ノラや―内田百けん集成〈9〉 ちくま文庫 (ちくま文庫 う 12-10)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037695

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  • 夏目漱石の門下生の一人、内田百間の飼い猫にまつわる短編随筆集。
    ペットロス小説のはしりとも言える。
    ノラがいなくなり、憔悴しきって涙を落とし、食べ物も喉を通らない百間の異常なまでの猫愛は心に染みる。

  • 以前にNHKで放送した番組でホロリと来て読んだのだが、文章だけにも関わらずこちらの方が泣けた( ;∀;)
    猫を飼ったことある自分には、とても共感できた。

    あまり猫を好きでなかった老百閒がふとした成り行きで野良猫を飼い、どんどん猫好きになっていく描写が微笑ましい。
    (彼曰く、猫が好きでなくノラとクルだけが好きらしいが・・・)

    その後、猫の失踪に日々泣き続け、新聞の折り込み広告を作る老人・・・
    その狂気とも言える愛情の描写にどんどん引きこまれていく。

    それと、事実だからドキュメンタリーなんだけど、文章はとても軽妙洒脱で素晴らしい。

    印象に残った文章としては・・・

    家内がお勝手でノラを抱いて、「いい子だ、いい子だ、ノラちゃんは」と歌う様に云いながら
    そこいらを歩き廻ると、ノラは全く合点の行かぬ顔をして抱かれていた。
    その様子の可愛さ。思い出せば矢張り堪らない。

  • 百閒先生にとってのノラ、クルツは私にとってよゴマとムギ。猫好きの誰もが思い当たる話ではあるが、度合としてはかなり深刻な猫狂いである。が、それが良い。百閒先生の良いところは、鉄道にしてもそうだが、その突出した思い込みと突破力にある。

  • 2019/10/14

  • 百鬼園先生の悲しみがひしひしと伝わってくる。

  • いなくなった飼い猫を探す話。
    以上。
    ・・なのですが、今ままで小耳に挟んだ感想が「笑った」か「泣いた」。ここまで別れる話は珍しい。
    つまることこ、いなくなったのが「猫」なところがポイントなのでしょう。「大の男が小動物一匹をオロオロとさがす話」なら笑えるし、「失踪した大切な存在を必死にさがす話」なら泣ける。 ・・そういう意味でもこの作品は絶妙だと思います。いなくなったのが「家族」や「友人」ならただただひたすらおもく悲壮ですから。
    『なぜ今夜もそうして帰ってこないのか。』
    『朝の覚め際の夢にノラがいた。』
    『ノラやノラや、今お前はどこにいるのだ。』
    わたしは「泣いた」派なのですが、それでもおかしかったのは、悲壮なくらい必死にさがしておいでなのに、似た猫を見つけた時、最終的に見分ける責任者なのは奥方であること。
    気に入っているのは、『合点のいかぬ顔をして』奥方に抱かれていたりする、いなくなったノラの思い出話のかずかず。偏屈オヤジ、さすがの観察眼です。

    最後に、【ノラや】は今何種類かでていますが、その中でもこれにしたのは表紙が気に入っているからです。端正さやバランスが好みなのもありますが、なにより猫でないのがいい。これは、猫ではなく、人間のこころのはなしだと思うので。

  • 読んではおいおい泣いています

  • ノラとクルツ、二匹の猫に対する愛情溢れる随筆集。
    ただ、帰らないノラを求めて煩悶する姿は
    ちょっと尋常でなく、
    百閒先生のエキセントリックさがよく表れていると思う。

  • 「阿呆の鳥飼」収録の『泣き虫』の中で「私はたった一匹ずつの猫のせいでこんなにひどい目に遭う」と言った百間の、その「ひどい目」の軌跡。猫の好き嫌いに関わらず、いなくなったり死んでしまったりしたものにみっともないほどすがっていく姿に涙してしまいます。

  • 猫に関する随筆を集めた一冊。

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