- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784422114880
作品紹介・あらすじ
PTSDを引き起こす外傷記憶、恨みや罪悪感、うつ病や強迫神経症、依存や中毒など、あなたの心をいつまでも蝕み、ときには日常を支配してしまう、思い出すのもつらい過去や苦しい症状、頭にこびりついた記憶や心をかき乱す感情――こうした「忘れられないこと」を上手に「忘れる」ための具体的な方法をベテラン精神科医が説く。
人が遭遇するさまざまな「忘れられない」ケースを紹介するほか、「忘れることができなくなる」メカニズムを脳と心の両面から解き明かす。
ネガティブな記憶を消し去り、過去に見切りをつけることは、安定した日常生活を得て、人生を前向きに生きていくことにつながる。
*小社刊『忘れる技術』を新装・改題
感想・レビュー・書評
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覚える技術じゃなくて忘れる技術って?と思ったが、思い出したくないのに蘇る悪い記憶を封じ込める方法についてだった。なるほど、それは大事なことだ。忘れる、というと語弊があるが、日常生活に支障をきたすようなフラッシュバックを予防する方法はいくつかあるという。それほど意外なものではないのだけれど、精神医学的に効果あり、といううことなら試してみる価値はあるだろう。その一つに、「賠償を請求する、訴える」というのがあるのが印象的だった。自分のために、泣き寝入りしちゃいけないんだな。
ちなみに、思い出すと膝を抱えて転がり回りたくなるような中二病的な記憶がぼくもあるけれど、そういうのに応用するのは難しそうだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
確かNHKの『100分で名著』の中井久夫のテキストに岡野氏が出てきて(追記:NHKテキストじゃなかった。雨宮処凛の相模原の裁判傍聴の本だと思う。またそのうちに確認してみる)、本を読んでみたくなり図書館の本を予約、実物を手にして装丁を見たとき、あ、以前借りたけど読む時間が取れずに返した本だ、と気づいた。読みたいと思う本は時がたっても変わらない。だから、本を借りたものの実は読んだことのある本だった、なんてことが頻発する。それを避けるためにもこうやって読書記録を書いているんだけど、一向にそれがなくならないのはどういうことか。
さて。
本書は忘れる技術を伝授するとの主旨で書かれているようだが、精神疾患に関する事例や記述はもちろんのこと、脳の機能や部位ごとの働きについて、またその関連性など脳科学的な記述も多く、とても勉強になる。いろいろな疾患やその状態像を思い浮かべると、納得のいくことが多い。
そしてサヴァン(本書では「サバン」と表記されているが)症候群のページがすこぶる面白い!小脳の萎縮による注意力や集中力の障害、固執傾向、運動機能の障害があり、それはつまり自閉症の人のそのあたりの症状の説明がつく、という件には納得しかない。また第2章でふれられている動物界におけるサヴァン的記憶についての件も、非常に面白い。「なるほど!」しかない。
海馬と扁桃核が外傷記憶の形成にかかわっていることはわかっているが、外傷記憶が「頭の記憶」と「体の記憶」がうまくつながっていないから、という話も、PTSDなどの治療の経過を考えると非常に腑に落ちる。筆者いわく、人は過去の記憶に覆われて生活しているが、それが自分の中で「善玉の記憶」であれば自然と記憶としての存在は無意識化、つまり忘れていく(完全な忘却ではない)。それはきちんと「頭の記憶」と「体の記憶」つまり具体的な体験と感情とが結びついて整理されているからだ、と。外傷体験では、その衝撃が強烈すぎて感情を司る扁桃核が暴走、海馬がうまく働かなくなり、しっかりとした記憶(徐々に薄れていくことのできる記憶)にならない。だからこそ、外傷体験を言語化することによって治療になり得るのだし、語ることによってバラバラだった記憶を忘れていける記憶として整理することができ、癒されていく。つらい記憶も、少しずつ背景的に変わっていくことができるのだろう。
第3章で忘れる技術を「本題」と書いているので、それを伝授したかったのかもしれない。だが、そんなことより、私のように脳科学や精神医学に興味関心のある読者にとっては、第1章第2章がこの上なく興味深い内容だ。しかも平易な言葉で具体的なものを使って比喩で表現されている箇所も多く、大変わかりやすい。「なるほど、そうか」と膝を打つような記述がたくさんあり、たくさんメモを取った。
個人的には、筆者が本題とした「忘れる技術」は、おまけ的位置付けなんだけどな。
