考現学入門 (ちくま文庫 こ 2-1)

著者 :
制作 : 藤森 照信 
  • 筑摩書房
3.56
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本棚登録 : 704
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (417ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480021151

感想・レビュー・書評

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  • 文末にある藤森照信さんの解説で著者の名前を イマワ・ジロウ と読んでしまい笑われたというのに、自分もしてしまったと読後感に満ちた中でクスッと笑ってしまいました。

    建築学生として「調査とは」という視点で読み進めるとほんと些細なところまで観察しているなという感想をどの章でも感じるばかりでした。

    文体も時々心中をこぼすようなところが読み進めるうちにツボにはまって楽しく読み終えることができました。

    自分も散歩がてらには観察とメモをしようかなと思わせてくれる、いい本と著者に出会えた一冊でした。

  • 軒先ばかり見て歩くスタッフが多いわけですが、ここまで観察しきれていませんね。

  • 今和次郎『考現学入門』(と『ワンピース』1から50巻まで)読破。今和次郎が柳田邦男翁のところを破門されていたとは知らなんだ。

    でもComparative Ethnographyってこの頃から使われているのね。今読んでるのは恥ずかしながら『考現学入門』。学生時代あまりに赤瀬川源平に熱狂している男子が多くて読むに至らなかった経緯あり。聞きかじり読みかじりの予測可能範囲ですが面白い。

    あと今和次郎の『性分によるのだろうが、ものを考えたり書いたりする仕事場はガラクタだらけの場の方が私には似つかわしいようなのだ』っていうのは絶賛言い訳として使用したい。

    (ついったから拾い上げ)

  • 「考現学」とは考古学に対するものだとすると、ほんとうは”考今学”とするべきとは、本書にも書かれている。でも著者としては、そんなのどっちでもいいという。
    自分はひょっとすると、ご自分の苗字が「今」だから避けたのではないか?と、真面目に感じた。たとえば師匠の柳田国男との”別れ”のエピソードなどを読むと、今和次郎という人は、そんなことも感じさせる人だ。
    本書を読む前は、銀座などの都会人の生態を観察する程度しか知らなかったが、その視線は驚くほど多岐にわたっていることを今さらながら知り得た。井の頭公園の考現学は実に驚く……。
    そして観察の苦労話も切々……。たとえばいくら”古き良き時代”としても、プライバシーへの配慮は十分なされねばならない。”ヘンなのがうろうろしている”と警戒心を持たれれば、観察どころじゃなくなるのは、今と同じなのだ。
    対象物の中に「カケ茶碗多数」があるが、何十種類もの欠けた茶碗の図も載っていて、正直はじめは呆れたが、しかしふと思った。これってそれこそ考古学じゃないのか、と。アルバイトの人たちが土中から、刷毛で丁寧にかけた食器類などを掘り出している図が頭をよぎったのだ。
    著者は「考現学は、時間的には考古学と対立」と述べているが、無意識に(あるいは意識的か?)考古学へのオマージュもあったかもしれない……、と想像してみた。

  • 赤瀬川原平らによる「路上観察学入門」を読んで、「考現学」という言葉を知った。

    考古学は遺跡から掘り出されたものから当時の生活を想像するのに対し、考現学は現在の日常生活で目にするものを起点に社会について考える。

    今では考現学的な視点でのアプローチは当たり前になっているが、当時は著者の今和次郎らによるフィールドワーク的な取り組みからどんどん根付いてきたのだろう。

    今和次郎らは、関東大震災が考現学の原点となった。
    現代はコロナ時代。身の回りの変化を記録することで、コロナで何が変わって何が変わらなかったのか、社会はどう変化していったのか。
    細部に目を配ることで、社会全体を冷静に見定める。まさにいま、考現学的な視点をもつことが重要だと感じた。


  • 目のつけどころと細かい記録(スケッチ)が面白い! でも全部じっくり読むのは大変だったので、気になったところだけ飛ばし読みしました。

  • 読んでいて断片的なものの社会学を思い出した。小さいことというか、断片的なものに想いを馳せる姿が好きな社会学なのかもしれない。

  • ずっと手をつけていなかった路上観察の聖書

    興味に沿った観察記録をまとめた感じの一冊だが、100年近く前にいま都市関係で注目のアクティビティリサーチやインフォグラフィックスがすでに体現されているのは驚き。

  • [ 内容 ]
    震災後の東京の町を歩き、バラックのスケッチから始まった〈考現学〉。
    その創始者・今和次郎は、これを機に柳田民俗学と袂をわかち、新しく都市風俗の観察の学問をはじめた。
    ここから〈生活学〉〈風俗学〉そして〈路上観察学〉が次々と生まれていった。
    本書には、「考現学とは何か」をわかりやすく綴ったもの、面白く、資料性も高い調査報告を中心に収録した。

    [ 目次 ]
    ブリキ屋の仕事
    路傍採集
    焼トタンの家
    東京銀座街風俗記録
    本所深川貧民窟付近風俗採集
    郊外風俗雑景
    下宿住み学生持物調べ
    新家庭の品物調査
    井の頭公園春のピクニック
    井の頭公園自殺場所分布図
    郊外住居工芸
    宿屋の室内・食事一切調べ二つ
    カケ茶碗多数
    洋服の破れる個所
    露店大道商人の人寄せ人だかり
    女の頭
    学生ハイカラ調べ
    住居内の交通図
    机面の研究
    レビュー試験場はさまざまである
    物品交換所調べ
    考現学とは何か
    考現学総論
    「考現学」が破門のもと

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • どこかで捨ててしまったのですが、考現学の開祖の本。

    「考現学(こうげんがく、the study of modern social phenomena)とは、現代の社会現象を場所・時間を定めて組織的に調査・研究し、世相や風俗を分析・解説しようとする学問。考古学をもじってつくられた造語、モデルノロジー(modernology)」 wikipediaより抜粋。

    今はやりのデザイン思考、ペルソナ分析、user experience journey mapに連なる、プロトタイピング志向・フィールドワーク志向の方法論序説です。
    面白いというよりは、きちんと書かれていることを習得しないと!といった感じの本です。ビジネスでもそうかもしれませんが、特に行政側で必要になる素養であるように思います。

    ゼミの最初か2番目の課題図書でした。
    また買いなおさなきゃ。

著者プロフィール

1888年、青森県弘前市生まれ。建築学者、風俗研究家。1912年、東京美術学校図案科卒業。17年頃から郷士会へ参加、柳田国男らと農村・民家の調査を行う。20年~59年まで早稲田大学教授。23年の関東大震災後、吉田謙吉とともに「バラック装飾社」や「考現学」を始める。その後の研究範囲は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだ。73年没。

「2022年 『ジャンパーを着て四十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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