ヘンリー六世 シェイクスピア全集 19 (ちくま文庫 し 10-19)
- 筑摩書房 (2009年10月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (615ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480033192
作品紹介・あらすじ
百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作。敵国フランスを救う魔女ジャンヌ・ダルク、謀略に次ぐ謀略、幾度とない敵味方の寝返り、王妃の不貞-王位をめぐる戦いで、策略に満ちた人々は悪事かぎりをつくし、王侯貴族から庶民までが血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる。
感想・レビュー・書評
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百年戦争から続く薔薇戦争のさなか、王ヘンリー六世を取り巻く人々の骨肉の争いを描く、シェイクスピアの出世作。
このシェイクスピア全集で一番分厚い大作。それもそのはずで、全三部をまとめて収録している、歴史大河ロマンなのだ。本書に挑戦する気になったのは続編の『リチャード三世』が面白かったから。ある意味で前日譚的な読み方もできるだろうと、手を付けてみた。予想していた通り、人物の把握は大変だ。エドワードやらヘンリーやらリチャードやら、いったい何人同じ名前の人物が出てくるんだ!と思いつつ、巻末の家系図を見ながらがっつり取り組むと、それなりに面白くなってくる。基本的には史実に沿っているが、いくつも脚色や時間軸の変更があったりする。二人の人物を一人にまとめたりもしているので、訳注などで注意は必要だ。
序盤で気になったのはジャンヌ・ダルク。なんだこの口の悪い女は(笑)。詳しくないのでこの英雄が各所でどんな風に描かれているのか、あまり知らないのだけど、本作ではやはり英国側の立場から書かれているせいか、基本悪役っぽい感じで描かれている。死に際のあのセリフは酷いなぁ。
いっぽうで彼女の敵役となるトールボットは本作最大の英雄だろうか。死を覚悟で戦いに挑む、非常に美しいシーンを見せてもらった。
百年戦争終結後、フランスとの戦いから今度は身内どうしで醜い争いとなる薔薇戦争が始まってしまう。その後は謀略、暗殺、追放などで血みどろの内乱が続く中、多様な人間ドラマで観客を魅せる、まさに大河ドラマ。少年期から青年期にかけて、歴史に翻弄され続けた純真なヘンリー六世の最期をもって物語は幕を閉じる。
三部二幕五場の、ヘンリー王の嘆きが本作のテーマを象徴するシーンとして印象に残っている。王の代わりに戦いに挑む王妃マーガレットは、高潔さよりも性根の悪辣さを感じてしまう。全体的に本作の女性陣はみんな性格悪いよね……(汗)。揺れ動く歴史的事件のさなかで描かれる群像劇が面白い大作。英国史はほとんど知らないし、史劇には慣れていないのだけど、巻末の家系図のおかげで全然大丈夫だった。歴史に対する興味が湧いたし、ここから色々と広げていけそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作。敵国フランスを救う魔女ジャンヌ・ダルク、謀略に次ぐ謀略、幾度とない敵味方の寝返り、王妃の不貞―王位をめぐる戦いで、策略に満ちた人々は悪事かぎりをつくし、王侯貴族から庶民までが血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる。」
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巻末の年表と家系図が頼り。イギリス側の関連地図も欲しかった。これがリチャード3世に続いていくなのだなと思うと細かいエピソードが見逃せない。『ヘンリー六世』といいつつ、ヘンリー6世は蚊帳の外なのが面白い。
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読書日:2017年6月24日-6月27日.
Original title:King Henry the Sixth.
Author:William Shakespeare.
第一部,二部,三部と全て纏めて読んだので、物語がより理解出来ます。
England国王Henry六世が哀れでなりません。
心優しく祈りを欠かさず良い統治を行いそうであるのに、
国を統べる者としては優しさだけでは足りないのだと読んでいて感じました。
彼が死ぬに至った大元の原因は、妻であるMargaret of Anjouの傲慢ではないでしょうか。
彼女が居なければ、何よりも争う事を嫌うHenry六世は
叔父であるRichard Plantagenet(3rd Duke of York.)に譲渡していた、
此れ程赤薔薇派と白薔薇派の抗争も終止符が打たれていたのではないかと思わずには居られません。 -
2017年16冊目。
ジャンヌダルク率いるフランスと戦う百年戦争に続き、
イングランド内におけるランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)の内紛(薔薇戦争)を描いた長編戯曲。
同じ王家の中のあらゆる人物が出てくるため、関係図を見ながら読み進めないと混乱する場面もあるが、
赤薔薇側か白薔薇側かで大まかに分けて見ていけば、物語として十分楽しめる。
the Lord Protector(摂政:せっしょう)に対して「The Lord protect him(主よ、彼を保護したまえ)」と切り返すセリフを「そんな殺生(せっしょう)な」と訳すなど、
英語の中での言葉遊びを日本語ならではの言葉遊びに変えてしまう翻訳者の腕に唸った。
韻など原文で読まなければ分からない部分は絶対に拾いきれないと思うが、こういうところに逆に翻訳ならではの面白さも感じる。
気に入ったシェイクスピア作品で一つでもいいから原文で読んでみたい。 -
大河ドラマシェイクスピアプレゼンツ!?
技量のない人間の不毛な権力争いを見せつけられた感、満載。
舞台を観たら また違うものに感じるのだろうか。