シベリア鉄道初心者が、区間の勾配差や開業初期の機関の出力などを知りたいとふと思い、どこから手をつけるべきかとよく考えもせずに手に取った。目的は達成できなかったが、実に有意義な読書となった。
シベリア鉄道着工直前から第二次世界大戦集結後までの、シベリア鉄道が関係するイベントを史料から列挙している。そういう切り口から納得させられることがあるものだ。
例えば一つ、日露戦争前の日本がロシアに抱いていた恐怖、危機感というもの。大津事件というものを知っていたとしても、動機や背景について理解が及んでいなかった。朝鮮に向かって鉄路がどんどん伸びてくるという一事によって強力な説得力をもたせられた印象がある。
当時は世界中が帝国主義で、清は抵抗も虚しく列強にされるがままだったし、弱さを見せたロシアもまた例外ではなかった。シベリアという難しい土地でなかったならば、切り刻まれていたかもしれない。それについて分厚い本を読んでも今ひとつピンと来なかったシベリア出兵の意味も、鉄路が距離を短縮し得たという背景を踏まえてみるとよりよく分かってくる。
非常に有意義な一冊だった。