が見えてきたのです!
    私の仲間は、まさに上に書いてきたような自己犠牲の人たち。
    昨日久しぶりに彼らにメールしました。
    もしかしたらその件で私は自己犠牲して忙しくなるかもしれない。
    希望が見えてきて嬉しかったので、ここに書いておきます。

  • 佐藤優による小説の深読み術。小説を読み、今という時代を理解し、自分が置かれた状況を正確に知ることはとても重要。「火花」「異類婚姻譚」は他者とのコミュニケーションについて。「腑抜けども悲しみの愛を見せろ」「伊藤くんA to E」は愛することについて。「沈黙」「塩狩峠」は信念を貫く生き方について。「真空地帯」「ニューカルマ」は組織の怖さと残酷さについて。「首飾り」「堕落論」は現実を見つめる力について。「私という運命について」「羊と鋼の森」は運命と選択について。いずれも素晴らしい書評にもなっている。

    自分の居場所をネットに求め、内にこもることが容易な時代。リアルな関係がますます希薄になっている。それが人生を豊かにするとは思わない。「火花」はさまざまなテーマが複層的に重なり合っている。多義的。良い作品とは読み手によってさまざまな読み方・解釈が可能な傑作。作品が勝手に評価され、新たな価値を生み出して行く。マジョリティとマイノリティの断絶。多数派には少数派の気持ちがわからない。多数派の傲慢さは今の日本社会に蔓延している。例えば沖縄の普天間基地の辺野古移設問題。「異類婚姻譚」は各個人がバラバラなまま引きこもり、自分の世界でしか生きられない現代人の病理をえぐった傑作互いに深入りしない夫婦関係。歪んだ自己愛。自分の意識の中に他者の存在がない。

    自己愛性パーソナリティ障害者(根拠のない自信家)は自分を特別な人間だと思い込むが、その裏側(無意識下)には自己評価の低さがある。そして自分の自己像を否定する相手には手段を選ばず激しく抵抗する大きな赤ん坊。極力近づかない方が良い。本来の自己愛とはあるがままの自分を受け入れ認めること。今の自分に足りない能力があればそれを客観的に認識し、足りていない自分を否定しない。

    情報を持つということは組織で生き延びるための大きな力になる。戦略的に意識して動くことが必要。

    スポーツで不自然なくらい熱狂するのは、普段得られない達成感やカタルシスをアスリートに託して昇華しようとしているのでは。強い日本を求め軍事力を強化するのも、脆弱な自らの存在や自我を埋め合わせ、あたかも自分が強くなったような錯覚に陥るもの。自己欺瞞。

    弱くて脆い自分、ダメなじぶんを否定せず、本当の自分の姿を見極めることがすくいになる。生きて行くことは決して綺麗事だけでは済まされない。人間は堕落するもの。

    ところが、日本は敗戦を終戦と言い換え、負けを誤魔化しながら戦後を始めた。自己欺瞞のツケは、この国の政治、官僚、国民に託された。その結果が誤魔化しの連鎖である。

    自己を正しく認識するのは難しい。勝ちたい気持ちが負けを認めない。空虚な自我を認めたくないから権威にすがる。見栄や体裁にこだわる。芸能人の不倫をヒステリックに騒ぎ立てるのも見たくない自己像を他人に投影し非難する。

  • 難しい本には二つの種類がある。第一は、読んんでも意味のない難しい本だ。
    第二は、読む価値があるが、そのための準備が必要とされる本だ。

  • 読書感想文的な一冊。

  • 本書の中で取り上げられている小説の登場人物への洞察が深く、「ああ、これはあの人に当てはまるなあ」と私の周りにいる人たちを想像しながら読めました。紹介されている小説で何冊か読んでみたいと思うものがあったので、順番に読んでみようと思います。

  • 解釈の基礎となる知識の深さ。

  •  昨今の小説から、時代・現代・思想・生き方を、著者なりに腑分けしていく書である。
     面白くないわけではないが、しかし、今は詳読スタイルで読まずとも良かろう。

  • 自分や時代を考える名著を紹介
    根本には、世の中には様々な価値観があり、多様な価値観を認めることに自身の成熟があるといいう考えがあるように思う。
    その上で、名著には時代を生き抜く武器となる考え方価値観を読み取ることができ、著者ならこのように読み解く、このようなことを学んだと話す本

  • 虚構としての小説を読むということの意味を,他者の視点の獲得にこそあると説く.年齢によって意義は変化してくるが,本書の想定している読者層を考えると,その意義に強く同意する.殺伐とした現代の創成は本離れに一因があることは間違いないだろう.

  • しっかり読み込んでいるなぁ。こんな風な読み方ができるようになりたい。

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プロフィール

1960年生まれ。作家。元外務省主任分析官。著書に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』『自壊する帝国』『獄中記』ほか多数。

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