言葉の園のお菓子番 孤独な月 (だいわ文庫)

  • 大和書房
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479308843

感想・レビュー・書評

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  • 「言葉の園のお菓子番」の2冊目。
    仕事が忙しくて、主な読書時間たる通勤電車の中でも目を瞑って頭を休ませたい感じで、なかなか本読みが進まずだったが、ゆるゆると進むこのお話は今の状況にはちょうど良かったかも。

    今回も連句会を中心に、一葉が用意するお菓子やお茶、彼女の仕事(ポップの仕事に加えてブックカフェで働くことになった)をはじめとしてあれやこれやが語られる。
    前作でも紹介されているとはいえ、正直誰が誰やら分からなかった連句会のメンバーだったが、萌さん、蛍さん(+妹の海月さん)、蒼子さん、直也さん、それぞれ印象的な出来事が描かれて、ようやく個性も分かってきた。ゲストみたいなベテラン歌人の久子さんや睡月さんのアクの強さもアクセント。捌きの航人さんのエピソードには、治子おばあちゃんが集まりの中で果たした大事な役割も知れる。
    毎度手を変え品を変え同じような話を読まされているような気もするが、それでもこの作者のお話はとても良い。


    亡き人がとなりに座る花の席

    人々の心を照らし月静か

    その人のぬくもりといる花の夜

    今日はかつて一緒に仕事をしていた人たちとの会食の日で、コロナ禍で4年の間が開いていたのだが、この間に亡くなった人あり体調がすぐれず来れなかった人もあり。
    かつての思い出に、これらの句がしんみりと心に沁みる歳になってしまったな。


    ヒトツバタゴを画像検索して、これは見てみたいと思った。
    うちの近くでは鶴見緑地や長居植物園、大阪城にも植わっているようだが、満開になるのは5月上旬頃だそうで、まだ先だ。覚えておけるかなあ。

  • シリーズ第2弾。

    亡き祖母が、通っていた連句会・ひとつばたごのお菓子番を引き継ぐようなかたちで参加している一葉。

    少しずつ、ゆるやかに連句会にも慣れ、そして連句メンバーからの繋がりでポップの仕事も楽しんでいる。

    今回も、新たにメンバーからの紹介で昔、祖母と行ったことのある書店が、ブックカフェ(あずきブックス)に変わりバイトを探しているとのこと。
    縁とは不思議なもので、とんとん拍子に話も進み週4日勤めることになる。

    ポップの仕事とブックカフェの仕事、そして連句会。
    仕事も私生活も少しずつ実ってきた感がある。

    連句会では、別れと出会いもあり、そして自分の知らない祖母を知る。
    孤独な月たちをやさしく包む人だと。
    一葉もきっと祖母ゆずりの性格なのでは、と感じる。
    控えめでいて人の気持ちもわかる人。

    まだまだ連句を知るには、ほど遠いがこの本を読むだけで清々しくなり、凛として背筋が伸びるような気持ちになる。
    美しい気持ちに満たされていく気分…。
    それは、美しい連句を詠んだからなのかもしれない。

  • 前の句と句切れるからこそ覚えてる。人との縁も命が途絶えてもその温もりはつながって感じられる。私も読みながら句の深さとともに亡くなった祖父母をそばに感じながら読めた。

  • 【収録作品】しあわせの味/砂を吐く夜/生を謳歌す/旅人の本/なんじゃもんじゃ/孤独な月
     うまくいきすぎの感じもするが、人との出会いがうまく転がり出せばこんなものかもしれない。一人で閉じこもっていても道は開けない。こんなふうに開かれていて、干渉しすぎないけれども、いたわり合えるような関係を築ける場所があったらいい。
     お菓子がおいしそうで、食べてみたくなる。

  • シリーズ2作目。
    前作で亡くなった祖母の跡を継いで、連歌サークルのお菓子番になった一葉。
    書店を退職して、フリーのポップライターを続けるのかと思ったが、今作ではポップの話が出て来たのは1作目だけで、縁が巡り巡って、一葉は祖母と幼い頃に訪れた街の小さな書店が始めたブックカフェを手伝うことに。
    他の方のレビューにもあったが、書店こそ閉店になったが、その後の一葉の人生は悲観的でもなく、出会う人それぞれに導かれて、新たな一歩を進んでいく様子は上手く行きすぎな気がしないでもない。
    それでも、人と人との繋がり、過去と現在の繋がりなどが丁寧に描かれ、人はやはり人との縁の中で生かされていくのだなぁ、としみじみ思った。
    毎月出て来るお菓子も、本当に魅力的で、特に驚いたのが銀座清月堂本店の「おとし文」。
    毎日お店の前を通っていたのに、そんな名店とは露知らず・・・店頭を覗いてみると、季節ごとの「おとし文」が販売されていた。今の時期は抹茶。
    甘いものがあまり得意ではないけど、せっかく毎日前を通っているのだから、一度は食べてみようと思う。
    それは私にとっても、何かの第一歩になるかもしれない。

