DNAから見た日本人 (ちくま新書 525)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 67
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480062253

作品紹介・あらすじ

人類の祖先と考えられているラミダス猿人は、約六〇〇万年前にアフリカ大陸に現われた。その後、アウストラロピテクスやホモ・エレクトスなどの進化段階を経て、現代人とあまり変わらない顔つきの人類が地球上に広く進出するようになったのは、二〇万年ほど前である。現代人の遺伝子を調べれば、過去に人類が拡散した様子が、ある程度は復元できる。こうして遺伝子DNAの分析を中心とする近年の分子人類学の研究は、次々に意外な事実を明らかにしつつある。東アジアの、海に隔てられた一角を占める"日本列島人"の起源の謎に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。でも、「DNAから見た日本人」というタイトルなのだけど、DNAに関するルーツの考察は本の1/2でほぼ終了し、あとは骨からとか、言語学的な見地からとか、幅広くどうルーツを探っていくかの現在までに取られてきた方法論の紹介が中心で、期待したほどの結果が書かれていなかったのが、少し騙された気分。いや、様々な視点からの考察も面白かったんだけど、この内容なら、タイトルを変えてほしかったかも。

  • 第1章 進化するDNA
    第2章 遺伝子でつながる地球上の人々
    第3章 アフリカから追い出される
    第4章 日本列島に移り住んだ人々
    第5章 古代DNA
    第6章 骨の形から見た日本列島人
    第7章 世界における日本語の位置
    第8章 DNAの個人差がもたらす遺伝的な違い
    第9章 「日本人」が消えるとき

    著者:斎藤成也(1957-、福井県、人類学)

  • 科学によって「"日本人"という民族」がいかに脆い概念であるかがあばかれます。よく「不易流行」を唱える人たちがいますが、日本人はDNAレベルで、現在進行形で変化しています。
    バリバリ理系な内容ですが、文系的なことも考えさせてくれる本でした。

  • 中立進化説をはっきりと唱える進化学者、、
    斎藤成也氏が、「日本人」をテーマにして、
    自身の専門からの知見を用いて興味深く、読みやすく
    書いた新書。

    とりあえず、日本人と呼ばれる人々には、
    明確な「ひとつのルート」から成り立っているわけではないことが
    よくわかった。
    そう考えてみると血統にこだわって日本人の区分なり
    アイデンティティを主張するような思想には
    やっぱりまるで科学的根拠はないのだね、ということが
    実感できる。

    第9章で著者は「日本人が消えるとき」について語る。
    これもまぁ、一部の政治思想を持つ人はめくじらを
    立てそうな話だけど(笑)、
    いや極めて遺伝と進化の科学からして、
    何をもって日本人とするか…日本語?DNA?いろいろあるけど、
    いつかは消失していくよ、っていう単純かつ強力な
    真理を述べているだけ。

    きっと、私も昔だったらこれが理解できなかっただろう。
    こういう科学的思考が素直に味わえるように変化した自分で
    よかったと思った。


    本書を読んで一番「おお!」と目を開いたのは
    現代のわれわれの祖先はどれくらい共通しているのか、という
    ことについての平易な解説である。

    この極めて重要にして根幹的概念が、いままで私はまったく
    分かっていなかった!
    恥ずかしい~と思う一方、本書を読めてとてもよかったと思った。

    長くなるけど引用。p.32~


    -----------------------------------------------------------
    DNAの親子関係は、人間の親子関係の基本である。しかし、
    ひとりの人間には母親と父親というふたりの親がいる。
    このために、人間の系図はDNAの系図とは少し異なっている。(略)
    世代をたどってゆくと祖先の数がその度に倍増し、逆に特定の
    祖先から自分に伝えられるゲノムの割合は半減してゆく。
    つまり、祖先の数はネズミ算式に増えるのである。
    子供が生まれてからその子供が大人になって子供を産むまでが
    1世代だが、子供の数が複数の場合にはその平均をとる。
    人間の場合、1世代は30年程度だろう。
    すると、10世代前はおよそ300年前、江戸時代中期にあたるが
    その当時の祖先は2の2乗で1,024人となる。(略)
    60世代前(1800年前、弥生時代後期)になると、10の18乗
    という途方もない数に膨れ上がる。(略)
    もちろん当時そんな人口がいたわけではなく、祖先の数には限りがある。
    これは、それぞれの世代の祖先がすべて別々の人間だと、暗黙のうちに
    仮定したことから生じた矛盾である。しかしこの祖先の人数は、
    実際には「延べ人数」なのである。(略)
    人間の数は常に有限だから、血縁関係が遠い近いの差はあれ、
    親類同士の結婚をくり返しているのである。したがって、私たち
    人間全員が血のつながった親類なのである。実は人間どころか
    生きとし生けるもの、皆DNAによってつながっているのである。
    ---------------------------------------------------------

