チームのことだけ、考えた。――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478068410

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭に紹介されていたサイボウズの動画「大丈夫」を見てまず泣いてしまった。

    私は大丈夫だろうか、ちゃんと君を愛せているだろうか、自分を愛せているだろうか

    毎日感じてた。苦しい。

    人事制度を作ることはとてもクリエイティブである。
    しかし浸透させるには文化も変える必要がある。
    でも会社によって時代によって最適な風土は違う。
    制度の目的が浸透していれば、制度を悪用する人は出てこない。
    制度の目的について議論し、共有し、共感していれば有効に運用される。
    何が何より大事なのかを明示することで風土は作られる。
    例)育児する人だけが優遇されているという声に対して、子どもがいなくなる→次の市場がなくなる→育児は長期的な顧客創造業務→よって仕事の方が優先されるはずがない、ということを伝える。

    自分は今の会社しか知らないため、コロナが起こってリモートワークが普及したように、世の中の流れや必然性がやってこない限り制度を浸透させる方法はないと思っていた。
    ここに制度を浸透させている会社があった…。

    多様な働き方の部分だけでなく、サイボウズがどう企業として成長してきたのかも含めて、最初から最後までとても勉強になる本でした。

    ◆メモ
    ・理想を実現するためなら、どんなリスクであろうと受け止める覚悟を決めること。その理想以外のすべてをあきらめるということ。
    ・保身に時間を費やすのではなく、再度理想に向かって粛々と行動し続ける覚悟。
    ・自分は自分のベストを尽くす。それで無理なら諦める。
    ・理想への強い思いがあれば、人は努力する。
    ・理想は、目指す気持ちが湧いてこそ理想。(買収したあらゆる事業に興味を持とうと努力はしたが無駄だったと、青野さんが言っていて興味が持てない仕事があることは普通であり悪ではないと思えた。)
    ・「効果」「効率」「満足」「学習」
    ・幸福感を失ってまで無理に成長を求める必要はない。そもそも人はし続けることはできない。それぞれのライフサイクルに合わせて成長すればよい。
    ・ダイバーシティは日本人、男性等1つのカテゴリてして多様性のない塊として扱われる。
    ・部下には質問責任、上司には説明責任。伝える努力なくして自分の思い通り動いてくれるわけがない。
    ・自立した個人とは、次の行動を自ら意思決定して選択して進んでいく。
    ・チームのメンバーは、コミュニケーションをとる、共通の理想を決める、役割を分担する、互いの仕事の進捗を確認する、フィードバックし合う、相互に調整をする。

    ◆気になったら人事制度、多様性の考え方
    ・残業してもよい、ある程度は残業してもよい、残業なしもしくは時短の3パターン。
    ・妊娠判明時から産前休暇、時短勤務も可。
    ・育休に入る前に複数の職務を経験させる。その方がスムーズに復帰できる。
    ・子どもの看護休暇、日数は特に定めなし。
    ・2010年から在宅勤務。
    ・リーダーは現場を知るべきだとよく言うが、リーダーは先にチャレンジすべきだ。
    ・子育てを通じて、教育、医療、福祉、自治体、政策、少子化問題、仕事中心の生活では経験できなかった社会について学ぶ機会を得る。

  • サイボウズの設立者であり、現社長青野さんの著書。
    試行錯誤しながら、どうやって離職率を下げることに成功したかが、詳細に書かれている。
    『「事実」と「解釈」は別物である』このあたりもかなり参考になった。良書。

  • 先日ニュースにもなっていた夫婦別姓判決を痛烈に批判していたのを見て、社会問題に対して真摯に向き合うビジネスマンが日本にもいるんだなあとすごく印象的だった。色々調べたところ、結婚後妻の姓を選択したり、夫婦別姓訴訟を起こすなど、かなり問題意識が高いようで多様性には相当理解のある人なのだなあと。青野さんやサイボウズにどんなストーリーがあるのか気になり手に取ってみた。

    本書ではサイボウズの組織マネジメントについて書かれており、いわゆるサイボウズ流の働き方改革が紹介されている。よくニュースでも見かけるし、現代的な会社であることは言うまでもないが、改めて以下の2点はすごく勉強になった。

    第一に多様性の尊重。夫婦別姓の件もそうだが、ダイバーシティをものすごく大事にしており、それが多様な個性、働き方を生み出すもととなっているのだろう。青野さん自身も周りをよく見ており、非常に視野が広いことがうかがえる。個性を最大限に活かすのは決して容易ではなく、本人も試行錯誤を連続だったみたいだが、それだけ様々な意見に耳を傾け、どうすればその要望を実現できるのか常に考えているからこそできること。

    第二に目的意識の高さ。紆余曲折や挫折があった中、それに屈することがなかったのは、目的の明確化を徹底しているからだと感じた。現状の課題、あるいは理想や成功状態の定義をしっかり行うことでアクションもしやすくなっている。言葉にすることは改めて大事だと思った。