  • 『言葉の園のお菓子番』第2作。祖母が生前参加していた月一度の連句の会に参加するようになった一葉。第1作では連句の様々なルールが、面白くもやや難しいなと思いながら読んだが、第2作で再び触れたところ、少しだけ自分の理解度が増している気がして楽しめるようになった。

    色々な実在する老舗のお菓子屋さんや谷根千界隈のスポットが出てくるのも楽しい。連句の会でのつながりをきっかけに今作では上野桜木のブックカフェのお話もあって、こんな素敵なブックカフェがあれば是非訪れたいなぁと思った。一葉が暮らす根津の実家での両親とのやり取りもほっこりする。

    きっかけは大手書店での職を失ったことだったが、一葉は連句を通して素晴らしい仲間に巡り合い、とても充実した日々を過ごしている。前に進むってやはり大切だなと思った。
    続編を期待したい!

  • このシリーズを読むまで全く知らなかった「連句」の世界、今作もルールの奥深さに触れることが出来て面白かった。繋がりと断ち切りのバランスこそが、生きるということなのだな。

  • シリーズ二作目。
    初めに出てくるお菓子は、ショートブレッドやドライフルーツビスケット。
    「ひとつばたご」で出会った連句仲間から、手作りマーケットで販売するお菓子に商品タグをつけて欲しいとのこと。

    会に持って行くのはどら焼き。ああ美味しそう!
    ところで本筋、なんだったっけ?
    そうそう、大人になって子供を持ち、読み聞かせた絵本に感動する、と言う話。
    わからない人もきっといるだろうけれど、私はよくわかる。
    読み聞かせるうちに声が詰まってしまったこともある。
    絵本には絵本ならではの心をうごかすものが詰まっている。
    この話は次の話に持ち越される。
    海月さんと言う新しい人物も登場。

    本作で主人公、一葉は再び本の仕事にも戻る。
    158頁に「続くように終わる」とある。
    一つの場所だけではなく、歩み続けることの大切さ、生を繋いでいくことの不思議。
    それが本書のテーマだった。
    私も4月からは新天地で日々を過ごしている。
    始まりの物語を新年度にあたり読めたことは良かった。
    そして、どんな時だって「始まり」だと知れたことも。

  • シリーズ2作目
    連句を通じて人との結び付き、関わりが主のお話し。

    連句会での出会いが更に広がりを見せていく今作。
    言葉を紡いでいく連句になぞらえて、縁を繋げていくのが凄く好き。
    今作は特に「命」が散りばめられていたけれど、亡き人を想い産まれてくる命を想う。
    例えいま1人だとしても「独り」ではないんだなと、きっと誰かが光を当ててくれて、自分も誰かを光で照らす事が出来るんだなと。孤独な月も決して独りではない。
    タイトルの意味が伝わりました。

    ハラハラドキドキ、伏線回収も楽しいけれど、ゆったりと読める小説も良いですよね


    ベランダで
    ひとり眺める
    夏の月
    照らすひかりは
    誰かの想い

  • シリーズ第二弾。

    亡き祖母・治子さんの縁で連句会「ひとつばたご」に通い始めた一葉を主人公にした、連作六編が収録されています。

    前の巻でポップライターを始めた一葉ですが、今回はその関連で、連句会のメンバー・萌さんの手作り菓子のタグ作りを依頼されたり、やはり連句会の昔からのメンバー・久子さんの紹介で、ブックカフェ〈あずきブックス〉で働く事になったり(ポップライターと兼業)、さらに〈あずきブックス〉のお菓子を萌さんが担当することになったりと、ちょっと出来過ぎ展開な気もしますが、まるで言葉と言葉が繋がり合う“連句”のように、一葉の周りも人との出会いと繋がりによって広がりを見せていきます。
    そして、注目の新キャラは連句会メンバー・蛍さんの妹の女子高生・海月ちゃん。
    基本的に「ひとつばたご」の方々は、皆大人で物腰柔らかな人達ばかりなので、海月ちゃんの個性的なキャラはスパイス的な役割をしてくれそうです。今後も登場するのでしょうかね。
    新しい出会いだけでなく、別れもあり、過去の思い出等の、そういった時の流れを語らい合いながら、言葉を紡いでいく・・・何とも素敵なコミュニティだなぁと思います。
    亡くなった治子さんの知られざる一面も明らかになってきて、その優しい人柄が偲ばれますね。
    月替わりのお菓子のチョイスも絶妙で、どれも美味しそう・・・とりあえず“一周”したのかな。
    今後の展開も期待したいですね~。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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