- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479392743
感想・レビュー・書評
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東京を生きていた時を思い出しながら。
著者が若くして亡くなっていた…とは。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昨年の晩秋に突然この世を去った彼女の名前は知っていた。
『だって、女子だもん!!: 雨宮まみ対談集 』や連載記事など幾つか読んでいたが、読者といえるほどではないし、ましてやファンなどとは言えない。
それでも突然の出来事に驚き、戸惑ったし、エッセイを読むに連れ、かなり身近なところにいた人なんだなということが分かってきた。
おそらく実際に何度かすれ違っているだろう。共通の知人・友人などはいないようだが、何人か介したら結びつくのではないか。
そういった人物が感じる生きづらさを瑞々しい文章で語っているのはちょっと今までとは違う読感がする。
知っているはずはないのに知っているような、分かり合えるような分かり合えやしないような。
気持ちを感じ続けることがつらい。意識を失いたい。そういう気持ちのほうが、私はよくわかる気がする。(P.151)
この一行なぞは強烈に腑に落ちるというか酩酊時の自分の叫びのようなものだけれど、東京で生まれ育った男の私には分かるはずのないところにこそ彼女の叫びはあったのだろう。
彼女の知人だという人が没後この本を最高傑作だとツイートしていた。
全ての著書を読んでいるわけではないのだろうが、そうなのだろうと思う。
生まれ育った土地を離れ「東京」に自分の場所を自分で作るという意思が書名の「生きる」という動詞に込められている。
雨宮まみとして綴ってきた言葉は結句、「生きづらさ」つまり自分の居場所を求める過程だったのだと思う。そして「生きる」と誰かに与えられるのでもなく、奪われることもない居場所を作る緒…のようなものを掴みかけたと思ったら絶筆してしまった。
おそらくほんのチョット意識を失いたいと思っただけなのだろうけれど。
改めてご冥福をお祈りいたします。 -
思春期から独身時代を関東で過ごした。結婚とともに四国の片田舎で生活していると、標準語なだけで都会人扱いされるが、実は渋谷の雑踏で途方にくれたり、新宿のホームで行き先表示に視線だけ走らせて迷わないようただひたすらに目的地を目指す田舎者なんだと心で毒づく。著者は自分は何者なんだと彷徨う感が半端ない。分かるんだけど、力抜けよとも思う。
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連載で読むのが、私にとってベストだったんだろうと思う。
少しずつ、時間をあけて。
単行本で一気に読むのは、密度の濃い闇に口元を覆われていくような苦しさがあった。
でも言語化の上手さは見事なので、明瞭になっていくすっきり感もある。
「谷間の百合」は、ディカプリオ版の映画ギャツビーで、色とりどりのシャツを投げる場面と重なる。
それ↑と「タクシー」と「殻」が心に残った。
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東京に生きてないのに、雨宮さんのみた景色を見ていないのに、自分のことかと思って苦しくて、スッキリした。
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文章が心地よい。地元の嫌悪感と東京生活の愛憎、自己肯定感の低さと強い刺激で壊されたい気持ちが瑞々しく書かれていてとっても好き。文章が好き。
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この人が今この国にいたら何を書いただろう。
こんなこと思っても何にもならないが。
●数年が経ち、いつのまにか、私の唇の上の虫が当たった場所には小さなほくろができている。いつできたのかわからない。昔はなかった。/その小さな点をじっと見ていると、いつかこの点から、世界がぐるっと裏返ってしまうのではないか、と思う。あのときのように、楽しい気分やこれからの希望に満ちあふれた、きらきらした空気が一瞬にして消え失せて、暗闇が口を開けて自分を呑み込み、まるで夢から覚めたあとみたいな、ただの何もない自分が残るんじゃないか。 -
九州で過ごした年月を、東京で過ごした年月が越えてゆく-。地方出身者すべての胸を打つ、著者初の私小説エッセイ。大和書房のホームページに連載した「東京」に書き下ろしを加え再編集。
なんとなく分かるような気持ち。 -
初読
なるほどなぁ。夜の東京だ。
わかるところとわからないところと。
それはもう叶わない事だけど、その先の彼女を見たかったなぁ
現実を、ぬけぬけと、鈍感に愛する彼女を。
故郷を憎みながら甘えて頼っている、
美しい装身具は女をみじめさから救うってわかるなぁ -
故郷を恨みながらも頼るというの、わかりすぎる。
愛したいけどどこか恨めしい。
なんだろうね。田舎出身だと自然の良さよりも
何もないという意味ではないつまらなさが
コンプレックスになる。
それをそのせいにしてしまう自分のことも嫌に思ったり。