なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?--数千年に一度の経済と歴史の話
- ダイヤモンド社 (2015年2月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478061381
感想・レビュー・書評
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高校政治経済のレベルでも理解出来る、かといって突飛な論調でもなく、ちょっと前に流行ったピケの説よりは、よっぽど信頼出来るものだと思う。
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世界的に人口増加が限界に近づいており、経済成長も人口増加の打ち止めに合わせて停止することが必然なので、これからは経済のゼロ成長を前提に「定常型経済」を目指すべきであり、これを理解せず無理に経済を成長させ続けようとしているところに、現在の各種の問題の本質があるという主張を、物語仕立てでわかりやすく説いている本です。
「近代社会システム論」という歴史観は始めて知りましたし、銀行による信用創造の仕組みや、中央銀行の役割なども非常にわかりやすく解説されており、なかなかおもしろかったです。
が、人口増が止まれば経済成長も止まらざるを得ないという前提や、量的緩和にはインフレに誘導する効果は論理的にあり得ず、それが可能であることを前提に行われている現在の金融政策は誤解か政治的理由による嘘に過ぎないという論については、賛成できないと思いました。
現在のアベノミスクが、最終的に上手くいくのかどうかは歴史の審判を待つしかありませんが、個人的には成功するのではないかと思っています。が、作者の主張する「定常型経済」への移行「量より質の重視」は、いずれにせよ目指すべき目標であることには異論ありません。 -
ゼミの先生が女子大生に、教えているプロセスが面白く、あっという間に読めました。ただ、歴史については、英国の産業革命を誤解しているところも感じられます。少子高齢化の影響ということで、既得権に固執しない生き方を伝えるところは賛成です。
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親しみやすい素材で、難解で俯瞰しにくいテーマを噛み砕いて説明する良書です。
私は歴史に関する内容が非常に勉強になりました。
終末主義的、悲観的な結論でないところも好印象です。 -
人々が自然に行動した結果を観察すると、世の中の真実が見えてくるものなのですよ。マンガが売れる、というのはその一例
「例えば、『鉄腕アトム』が流行った1950年代から60年代の日本は、高度経済成長期で、科学技術の発展が人類に明るい未来をもたらすという夢を人々が持っていた頃の社会風潮を反映し
産業が未熟な段階では、子供に教育という投資コスト、つまりおカネを大してかけなくても、生産=リターンが得られるので、子供が多いことにメリットが大きかったと言えるでしょう。
人類を幸せにするはずだったアトムが、じつは人を不幸にして
いずれ音楽家自体がいなくなる、
いちばん失業したのは〝馬〟
デジタル革命は化石燃料を使い始めた〝物理〟の革命や、化学肥料を生み出して農業生産を飛躍的に増やした〝化学〟の革命ではありません。デジタル革命は〝情報〟の革命です。なので、人間の〝脳〟の機能を、さらに高速の処理能力のある機械で代替していきます。言ってみれば人間そのものを機械が代替していく革命なのです。
みんなよくわからないけれど、どうも間違えた方向に進んでいる気がするわけで不安な気持ちにさ
少子化が進むのは仕方のない話なので、無理やり子供を増やそうとするのではなく、それに社会をどう合わせていくかが本当は大事なのです。現状のようなおじいさん・おばあさん層におカネをかけていくのではなく、未来ある子供たちに高度教育を施すための教育コストを社会でどう負担するのかという議論をすべきですし、現状のようなホワイトカラーを大量につくるためにできた教育制度も見直していく必要があるのです。こういう本質的な政策努力をしないと、ますます人は《漠然とした不安》に襲われて極端な少子化が進むという悪循環が発生していくでしょ
貧富の格差が拡大して二極化した現実と、少子化のせいで相続を受け取る子供が減っているために相続する資産がある人には富が集まり、ない人にはまったくないという世襲によって、貧富の格差がさらに拡大するということです。
紅茶に砂糖を入れて飲むというのは、世界の覇権を握ったイギリス人が、いかに自分が金持ちかを威張るためのステイタス・シンボルだったんです。世界の覇権を確立したイギリスが、世界の西の端のカリブ海で奴隷につくらせた砂糖と、東の端のインドでつくらせた紅茶を輸入してきて、合体させ
近代世界システム論においては先進国になっていった地域を〝中核〟と呼び、〝低開発化〟された地域を〝周辺〟と言います。近代世界システム論の考えでは〝中核〟に従属する〝周辺〟といったように世界的な分業体制ができていて、世界がひとつの経済圏に統合されたまとまったシステムとなっているので、すべての国はその構成要素にすぎないのです。ですから、歴史はそれぞれの国を単位として動いているわけではないというわけです。これが近代世界システム論の考え方
た。「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」
世界初のだれもが認める世界システムの勝者、ヘゲモニー国家です。
成長を求めて世界を飲み込んでいった世界システムですが、ついに世界中を飲み込みつくして、もはや地球上に世界システムに組み込まれていない場所が残されていないところにきたのです。
「物事には原因があって、結果があるわけですからね。原因を知らないと、真実を知ることができません。そういう意味で、歴史を勉強するのは大切なことだと思います。
アンガス・マディソン氏の『経済統計で見る世界経済2000年史』という本によれば、人口は紀元0年2・3億人、1000年2・7億人、1700年6・0億人、1998年59・1億人というふうに、1700年かけて3倍になった人口が1700年から2000年の300年間で10倍に
感覚的に見ても限りある地球において、このような指数関数的な成長を持続していくことが不可能 -
日銀が相当危ない橋をわたっているというのはわかった。全体的にわかりやすい喩えを用いているので最後まで興味深く読めた。で、とりあえず自分たちにできることって、年金を欲しがらない。財テクしない、ということなのか。
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トレーダーから見た現在の日本の置かれている状況、世界の経済の状況整理、としては、豊富なたとえ話でわかりやすく、イメージを想起させられる内容だったけれど、後半の日本人云々は正直なところ、うーん…という感じ。本当にそこなのか?という気は拭えない。もちろん松村さんにも、他の誰にも目指すべき姿は見えてても、そこに至るにはどうすればいいのかまではわからない中での、これが一つのヒントちゃうか!?という投げかけなのだとは思いますが。
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良いところは、経済の流れ、ヨーロッパの歴史、
日本銀行の仕組みなどを非常にわかりやすく
簡単に説明しているところ。
このような書き方の本はあまり見なかったように思う。
ただし逆にざっくりとしすぎているところと、
著者の主観による論調が多いため、
そのまま鵜呑みにして良いのだろうかとも思われる。
たとえば、「●●したのは日本だけ」「日本はとてもすばらしい」
という話が唐突に出てくるが、
他国を考えてみると、「だけ」とは言いすぎだろう。
「日本には本来●●というすばらしい考え方があった」
くらいにしておいたほうがしっくりと来る。
あと、物語形式になっているが、それもほとんど
教授の講義になっているので、中途半端な感じがする。
といっても、総じて興味深く読めた。