- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480062345
作品紹介・あらすじ
"動機"の理解が難しいために、その質や量に比べて、少年非行・犯罪はしばしばセンセーショナルに取り上げられがちである。しかし、近年の脳科学の著しい発達はその不透明な部分を少しずつ解明し、犯罪を構成する要素の意外な姿が浮かび上がってきている。「対人関係」や「想像力」などに強い偏りを見せるアスペルガー障害と非行特性との関係を明らかにするなど、少年非行・犯罪の分野で新しい局面を切り開いてきた著者が、メディアや家族、性差、精神医学などの視点から自らの体験を再検討し、事態のより正確な把握を試みる。
感想・レビュー・書評
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105円購入2012-06-16
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〇目次
プロローグ
第1章:事件の現場を歩く
第2章:FBIを翻弄した爆弾魔
第3章:19歳の死刑囚
第4章:脳と犯罪の不思議な関係
第5章:非行のメカニズムを読みとく
第6章:「動機」とは何だろうか
エピローグ
発達障害と犯罪・非行の関係が言われているが、近年は多くの人に潜在的に発達障害の傾向が見られるとされる。少年非行問題を考える際に、従来は家庭環境や心理要因に偏る傾向にあったが、それだけでは本質は見えず、著者は生物的に見た時に要因として発達障害が見られる可能性がると指摘する。
ただし、発達障害だけが原因ではなく、それにプラスして生育環境などが複合的に合わさって非行に至っていくとした。発達障害は自らを客観的に捉えたり自制的な行動を取るなどのメタ認知能力が欠恕したりする。これを生育環境や教育で補い育てていくことは可能である。
しかし、障害として捉えられることなく虐待などの劣悪な生育環境の下で育つと、善悪の判断もつかず非行に走ってしまう。
非行を捉える目として筆者は、心理的要因、社会的要因
、そして生物的要因を考慮し、事例ごとに合わせて非行からの回復を行っていくことが大切であるとしている。アスペルガー症候群や高機能自閉症などの自閉症スペクトラム症候群を疑い、生物的な要因を捉えた対応が必要になってくる。
非行少年への対応としてまずは安心できる環境に置くことが必要である。次に自己コントロール感を養っていくことが大切である。そのためには家族とのコミュニケーション、対人コミュニケーションを重ねていく。これがメタ認知能力を上げていくことにつながっていくのだろう。
長年家庭裁判所の調査官として非行少年と接し、矯正教育や自立支援に携わってきた著者にとって、本質的な解決とは無縁な少年犯罪の重罰化に対する批判も込められている。 -
平成24年1月27日購入(第1刷、古本)
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元家裁調査官、藤川洋子氏の考えを、コンパクトにまとめたもの。
非行と発達障害の関連性を研究課題にもつひとであるが、ほとんどの少年犯罪において、発達障害が原因である、ってことはなく、しかし、社会における「ふつう」という概念にあてはまらない少年たちの多くが、他者のみならず、親にすら理解されず、怒りや不安を爆発させ、結果、犯罪にむすびついてしまうってことは、おそらく、少なくないと思われる。
それと同じくらい、オーソドックスな原因として、「貧困」があることを忘れてはならない。
むすこがハジけていたとき、こんな飽食の時代に、こんな「貧困」がまだ存在したのか、驚くようなことが、彼の関わる子らのなかに平然とあった。そして、そのなかに、むすこがいるという違和感。そこまでじぶんを貶め、自罰を与えるところまで、親が彼をおいつめた、ことを認めざるを得なかった。
いまはまあ、親子共々、よい社会勉強をした、と感謝するくらいなんだけど。少年犯罪、少年非行。まさに、社会の闇、家族の闇。奥が深い。 -
ここ最近立て続けに2件の少年事件を担当したことから、
すこし勉強しようと思って読んでみた。
非行には生物的要因、心理的要因、社会・文化的要因がある。特に一つ目の生物的要因を詳しく論じている。
脳との関係にも論じており、非常に勉強になった。 -
難しいそうなこと書いてあるけど意外と解りやすい♪
少年犯罪は昔からあったわけで
最近凶悪になったわけでも増えたわけでもない。
メディアの偏った報道により勘違いしてる
視聴者が多い。(私も)
母親の愛情が足りないから犯罪に走るという
今までの考えは誤りであり
日常化される体罰は虐待として問題だが
本当に悪いことをした時に体罰で解決するのは
常識人になるために必要で効果的である。 -
少年犯罪が増えている、凶悪化しているというのはマチガイであるとは知ってい
たが、不可解な犯罪が増えていることは事実。
犯罪と自閉症スペクトラムなどの発達障害、脳との関わりとともに論じている。
事件を犯した子の父親が、「学校でいじめられたことに対する、うっぷん晴らし
の火遊びにすぎない。それがたまたま被害を出しただけである」として、一番か
わいそうなのは我が子というのは…。そういう親がいることはびっくり。
事件当時にはいじめがなくなって半年たっていた。いじめが原因ではないらしい。
だいたい、放火で人を1人死なせているのに、たまたま被害って…。
いろいろな親がいることで、教師と同様、児童相談所や家庭裁判所も親と話をつ
けるのに苦労しているのだなぁ…。 -
実際に起こった事件を取り上げ、それに対し著者の考えも述べられている。事件そのものだけでなく、事件の背景や事件の発端に「どうして?」と考えをめぐらせる。加害者は被害者、被害者は加害者、そんなことを考えた本でした。
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中学、高校のときの友達が家庭裁判所の調査官になりました。