そんなわけで、ここ、いるかなあ?と思いつつ読んだ第3章だったが、その忘れる技術の方法の一つとして、相手(恨んでいる相手や加害者)を知る、という手段が紹介されていた。修復的司法がまさにこれだろう。修復的司法も、忘れる(癒す)ために有効な手段であることは間違いない。もっと修復的司法が世に知られ、受け入れられていくといいのに、と改めて思った。
専門的な話題を、わかりやすく過不足なく、でもその分野に興味関心のある読者の知的好奇心をしっかり満足させつつ、同時に、これだけ整然と、かつ内容濃く書ける筆者に感服した次第。
また後で、気になった記述をフレーズのところに書き起こしておこう。
ひとつ残念なのは、こんなに面白いのに評価が今ひとつなこと。タイトルから想像される中身が、ややもすると自己啓発っぽく見えるのかも。それを期待して手にした向きには、期待外れになっちゃうのかな。私としては、忘れる技術どうこうではなくて、忘れる忘れないという側面からとらえ、精神疾患や外傷体験などとの関連から論述した脳の機能に関する本としたほうが、よりこの本を的確に表している気がする。タイトルのせいで、読み手と本書がマッチングできてないとすればもったいない。
そういえば、サヴァン症候群の人物として有名なキム・ピークが存命との記述があった。本書が最初に刊行されたときはそうだったと思うが、現在は彼はもう亡くなっているのではないかな。 -
面白そうな題名だったので読んでみた。
記憶というものは厄介なもので、色々なことを思い出してはイライラしたりすることを経験している。
この手の記憶を忘れる実践的な方法が紹介されていると期待していたが…。
私見での結論から言うとほんの一部分だけいい処方箋になるようなことが書いてあった。
この一部分だけでもまるまる一冊読む価値があったと考えるか、この部分だけ抜き出して書いてくれた方が良いと考えるか難しいところ。
この手の自己啓発本は、せっかく読むのだから自分の成長に繋がる何かを得て読了したいという気持ちが入って読んでしまう。
この本で良かった内容は忘れられないことの中には、自分で仕返しや復讐するためにこの気持ちを忘れないと、自分で積極的に忘れないことを選択していることがあるということでした。
確かに自分で考えても思い当たることもあり、このように文章で読むと自分の精神年齢の低さを感じます。
いい本というよりいい文章に出会えて良かった。 -
うーん、、、正直期待していたものとは違った。
何て言うか、もう少し、なるほど、と言うか実践してみよう、と思えるものを求めてしまっていたな。
だけど、元々カウンセリングの経験などもあるし、過去にも脳や心理学系の本はいくつも読んでるし、まあ、真新しいもの・ウルトラCみたいなものは、無いよね、そりゃ、と言うことか。
あとは、こう言う類いのものや、人生訓的なものを読んで、毎回思う(反省もする)のは、結局、知識としてや、アドバイス・アイデアとして知ったとしても、自分次第なんだよな。自分に合うものを見つけられるのかどうかも、やってみて出来るのか・やりきれるのか・変えられるのか。
忘れる技術
①忘れたい刺激を遠ざける→外傷記憶、恨みの記憶、人を傷つけた記憶
②怒りやフラストレーションを何かにぶつける
③賠償を要求する、訴える
④人に話す(カウンセリングを受ける)
⑤相手について知る(理解し、許す)
⑥新しい世界に踏み出す
⑦与える人生を歩む→人を傷つけた記憶
⑧薬物療法を試みる
⑨思考制止術を用いる
⑩バランスシートを用いる
⑪名人に学ぶ-中島誠之助さん -
「忘却すること」については科学的にも医学的にも研究が進んでいないということがまず一つの気づき。
筆者の日頃の考えまとめではあるが、なるほどと関心が深まる事例ばかりであった
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思ってたのと違うものでした。
精神科医の先生がPTSDとかウツ病について書いてある重たい話でした。
後書きにあった、「忘れることの究極の方法は、人は皆別々の考え方をしているという事実を受け入れることかもしれません」には同意。 -
どうして思い出したくないこと思い出してしまうの?→強烈な印象できちんと脳が記録しないまま不完全な記憶として保管されるからこそ逆に何度も思い出されてしまう。強い扁桃体の興奮が海馬の働きを抑えてしまい、通常の思い出され方が出来なくなってしまう
嗜癖を生むには:脳の快感中枢をどれだけ急に刺激できるか→急なら脳は絶頂感を得て同じ体験を繰り返したくなる
快感が忘れられないから嗜癖性が高い
サバン症候群
小脳の一部が萎縮:かえって極度の注意力、集中力、固執傾向
象徴機能を使わない発展途上の覚え方、動物的
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PTSD、うつ病からサバン症候群まで忘れることができないパターンが網羅されていて興味をひかれた。