    改めていい企業だと思いつつ、これだけフレキシブルな企業カルチャーを知ってしまうと逆に前時代的な会社へのアレルギー反応が強まる一方なのが何とも言えない、、笑

    • ともひでさん
      あらゆる行動に目的意識を持ち、あらゆる選択に自分なりの意味を持つ。
      これ、大事ですねぇ。

      たいちは何を目的にフレキシブルな企業カルチ...
      あらゆる行動に目的意識を持ち、あらゆる選択に自分なりの意味を持つ。
      これ、大事ですねぇ。

      たいちは何を目的にフレキシブルな企業カルチャーを求めているんや?
      2021/07/19
  •  経営者でなくとも楽しめる1冊。こんな会社で働きたい!

     サイボウズの青野社長が、四国で起業してから、業績を伸ばし、東京に移転して、ユニークな風土で多様あるれる働き方ができる会社を作るまでの物語(現在進行形)
     前半は青野社長が共同経営者とサイボウズを立ち上げるまで。泥臭い仕事の積み上げ、葛藤や挫折があったことがわかり、今のサイボウズは決して成功だけを積み重ねてきたわけではないと知れた。
     後半は今のサイボウズのシステムや風土がどのように考え作られてきたかについて。試行錯誤の果てに「一番使われるグループウェア」という軸を設定。売り上げや利益でなく、「理念」を通す。人を定着させるために、多様性に対応できるは働き方やユニークな制度が多くある。「育児分休暇」や「人事部感動課」などはネーミングからして興味を惹かれてしまうことだろう。

  • 社長の目線で、サイボウズ創業から今までの変遷を追体験できる。入社を機に読んでみた。
    各種制度の成立過程とか製品の開発経緯とかが専門用語とかはあまり使わずに語られていて、ひと通り理解できる内容。

    大まかな内容としては、
    ・創業者青野さんはゴリゴリの理系少年、物理マンだったようで、新卒で入社した松下電工での経験とウェブ技術の登場という時代フェーズから、「世界一のグループウェアを作る」会社を起こすことに。
    ・事業内容は一貫してグループウェアの開発と販売。現在では「チームワーク総研」と銘打って組織運営のメソッド展開事業も行なっているが、この本ではその領域に関しては語られていない。
    ・単に利益だけを追い求めるのではなく、「チームワークを世界に広げる」という理念の拡大を第一に事業を展開。
    ・聞こえのいい制度をただ作るだけではなくその運用に焦点を当てて、様々な挫折や失敗を重ねながらも会社は大きく成長している。
    ・サイボウズ要素を抜くとすれば「ITの民主化」や「会社や事業の民主化」なんていうテーマがしっくりくる。

    といったもの。
    読みやすくていい本。

  • サイボウズ作成のワークスタイルムービー「大丈夫」。育児と仕事の狭間で悩むワーキングマザーらの共感だけではなく、第三者としても考えさせられる(あるいは感涙)動画である。一方、動画サイトでは「独身女性にしわ寄せがくる」「つらいのはみんな同じ」という批判の声も寄せられている。こういう声を批判ではなく意見と捉えるのもダイバシティだと思う。

    本書はグループウェアのリーディングカンパニーであったサイボウズ自体がチームワーク出来ていなかったことを省み、青野さんが「世界で一番使われるグループウエア・メーカーになる」を掲げてチームワークの何たるかを再考&再興する経営者の物語である。苦しみもがいた経営者のひとつの答えがここにあるわけだが、他方でダイバシティを「人材のモジュール化」と捉えられそうな発言もあり、チームワークの解はなかなか難しいなと感じる。

  • 働き方の多様化する現代において、先陣を切って変革を起こし続けている企業、サイボウズ。
    その代表取締役社長の青野さんの、立ち上げから大切にされている理念が詰まりに詰まった内容でした。

    これほど柔軟な考えと、自由な発想には感服の一言。

    まず自身の壮大な理念、ビジョンがあって、
    そこから組織やチームを形作る「個人」にとことん焦点を置き、
    人を大切にされて経営にあたっていることが強く感じられます。

    一見多種多様な人たちのように見えて、チームとして機能している。
    共に頑張る仲間がその姿に至るまでの苦悩や、何度もぶち当たる壁を乗り越えてきた経験は、
    今を頑張る人たちへの大きなエールともなり得ると感じました。

