対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD:問題と障害の正しい理解から対処法、接し方のポイントまで

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422114651

作品紹介・あらすじ

ふつうの「傷つき」とは異なるトラウマがあなたにもたらす苦しみ-今度こそ自由になるための向き合い方・受け止め方。

感想・レビュー・書評

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  • 「トラウマ」という言葉を使うこと自体が、「被害者」の轍に拘泥され、一生抜け出せないような気がして今まで手に取らずに来たが、水島さんのとても丁寧で分かりやすい説明で光が見えた気がする。

    PTSD,とくに主に親の虐待に由来する複雑性PTSDの症状に関しては、感覚的で言語化することが難しいものについて、「これです!」と溜飲が下がる解説がいくつもなされ、読んでよかった良著だ。

    私は、心に大きな傷を負い、助けてくれる人、理解してくれる人もなかなか見つからないなか、他人の顔色を読むことで生き延びてきたと思う。

    この人ならば分かってくれるかもという人に打ち明けても、傷を深めるだけで、孤立はさらに悪化。一人で抱え込み、仕舞には自分の感覚や記憶すら疑い、無力感と絶望感だけが残った。

    親もきょうだいも精神疾患と発達・パーソナリティの問題を抱えて長年、私は振り回され、身元引受のような立場を担ってきた。

    怒りや攻撃のターゲットにされる役割を私はもう返上しようと思う。

    過去の出来事や傷はなくなることはないけれども、被害者という立場から離れ、自分の感覚に耳を傾け、小さなことでも自分の判断や選択を大事にするということの心地よさを少しずつ味わい始めている。

    身近な家族や知人、専門家の力を借りながら、フラッシュバックや体の苦痛とも上手く付き合い、改善していけたらなあ。

  •  星5つの理由は、比較検討できるほど同一ジャンルの本をよく読んでいないので、
    ・情報の偏向や、読者を(治療目的以外での)操作をするような文言があるかどうか?
    ・救われたい人を適切に導くのではなく、救われた気分にするための本じゃないのか?
     で判断しました。
     この2点において、星5つです。医学的見地から見たお話、特に専門家個々の異論は、一切関知しません。

    今まさに深刻なPTSDに困っている人で、
    ・身近な人も当てにならず、
    ・まして何か治療を受けるなんて!
    と思っている人には、一読をおすすめしたい良書です。

    過去のPTSDや、「なんとなく乗り越えたと思っている」人でも、
    ・時折すごく自分の感情を扱いづらい
    ・時折嫌な記憶に苦しめられる
    と思っている人にも、一読をお勧めしたい書です。
    何故なら、
    「私はPTSDなのか、そこまで行かないけどやはり何か後遺症があるのか、あるいは別の精神病ではないか?」
    と判断したいとき。
    素人の判断は危険極まりない。
    新聞のコラム程度の情報量では、判断材料が足りない。
    かといって、タイトルに「!」や「?」が踊る本の類は、信用ならない。
    この本は、『判断用の背景情報』としてお役に立つと思います。

    「回りにいる誰かはPTSDなのかも知れない」
    「ちょっと解らないけれど、もしかして」
    「でも、聞いていいことなの?どうやって尋ねればいいの?」
    と考える際、『友人/知人/隣人は、どんな風に接したらいいのだろう?』と考えることでしょう。
    平易な言葉で事例紹介(当然、個人情報には配慮されてますよ!)している本でもあります。

    PTSDに苦しむ人の多くは、周囲の『無知・無理解』が二次災害です。
    「いやいや、よく知らないし」
    「私本当に普通なんで、わからないから」
    という世間的には当たり前の反応すら、『拒絶』というカタチになってしまう(こともあります)。
    興味本位でも何でもいい、とにかく知って欲しいと願っています。
    知らずに『悪意なき拒絶』を突きつけるより、
    「知った上で、何をするか。何を言うか。」
    とお考えになってみてはいかがでしょう。

  • 付き合っていく上での否定しない言い方は大変役に立つ。そんな風に感じさせることしてしまって本当にごめんなさい。辛いでしょうね。あなたの言っていることを心から聞きたい。怖いと感じてしまってきちんと聞けない。距離をとることがありうる。気づいてあげられなくてごめんなさい。そんな気持ちにさせてごめんなさい。本当につらかったね。これからはもっと安心してもらえるようにする。健康な人として扱うことは不適切な言動は不適切とみなす。コントロールできなければ親しい関係を維持することはできない。トラウマを思い出すことは前進。安全な環境基本的な生活を維持する。乗り越えるのが難しい役割の変化であって傷ではないととらえる。新しい役割への適応。
    加害者への怒りは絶望感とのセット。悲哀のプロセスの一部。間違った行為をしたから謝るのではなく、本人に孤独な体験をさせたことを謝る。本人がそう感じた以上、そう感じてよい。それは尊重されるべきだ。そういわれてどう思ったかを聞く。

