シェイクスピア全集 12 タイタス・アンドロニカス (ちくま文庫)
- 筑摩書房 (2004年1月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480033123
作品紹介・あらすじ
ローマ将軍タイタス・アンドロニカスは、捕虜であるゴート人の女王タモーラの長男王子を殺して、戦死したわが子たちの霊廟への生贄とする。これを怨んだ残る王子二人は、一転ローマ皇帝妃となったタモーラの狡猾なムーア人情夫、エアロンと共謀。タイタスの娘ラヴィニアを襲って凌辱し、なんとその舌と両手を切断してしまう。怒り狂うタイタス…-血で血を洗う復讐の凄惨な応酬。その結末は!?シェイクスピア初期の衝撃作。
感想・レビュー・書評
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ちくま文庫版シェイクスピア全集第12巻。ローマの武将タイタス・アンドロニカスは、ゴート族の女王に恨まれ……。
コリオレイナスのように古代ローマを舞台としているが史劇とはいえず、うってかわって『本当は恐ろしい◯◯童話』といわんばかりのスプラッターな物語である。凄まじいまでの復讐の応酬が続き、なんとも身も蓋もない結末に唖然。これは感想が語れないわ……。残虐な話にもかかわらず思わず引き込まれてしまうのは、ヒトのサガか。心に余裕のあるときに読みましょう(汗)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シェイクスピアの、初期の戯曲にして一番の残酷物語。ていってもわたしは、これ以外はハムレットとロミオとジュリエットの映画くらいしかふれたことはない。
ローマとゴート。父権制と母権制、本音と建前など数多くの対立がある。
ばったばったと人が惨殺される中、タモーラと黒い人種エアロンの混血である赤子は殺されずに生き延びることになってるがこのあとまた復讐は続くのか。
登場人物の多さはあるが思ってたより読みやすかった。 -
(閲覧注意、ネタバレはともかく、バイオレンスな記述があります!)
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聞け、悪党ども、俺は貴様らの骨を挽いて粉にし、
貴様らの血でこねあげて生地を作る、
その生地でパイの皮をこしらえ、
貴様らの恥知らずな生首を中身にしてこの二つのパイを焼き上げ、
あの淫乱女に、貴様らのうすぎたないおふくろに食わせてやる、
大地のように自分の生んだものを自分で飲み込むというわけだ。
これがあの女を招待した響宴だ、
これがあの女にたっぷり召し上がっていただくご馳走だ。
(第五幕・第三場)
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ええー、シェイクスピア?!って声が聞こえてきそうですが、どうか御安心を。
四大悲劇(『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』)でもなく、かといって喜劇(『お気に召すまま』『十二夜』『夏の世の夢』etc.)でもなく、ここでオススメしたいのは、まさかの『タイタス・アンドロ二カス』。
シェイクスピアってそんなの書いてんの?という声が聞こえてきそうですが、もうしばしのご辛抱を。
そう、シェイクスピアといえば、ロミオとジュリエットの悲恋が涙を絞る青春劇?
それか、真夏に森を飛び交う妖精達が見せる喜劇?
あるいは、己の実存に悩むデンマーク王子の悲劇?
はたまた、妻と結託して王座を奪う悪逆非道のスコットランド王の転落人生譚?
それらもいいでしょう、けれども、そういったシェイクスピア劇を堪能した観客・読者も、『タイタス』が提供するエロ・グロ・バイオレンスの響宴には即座に圧倒されることになるでしょう。
この戯曲の舞台はローマ時代、名将タイタス・アンドロニカスとその一族が、ゴート族との戦争を見事に勝ち抜き、ゴート族女王タモーラとその息子達を捉えてローマに凱旋するところから始まります。生け贄として3人の息子のうちの1人を惨殺されたタモーラは、タイタス一族への復讐心をたぎらせるのですが・・・
終盤で主要人物が死にまくって死体の山が築かれる、というのはシェイクスピア悲劇ではよくあることで、『タイタス』も例にはもれず。ただし、その死に方はとにかく残酷悪趣味バイレンスのつるべ撃ち!しかも、冒頭・中盤・終盤と、ちゃんとリズミカルに死体が出来上がる大変バランスの良い仕上がりでございます。うむ、ウィルよ、お前は良くわかっているな。
チェックマークまずは敵軍王女の息子を、神に捧げる生け贄と称してその四肢五体を切り刻み、はらわたを火にかけ、その匂いが空に広がっていくのを眺めるローマ兵達
チェックマーク反抗した息子を激高して刺し殺す父親
チェックマークレイプされ、舌と両手を切り取られ、手を失った腕に枯れ枝を接続されておちょくられるヒロイン
チェックマーク捕われた息子を救う交換条件ならということで自分の片腕を自分で切り落とす父親
チェックマーク腕を切断した苦痛に喘ぐも息子の生還を祈る父親の目の前でいきなり晒される、当の息子達二人の生首
チェックマークそしておまけに、母親の息子二人を解体・調理してパイを作って、何もしらない母親に食べさせる
早い話が、例えば北野武の映画『アウトレイジ』(特にそのブラッディーなバイオレンス描写)が大好きだ、という人には自信をもってオススメできるのがこの戯曲なのです。
シェイクスピアなんて読むのに気後れしちゃう、『ハムレット』とか『リア王』は読んだけどよくわからんかった、シェイクスピアは好きだけど代表作の他に何を読んだらいーの?って、そんなあなたにこそ、ぜひとも『タイタス』を。
めくるめるバイオレンスが、シェイクスピアによる巧妙な修辞と言葉のスピード感でもって、僕らの頭の中でグロテスクなイメージとして華開く・・・そんな読書体験に飢えていれば、『タイタス』を。
そうして、シェイクスピアのダークサイドを存分に堪能しようではありませんか。
ところでこの『タイタス』、俊英ジュリー・テイモアによって1999年に映画化されています。古代と現代(1920年代っぽい)を合わせたようなアヴァンギャルド的世界観の中で、『タイタス』のバイオレンスを見事に蘇られた屈指の名画。
将軍タイタスを演じるは名優Sir,アンソニー・ホプキンス。きっちり、お約束のレクター博士パロディをやってのけるあたり、ほんとうにわかってらっしゃる。
まずは、こちらからでもどうぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=OvZRvKf78yY -
カクシンハン『シン・タイタスREBORN』の予習用。残虐だけどそう感じさせないのはなぜか? 死に過ぎ?
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初っ端から死にすぎる。誰もが聞く耳を持たず、よくある死に際の長台詞も無くいきなりト書きで殺される。ホラー映画さながら。喋る者と黙る者のコントラスト。少年が叔母を怖がって逃げる場面があるが、映像化したらリアルに恐い。当時も視覚的な効果を狙った作品だったのかもしれない。
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「ローマ将軍タイタス・アンドロニカスは、捕虜であるゴート人の女王タモーラの長男王子を殺して、戦死したわが子たちの霊廟への生贄とする。これを怨んだ残る王子二人は、一転ローマ皇帝妃となったタモーラの狡猾なムーア人情夫、エアロンと共謀。タイタスの娘ラヴィニアを襲って凌辱し、なんとその舌と両手を切断してしまう。怒り狂うタイタス…―血で血を洗う復讐の凄惨な応酬。その結末は!?シェイクスピア初期の衝撃作。」