    一人の力だけでなく、よりたくさんの仲間と、大きなチームの力で生き抜いていく、
    これからの時代に合った考え方の一つになると思います。

    人生の目的から生きることにも触れている、経営者としても一読おススメの一冊です。

  • [サイボウズの理念]
    チームワーク溢れる社会を創る

    ◉グループウェアの再定義
    チーム内でありとあらゆる情報を共有し、チームワークを高めるソフトウェア

    ◉チームとは?成立条件(構成要素)
    ・共通のビジョン、チームの構成員、役割分担、仕事の連携

    ◉チームワークが良い状態(尺度)
    ・効果、効率、満足、学習

    [価値観]
    ①公明正大
    公に明らかになったとき、正しいと、大きな声で言えること

    ②自立
    説明責任、質問責任
    護送船団方式では従業員を幸せにできない。
    100人100通りの人事制度の実現には一人一人が自分の理想を言葉にして伝えることが必須。
    質問責任:自分が気になったことを質問する責任であり、自分の理想を伝える責任であり、その結果、自分の理想が叶わなかったとしても受け入れる責任
    説明責任:自分が行なった意思決定について説明する責任であり、他のメンバーからの質問に答える責任であり、その結果、批判があっても受け入れる責任。

    [他、メモ]
    ◉事実と解釈
    事実:五感で確認できる確かさの高い情報
    解釈:事実を得て考えた情報

    ◉コンセプト
    ○○さんに、××と言わせる企画を考えてきました

  • 多様性マネジメントについて、こんな記載があった。

    >ある社員が 「この四角の枠が多様性の境目ですよね 」と言って 、ホワイトボ ードに四角を描いた 。多様性を認めるからと言って 、何をやってもよいというわけではない 。

    特に前半、一瞬「ん?」となったけど、後ろを読んで納得。

    >多様性を実現するには 、全体の理想に共感している必要がある 。自然界に多様な生物が存在しうるのは 、どの生物も自然界の掟を守ってきたからだ 。

    なるほど。もっとも多様性の高い集団は明らかに地球の生物全体だけど、確かに多様だからといってなんでも存在して良いわけではない。

    こないだ、自分の角が大きすぎて森を歩けず絶滅したシカや、自分の食料を食べ尽くしてしまうが故に絶滅した種のの話をテレビで見た。

    絶滅した種の中には、気候変動など理不尽に絶滅した種もいるだろうけど、自然界の掟を守れなかった自業自得が故に絶滅した種もいる。

    だから組織(会社)においても、多様性を保つ為には、全員が目指すビジョンなどが必須なのだ。

    今まで「多様性」を認めるなら、組織のビジョンや、ミッションに共感しないことも多様性かと思ってたけど、地球規模で考えても守るべき掟があるように、組織でも同じなんだと納得した。


    企業における「多様性」についてこんなに考えてる社長は少なそうだ。この本には綺麗事ばかり並べられてる訳ではない。「チームのことだけ」考え始めてからも、育休や産休に力を入れたら、未婚の社員から不満が出たりと、「これで上手くいきました」というエピソードは殆どなく、今でもきっと発展途上だし、この本に出てくる人事制度も三年後の今は様変わりしてることだろう。

    多様性同士がぶつかると喧嘩になる。見てるアングルは違えど、コンセプトやビジョンなどの共通認識を軸にコミュニケーションを取ること、そして公明正大であること、それらがあって初めて多様性が成り立つ。

    逆にそれらが無ければただのバトルロイヤルになってしまうんだろう。


    あと、育休や産休制度などについての文脈でこんな一文があった

    > 子供がいなくなると次の市場がなくなるのだから 、仕事のほうが優先されるはずがない 。言い換えると 、育児は長期的な顧客創造業務だ 。

    この文脈では、その社員のノウハウが消えてしまったりすることや、穴を埋める為に新しく採用して教育するコストに比べて復職してもらう方が遥かにコストメリットがある、というような話はよく聞く。

    「育児は長期的な顧客創造業務」と社長が言ってる会社は、少なくとも自分は初めてお目にかかった。
    「世界一のグループウェアメーカー」を絵空事じゃなく、本気の本気で目指すからこそ、次代を考えられるのだろう。というかそこまで考えなきゃ世界一にはなれないのかもしれない。

  • グループウェアのサイボウズ、その創業者で社長によるワークスタイルに関するエッセイ。全て、サイボウズでの経験談で、一見、空論のような制度でも実際にやってるのがすごい。一人ひとりが自分に合った働き方をできるように、さまざまな制度が作られ、ちゃんと利用されている。

    いろいろなワークスタイルが共存するために、サイボウズのグループウェアを活用している、と、頻繁に宣伝が入るのは半分洒落なのか?

    意思決定、目標管理など、今の働き方で不満のない人でも仕事のやり方について参考になる内容があった。

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著者プロフィール

サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。総務省等における働き方変革プロジェクト外部アドバイザー、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会副会長を歴任。選択的夫婦別姓の実現を目指して、2018年1月、国を提訴(ニュー夫婦別姓訴訟・原告)。
著書に、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社、2015年)、『「選択的」夫婦別姓──IT経営者が裁判を起こし、考えたこと』(ポプラ社、2021年)など。

「2022年 『選択的夫婦別姓は、なぜ実現しないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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