ルポ 技能実習生 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.71
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本棚登録 : 263
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073075

感想・レビュー・書評

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  • コンビニや飲食店で働くアジア系の外国人を目にする機会が2010年ごろから急に増えて、今では当たり前になった。

    その事象がどういうふうに起こっているのか、街中で見かけるベトナムなどから来ている人たちが、なぜ日本に来ることになったのかを知りたくて、この本を読んだ。

    わかったのは以下

    ・ベトナムと日本の経済的な差があること(ベトナムは大卒でトップの月収でも3•4万程度)
    ・そのため技能実習で日本に来て最低賃金でも働けると、ベトナムでは到底稼げない金額の貯金ができること
    ・実際にそれで家を建てるベトナム地方出身者の人たちが多いこと
    ・一方で、この格差状況や「技能実習」というシステムの形骸化は問題であること

    なお、コンビニで働く外国人の人については「コンビニ外国人」という本もあるようなので、そっちを読んでみようと思った。

    本書の、技能実習生というシステムの仕組みや実態についての解像度はとにかく高く、まるで一冊の専門書のようだなと読み進めるほどに感心した。

  • ☆2021/02/08読了。

  • 3.72/203
    内容(「BOOK」データベースより)
    『中国にかわり技能実習生の最大の供給国となったベトナム。「労働力輸出」を掲げる政府の後押しもあり、日本を目指す農村部の若者たち。多額の借金を背負ってまで来日した彼らの夢は「三〇〇万円貯金する」こと。故郷に錦を飾る者もいれば、悪徳ブローカーの餌食となる者もいる。劣悪な企業から逃げ出す失踪者は後を絶たない。日越の関係機関、実習生、支援団体を取材し、単純労働者の受け入れ先進国・韓国にも飛んだ。国際的な労働力移動の舞台裏を全部書く。』


    『ルポ 技能実習生』
    著者:澤田 晃宏
    出版社 ‏: ‎筑摩書房
    新書 ‏:‎272ページ
    発売日 ‏: ‎2020/5/8

  • 技能実習の実態のみならず、ベトナム現地の送出機関の詳細もわかりやすく記載されている。また、技能実習廃止論者は韓国の雇用許可制の導入を訴えるが雇用許可制にも問題があることを指摘。マスコミで技能実習制度が叩かれているが、この本を読めば理解が深まるので一読をお薦めする。

  • SDGs|目標8 働きがいも経済成長も|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/765776

  • 諸外国から奴隷制度と批判される我が国の技能実習制度とは、いったいどんな制度なのか外国人労働者は、どう感じてのか、実態を知りたかった。
    ベトナム実習生の実情について、現地の状況など良く分かりました。特定技能制度が始まり、コロナの見通しが経ってくると、社会はどのように動いていくのだろうか?
    ただ、裏金や接待のために技能実習生の借金を背負わせているような馬鹿な制度は認める訳にはいかない。呼称が変わって、出稼ぎではなく、日本に夢を持ってくる若者たちが明るい未来を描ける制度になって欲しいものだ。

  • 主にベトナムからの技能実習生を対象に、実習生本人や送り出し機関、監理団体や受け入れ企業を取材し、技能実習制度の実態を記載したルポ。こういった外国人労働者問題を扱った図書では、著者が自分の信念を強く訴えるような書き方になることが多いように思いますが、本書はあくまで、この制度の実態はこうですよ、というある意味で中立的な描き方に専念しているように思われて、読み応えのある1冊でした。


    本書を読む限りでは、ベトナムからの技能実習生は日本での労働が"劣悪な環境ではあるが、期間限定の一獲千金の場"であることを予め知ったうえで来ているので、そういった意味ではこの制度は実習生にとっても受け入れ企業にとってもWinWinである制度なのかしらと思いました。

    ただ、やはり以下のような点で、これが国として行っている公的な制度の実体か?と思わずにはいられませんでした。

    〇「技能実習」制度の趣旨である「前職要件」はほぼ偽造
    日本サイドの実習実施企業が求めるのは「単純作業に就く労働力」であり、実習生が求めるのは知識や技術ではなくお金(p.79)なので、公然の秘密として偽造が行われている。

    〇送り出し機関から監理団体や受け入れ企業への接待費用が実習生の自己負担として重くのしかかっている
    ベトナム側の送り出し機関が求人票を得たり、契約を得たりするために、日本の監理団体や企業を接待したり、裏金を渡したり、付加的なサービスを提供したりすることが常態化している。これらの費用が最終的には実習生自身から徴収されており、実習生の借金額を大きく増やしている。
    このことが詳細に記載されている第2章「なぜ、派遣費用に一〇〇円もかかるのか」は圧倒される内容でした。実習制度に関わっている日本人たち(もちろん全員ではないわけですが)のひどさに、本当に胸糞悪くなりました。


    結局のところ、実習生を助ける立場であるはずの監理団体は受け入れ企業とずぶずぶで、「監理団体」という役割を到底果たしていなさそうに思われました。これがこの制度の一番の欠陥のように思われました。
    実習生が本当に困った立場になったときに、助けてくれるところがない、という意味で、結局は「現代の奴隷制度」のそしりをまぬかれないだろうなと思いました。

    そしてこういう実態を知りつつ、日本という国はこの制度をそのまま続行しているわけで、とても国際社会に誇れたものではないなと改めて思ってしまいました。

  • 366-S
    閲覧新書

  • 技能実習生の実態を筆者が実際に現場に行き、リアルを書いた良書である。
    よくある技能実習への単なる批判ではなく、実習生が醜悪な環境でもなぜ日本に働きに来るのか、正確に書かれていると感じた。
    最初に描かれているベトナム人の300万円の自宅は写真の掲載があったが、
    圧巻であった。なるほどこのような夢を求めてベトナム人は日本に来るのか。。

    もちろん、メディアで騒がれているように明るい現実だけがあるのではない、
    ベトナムの送り出し機関に登録するために、実習生は100万円程度用意が必要。
    大抵は前借りをする。場合によっては実家の家や土地を担保にする。
    やっと日本に来られても、残業が少なく給料が少ない場合、失踪し、他の場所で働くことになる。失踪者の斡旋人も数多くいる。

    なぜ100万円も必要になるのか、それは技能実習制度で賄賂が多くまかり通っているからだ。送り出し機関が監理団体に賄賂を渡し、ベトナム人がきた際に監理団体を猛烈に歓迎するためにお金が必要となる。そのお金を実習生が払っている。
    それだけお金をもらっている監理団体は、受け入れ企業の監理業務を怠り、ベトナム人が制等にお金を貰えていなかったりしている。

    特定技能が新設されたが、まだ合格者は非常に少ないという現実がある。

    とにかく非常に勉強になった。

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著者プロフィール

1981年生まれ。兵庫県神戸市出身。ジャーナリスト。高校中退後、建設現場作業員、アダルト誌編集者、『週 刊SPA!』(扶桑社)編集者、『AERA』(朝日新聞出版)記者などを経て、進路多様校向け進路情報誌『高卒進路』記者、同誌発行元ハリアー研究所取締役社長、NPO法人進路指導代表理事。著書に『ルポ技能実習生』(ちくま新書)、『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(中公新書ラクレ)などがある。Twitte〈@sawadaa078〉

「2022年 『外国人まかせ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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