    なるほど! と思った。
    今まで正直「ミトコンドリア・イヴ」の意味が理解できていなかったが、
    この著者の文章を読んで初めて理解できた。
    私も暗黙のうちに、祖先の数を「無限」という誤った認識で
    生命のサイクルを捉えていたのである。

    だが、仮に今日のヒトをとってみただけでも、
    現在が70億人なのに、数千年前にははるかに少ない人数しかいなかった
    わけだから、明らかに「有限」であり、どころか親類婚の結果、
    遺伝子は伝えられてきたのである。

    と考えれば、人類がここまで地球上に広がって、
    (見た目には)だいぶ違うのに、遺伝子的にはほとんど差はないということが
    納得できる。
    出アフリカの頃が10万年以上前だとしても、逆にいえばそこまでに
    強力なボトルネックが起きてるわけなので、そこから
    10万÷30年(1世代)=3,000世代程度しか経ていないうえに、
    親類婚ばっかりなのだから、そんなに遺伝子が異なるわけがないのだ。

    そして著者はさらに、別にヒトだけじゃなくて生物みんなそうですよ、と
    さらりと付け加えている。

    これは、「種の起原」では、教会からの攻撃を恐れるダーウィンには
    決してパブリックに言えなかったことである
    (無論、遺伝に関する知見が不十分だったにせよ、ダーウィンは傑物であり
     だいたい分かっていたはずだ)。

    このメッセージの意味は、真に科学が開かれた価値ある人類の蓄積として、
    私は純粋に「いいなぁ…」と思う。

  • [ 内容 ]
    人類の祖先と考えられているラミダス猿人は、約六〇〇万年前にアフリカ大陸に現われた。
    その後、アウストラロピテクスやホモ・エレクトスなどの進化段階を経て、現代人とあまり変わらない顔つきの人類が地球上に広く進出するようになったのは、二〇万年ほど前である。
    現代人の遺伝子を調べれば、過去に人類が拡散した様子が、ある程度は復元できる。
    こうして遺伝子DNAの分析を中心とする近年の分子人類学の研究は、次々に意外な事実を明らかにしつつある。
    東アジアの、海に隔てられた一角を占める“日本列島人”の起源の謎に迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 進化するDNA
    第2章 遺伝子でつながる地球上の人々
    第3章 アフリカから追い出される
    第4章 日本列島に移り住んだ人々
    第5章 古代DNA
    第6章 骨の形から見た日本列島人
    第7章 世界における日本語の位置
    第8章 DNAの個人差がもたらす遺伝的な違い
    第9章 「日本人」が消えるとき

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2009/6/16読了

  • 分子生物学の知見をもとに人類のルーツを探るという、なにやらスケールの大きなテーマに惹かれて、ついつい購入してしまいました。ミトコンドリアDNAやマイクロサテライト、SNPなどなど、ゲノミクスにとってはおなじみのキーワードが人類学の枠組みに組み入れられていく様は、なかなか爽快ではありました。しかしながら、初心者に対するフォローが手薄なため、ゲノミクスの素養がない人にはおそらく何をやっているかよくわからないでしょうし、人類学的な結論についても、解説が多少粗雑でわかりにくいところがありました。そういう意味では、本書は興味と素養のある人向けの一冊ではないでしょうか。

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著者プロフィール

1957年、福井県生まれ。東京大学理学部生物学科卒業。国立遺伝学研究所教授。東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授。人間の進化を、DNAのゲノム情報の解析を中心に研究している。著書に『核DNA解析でたどる 日本人の源流』(河出書房新社)『ラリルレロボットの未来』(太田聡史との共著 勁草書房)など。

「2021年 『デイビス&サットンの科学絵本 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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