シベリア鉄道紀行史: アジアとヨーロッパを結ぶ旅 (筑摩選書 58)

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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015617

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  • シベリア鉄道初心者が、区間の勾配差や開業初期の機関の出力などを知りたいとふと思い、どこから手をつけるべきかとよく考えもせずに手に取った。目的は達成できなかったが、実に有意義な読書となった。

    シベリア鉄道着工直前から第二次世界大戦集結後までの、シベリア鉄道が関係するイベントを史料から列挙している。そういう切り口から納得させられることがあるものだ。
    例えば一つ、日露戦争前の日本がロシアに抱いていた恐怖、危機感というもの。大津事件というものを知っていたとしても、動機や背景について理解が及んでいなかった。朝鮮に向かって鉄路がどんどん伸びてくるという一事によって強力な説得力をもたせられた印象がある。

    当時は世界中が帝国主義で、清は抵抗も虚しく列強にされるがままだったし、弱さを見せたロシアもまた例外ではなかった。シベリアという難しい土地でなかったならば、切り刻まれていたかもしれない。それについて分厚い本を読んでも今ひとつピンと来なかったシベリア出兵の意味も、鉄路が距離を短縮し得たという背景を踏まえてみるとよりよく分かってくる。

    非常に有意義な一冊だった。

著者プロフィール

和田 博文(わだ・ひろふみ):1954年、横浜市生まれ。東京女子大学現代教養学部特任教授・東洋大学名誉教授。ロンドン大学SOAS、パリ第7大学、復旦大学大学院の客員研究員や客員教授を務めた。著書に『日本人美術館のパリ 1878-1942』(平凡社)、『三越 誕生!――帝国のデパートと近代化の夢』(筑摩選書)、『海の上の世界地図――欧州航路紀行史』(岩波書店)、『シベリア鉄道紀行史――アジアとヨーロッパを結ぶ旅』(筑摩選書、交通図書賞)、『資生堂という文化装置 1872-1945』(岩波書店)、『飛行の夢 1783-1945』(藤原書店)など、編著に『モダン東京 地図さんぽ』(風媒社)、『猫の文学館』Ⅰ・Ⅱ、『月の文学館』『星の文学館』『森の文学館』『石の文学館』(ちくま文庫)などがある。

「2024年 『漫画家が見た 百年前の西洋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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