  • トラウマを抱えることで独特の発想や防衛反応があることから、本人と周囲の人との通常の会話にずれが生じていって人間関係が壊れていくさまが手に取るように書かれている。このような視点からトラウマの怖さと困難を鮮やかに書き出している本はほかに類をみないと思う。著者はほかにもトラウマPTSDの本を書かれているが、人間関係の維持の困難さという視点ではこの本が一番秀逸だと思う。
    トラウマといえば覚醒亢進症状などに目が行きがちだけども、本人の支援という点では、こうしたトラウマ独特の反応(思考の在り方)によって人間関係の維持ができなくなっていくということが本当に怖いことだと思う。

  • とても現実的でわかり易い本

  • すごく参考になった一冊で、トラウマ反応で対人関係に起こりうる問題からのアプローチが詳しく書いてあるので、当事者にも支援者にも読んで欲しい一冊。

  • PTSDやトラウマに関する書籍を探していて出逢った本。
    こころの問題で生じる対人関係のこじれとその改善により症状の緩和を目指すという対人関係療法を中心に、症例や具体的なセラピーの過程をあげながら、疾患に対する知識を深めながら患者と大切な人との関わり方をわかりやすく説明してあって読みやすかった。
    PTSD以外にも気分変調性障害や摂食障害など、いろいろな障害と対人関係療法の本がシリーズ化されていて、読みやすかったし学ぶことも多かったので、他の本も入手したので、また追ってレビューを書いていきたい。

  • 私にトラウマはなかった

  • 著書の中で紹介されていた「医学モデル」について、トラウマと向き合う心得のようなものを感じました。

    ≪医学モデル≫
     その人がかかえている問題は、治療可能な病気の症状だとみなす考え方。
     「病者の役割」とセット。
     病気の症状には責任を負わない代わりに、自分の病気を認め、治療を受ける義務が生じる。

    自分のトラウマが、風邪なのか喘息なのか…それによって治療方法が変わってくると思います。
    本来の自分自身の生きるエネルギーを取り戻す作業が治療となります。

    もしかしたら、自分でもいやだなぁ~って感じる自分。いつも堂々巡りで同じことで失敗していたりする事があるとしたら。。。
    もしかしたら、それはトラウマなのかもしれません。

    健全な状態になるために、そういう観点から自分の感情を観察してみるのもいいかもしれないと思いました。

  • トラウマ体験は
    基本的には孤独の体験です。
    トラウマ体験そのものの衝撃だけでなく
    そのときに自分が全くひとりぼっちだと感じることも
    重要な特徴です。


    そもそもトラウマは過去に起こった体験によって起こっているもので
    過去を変えられない以上、トラウマとの折り合うと言うことは
    その「受け止め方」を変えることによってしかありえません(心的事実の再構成)





    ■変化の中で起こる感情が強すぎてコントロールできない





    自分の感情が強すぎてコントロールできないと感じると
    「自分への信頼感」を失います。

    自分が大丈夫だとは思えなくなり
    自分はどうなってしまうのだろう、と怖くなります。

    トラウマは強い恐怖や怒りなどを伴うことが多く、
    その圧倒的な感情が怖いために
    思い出すことを回避したりすることになります。

    思い出すことを回避すると、「慣れる」ということができなくなり、
    トラウマ体験を乗り越えることが
    それだけ難しくなります。

    また、「慣れる」という意味だけではなく
    「役割の変化」を乗り越えるためには
    自分の感情にふれることに
    大きな意味があります。
    「役割の変化」という「遭難状態」から立ち直るためには
    自分の現在位置を知ることが
    とても大切だからです。

    自分の現在位置を知るとは
    どういうことかというと
    「今、起こっていることが、自分にとってどういう意味があることなのか」を
    知るということです。

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著者プロフィール

水島広子【みずしま ひろこ】

慶應義塾大学医学部卒業・同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月~2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、対人関係療法研究会代表世話人、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン代表。主著に『自分でできる対人関係療法』『トラウマの現実に向き合う』(創元社)、『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』(紀伊國屋書店)、『怖れを手放す』(星和書店)、『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)、『自己肯定感、持っていますか?』(大和出版)、『「毒親」の正体』(新潮新書)などがある。

「2022年 『心がスーッとラクになる 世界の美しい文様ぬり絵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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