相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方 (青春新書インテリジェンス PI 659)
- 青春出版社 (2022年10月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784413046596
作品紹介・あらすじ
相続専門税理士として、長年多くの相続を間近で見てきた著者は、2つの「相続格差」があるという。1つは、現金や不動産など、財産の分け方の不平等による格差、もう1つは相続によって幸せになったか、モメて不満が残ったかによる格差だ。この2つの相続格差を乗り越えるにはどうしたらいいのか。モメない、ソンしない分け方のコツや、円満相続の秘訣となる考え方を伝授する。前野隆司慶應義塾大学教授との特別対談「『一番大切な財産』に気づく幸福学」も収録。
感想・レビュー・書評
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・相続格差とは金額の大小ではなく「あいつばかりずるい」という感情の問題。
・「より多くもらう」ことにこだわると、得た金銭以上の労力が必要になったり、遺された家族の結びつきが失われたりと却ってマイナスになる。
・相続とは金銭や資産だけでなく、亡くなった人の想いや意志を受け継ぐことでもある。見える物ばかりでなく、見えない物を意識できる家族は揉めない。
相続専門の税理士ということもあり、プロとしてどのようなケースを見てきたか、相続に対しどのような心構えで臨めばいいかについて分かりやすくまとまっていた。
自己啓発に近い内容なので、法的な知識を期待する人は専門書を読んだ方が良いと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
税理士による相続の本。
「相続格差」とは何だろうと思ったのが、本書を読むきっかけ。
これは著者によると、以下の2つの格差を指す。
①財産の分け方の不平等による「お金の相続格差」
②相続で不満が残ったか、幸せになったかによる「心の相続格差」
そして本書がスポットを当てているのは、意外にも②の方。
私は、相続で発生する格差をどのように技術的、法的に改善していくのか、その手法が知れると思い本書を手にしたのだが、その期待は裏切られた。
このように本書は私が当初期待した内容とは違っていたが、全く役立たないかと言えば、もちろんそんなことはない。
まずは、本書でどんなことが言われているか、簡単にまとめてみよう。
①法定相続分とは、正確に言うと、相続人の間で行われる遺産分割協議がまとまらなかったとき、裁判所が仕方なしに「最終的にこうするしかない」と決める目安
②夫婦と子ども2人の家庭で、夫がまず最初に亡くなった場合(一時相続)、「妻と子で相続した方が節税になる(二次相続対策)」というのは、相続の公平性や節税の面からいえばそうかもしれないが、人間関係や家族の平穏を考えるのなら、この場合、「すべての財産は妻が相続した方がよい」というのが正解です
節税テクニックにおける「常識」が、実は人間関係では「非常識」である場合も少なくありません
③「勘定(お金)」より「感情(心)」でもめることがほとんど
④もめない相続のために今すぐできるのは、考え方をプラスにすることです
財産をいきなり増やすのは不可能ですが、考え方を(プラス思考に)かえることはできます
⑤親が認知症になる前にできることで、一番効果的でかつ差し障りがないのが、親に「何か億劫なことある?」と聞くこと。「うん」といわれたら、それが大きなきっかけとなる。
⑥相続でもめそうになったら、早めの手当として、”仮想敵国(=税務署)”を作ること
→「モメると得をするのは税務署ですよ」と聞けば、誰だってわざわざ余分な税金を払うのは、ばばかしいと思うでしょう(相続開始から10ヶ月過ぎても申告をしないと、無申告加算税が、相続税の支払いが遅れると遅延税が課せられる。小規模宅地の評価減、配偶者税額軽減も分割協議が終了していないと利用できない)
⑦父母と同居している兄弟から父母について状況報告の連絡(LINEなど)があったときは、短くてもいいので、「お疲れ様」「ありがとう」「来週の土曜にに行くね」といった返信をすることをおすすめします
⑧考え方が変われば、人生が変わる
稲盛和夫氏の「人生成功の方程式」は、”人生・仕事の結果=考え方☓熱意☓能力”で表すことができ、「熱意」と「能力」は0~100点であるのに対して、「考え方」はマイナス100点からプラス100点の範囲だというのです。
つまり、いくら熱意と能力があっても、考え方がマイナスになると人生はマイナスになってしまうと言うことです
①は法律上の権利をいたずらに行使しようとすることを戒める言葉であり、同様に遺留分の主張などもよく考えた方がいいという。
②は正直驚いたが、勘定より感情を優先する立場からは肯定されるのであろう。
④⑧は本書を貫く考え方。
⑤~⑦は、「心」を大切にする著者が、実際に相続の現場で体得された経験則に基づく実感と思われ、私も参考にしたいと思った
このように本書を振り返ると、私の当初の期待とは内容が異なってはいたが、相続を迎える者の心持ちを説いた本としては十分参考になる内容だったといえる。 -
月島にあるアレンジ強めのもんじゃ焼きみたいな一冊。ハウツー本にしてはちと思想強めかな。王道をまずガツンと学びたい人にとっては「そういうんじゃないんよ」ってなりそう。相続とはこういうもんですという情報提供パートと、私はこういう考え方(前向き人生!)でこれまでやってきていますという啓発パートがそれぞれ半々ぐらいか。
まぁなんつーか確かに学べるんだけどほんとさわりだけって感じで、コスパはそんな良くない気がする。ていうか、これで970円?えっ?本って値上がりしました?えっ?パルプ?インク代?著者のフィー?出版元のフィー?えっ本って高級品なんですね……ってバーコード読み取るときになった。200頁で1000円。見開き2頁で10円……高くない?目減りさせないとガッツリ贈与税いかれるほどの資産、まだないんですけど?おぉん?
本の内容がより求められる時代になりましたな。 -
借り物で読んだ。
格差などと言うたいそうな書名だが、中身は薄め。
アドラー関係の引用はいらない。どこかに書いてある名言の寄せ集めみたいな感じもしないではない。
今までの経験によるリアル具体的な事例を紹介するだけにしとけばよかったのに。 -
夫が亡くなり妻が相続する一次相続が(筆者の税理士事務所では)80%を超えるというのが、当たり前だけどそんなに多いのか!という印象。女性はより相続に関して勉強しておく必要があるのではないかと思った。
相続というと金のことになりがちだけど、人脈とか人間関係というそういう非金銭的なものもすごく大切、という件にとても納得というか共感した。